伊藤ひであきの視察報告

視察報告 夢がある小田原の原風景百選

●歴史のまちのルネッサンス

 東海道の交通の要衝であり、北条早雲が開いた城下町でもある小田原市。歴史の宿場町は保養地・観光地として活路を見出し、神奈川県西部の中核都市として明日に向かっている。
 活力にあふれ、人にやさしく、まちなみが美しい・・・「おだわらルネッサンス推進本部」はその具体化である。小田原ならではの新たな都市の魅力をつくりあげるための再生と創造に取り組んでいる。
 よって、まちづくりの基本理念は、−世界にきらめく「明日の1000年都市おだわら」−。

 東京から約84`、新幹線で40分、相模湾に面した足柄平野を箱根山地と曽我丘陵に包まれている。面積114.06ku、人口198,000人、年間観光客数500万人を超える。一般会計55,300百万円、議会定数は28人。

●原風景百選は市民協働の仕組みづくり

 「おだわらルネッサンス推進本部」の取組みの一つが「ふるさとの原風景百選」である。小田原市民自身が、小田原の価値を確認しあって、郷土に誇りと愛着を持って、守り育てるために何をしなければならないのか、市民と行政の協働のきっかけづくりとして、この事業は始まった。

 まず、平成17年8月から5ヶ月かけて市民の皆さんに身近な路地裏から、小田原の雄大な風景に至るまで、思い出やエピソードとともに、市民それぞれの原風景を募集した。反響も大きく、1,237件ものさまざまな思い出とエピソードが寄せられたという。
 次いで、「ふるさとの原風景百選選定委員会」を設置した。選定委員には環境分野で活躍されている著名人や、学識経験者、市議会議員代表、公募による市民代表で構成した。
 委員会を4回開催して、平成18年3月に原風景を代表するキーワードやエリアをカテゴリーとして定めた100の原風景を選定し、一つの原風景の中には複数の場所や思い出を含むものとした。
 と、同時に、原風景に対するさまざまな思いを広く伝えるため、応募いただいた皆さんの推薦理由(思い出やエピソード)から「小田原の原風景を語る28の言葉」(楽しく遊んだ思い出の風景、人生の転機と重なり合った風景、先人の知恵から生まれた自然と共存する風景、日本の歴史の一こまとなった風景・・・など)も作成した。
 原風景百選の中には、小田原駅や小田原城界隈の風景が多いが、幼き日の思い出や、エピソードは駅やお城などの人間交差点に集約されるからであろう。また、二宮金次郎ゆかりの地や、東洋のリビエラ片浦など小田原ならではの風景も選ばれている。
(写真は「荻窪用水と『めだかの学校』:童謡「めだかの学校」は、童話作家の茶木滋さんが、終戦当時の荻窪用水のこの周辺で、息子さんと買い出しの途中で交わした会話を基にしてこの詞を作られたという)

●仕組みの陰に歯車が回る

 市民の思いが一杯詰まった原風景百選は翌平成19年2月には「小田原ふるさとの原風景百選」として写真集として売り出したが売れ行きも好調で市民の関心の高さがうかがい知れる。また、「ガイドマップ」も作成し、市民に広く頒布し、周知していった。
 また、「原風景百選をどう市民協働につなげていくか」の具体的活動として、百選をめぐる6つのコースを選定し、コースをガイドする市民と、一般参加による市民と「ふるさとの原風景を歩く会」を開催している。近年のウォーキングによる健康ブームもあって、中高年を対象に延べ約300人近い参加者があり、一定の成果を収めている。
 原風景百選を小田原市民共通の財産として、その魅力を再認識し、市民一人ひとりの行動につなげていくことで、さらに自分達のまちの魅力が増幅されていく・・・。一つの仕組みの陰で歯車がいくつも回っている。

 「今後は、この原風景百選を、どのようにまちおこし、まちづくりにつなげていくのか、つなげていくことができるのかが課題です」と語るのは担当の藤澤主幹。彼の所属は小田原市環境部環境政策課であることが、この事業の狙いをみごとに主張している。

 小田原駅まで戻ってから、近くの百選の一つである「荻窪用水とめだかの学校」、「青春の百段坂」の二ヶ所を歩いて回った。「小田原市民がこの原風景をなぜに選んだのか」現場へ行ってみて、その場に立ってみると手に取るようにわかる。そこには何気ない風景だけど、夢があった。ロマンがあった。人間のにおいが立ち込めていた。
(写真は「青春の百段坂」:小田原駅近くの、城山中学校沿いを登って、城山公園、陸上競技場などに向かう途中の階段で、小田原の市街地を眺めることができる)


 視察に際し、小田原市環境部環境政策課藤澤主幹、議会事務局議会総務課山崎女史に大変にお世話になりました。ありがとうございました。


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