伊藤ひであきの視察報告

視察報告 神戸でバイオガスでバスが走る。

 4月11日(金)、豊橋商工会議所などが主催した「神戸港&バイオガス視察会」に参加した。

●市バス7台が走っている

 下水汚泥を発酵させてできるメタンガスを動力に市バスが走っている−こんな夢のような取組みが神戸で始まっている。
 ガスの名前は「こうべバイオガス」。豊橋市とほぼ同じ人口である約37万人の下水処理を担当している東灘下水処理場のプラントで神戸市が精製している。この「こうべバイオガス」を隣接する市バス車庫を拠点にしている40台のうちの天然ガス自動車7台に供給し、運行している。

●焼却していた汚泥を燃料に

 下水処理場では一般に、下水に含まれる有機物などを微生物の働きで沈め、浄化している。この沈んだ固形物が汚泥。神戸市は空気を遮断し約39度に温めたタンクの中で汚泥を発酵させて減量している。
 発酵によってメタンを含むガスが出る。この東灘処理場では、このガスの3/4をタンクを温めるために遣い、残りは焼却処分していた。メタンは、都市ガスの約9割を占める成分だが、抽出したガスでの濃度は約60%。残りはほとんど二酸化炭素(CO2)なので、ガスの発熱量は少なく、自動車の燃料には適していない。
 よって神戸市は、メタンの濃度を自動車燃料として問題のない約98%に高めるプラントを処理場内に設置した。プラントでは水とガスを高い圧力をかけて混ぜることによって濃度を上げている。その原理は圧力をかけるほどCO2は水に溶けるのに対し、メタンはほとんど溶けない性質を利用している。

●乗用車700台に供給できる

 今年2月に完成した本格供給用のプラントではバイオガスを一日4900立法b精製し、2000立方bを自動車用に供給する。これは一日に30`走る乗用車700台分に匹敵するというから驚きである。
 よって神戸市は市バスや公用車での利用を拡大するほか民間事業者にも供給したいとし、公募したが運送会社の配送車や道路パトロール車など約100事業者から手が上がっているという。出力が都市ガスに比べ一割落ちることから、民間向けのガスの価格は、都市ガスより一割程度安い65円/立法bに設定している。

●バイオマス資源の具体化

 メタンの発生源は下水汚泥の有機物。元をたどれば植物が光合成で作ったものである。そこからできるガスもバイオマス(生物資源)のひとつとされ、燃やしても大気中の二酸化炭素の増減に影響しない。すなわち環境への負荷が少ないということから、スウェーデンでは、バスの燃料として下水由来のガスが普及しているという。
 課題は、作ったエネルギーを無駄なく使う仕組みづくりと、都市ガスに比べ13%ほどカロリーが低いため、坂の多い神戸の街を走りきるには走行コースによっては充分でないという点にある。しかし、これまでムダに焼却処理されてきたガスを、化石燃料に変わる燃料として有効利用され、循環型社会への具体化であり、地球温暖化対策の一つとして注目されている。

●大震災転じて夢のある計画を実現

 東灘区といえば阪神大震災で大きなダメージを受けたところ。当然、この処理場も大きな被害を受けたが、処理場の復旧の取組みの中で、供給ステーションを作る経費をプラスすることができたという、まさに「災い転じて福となす」素晴らしい計画を実現したところが神戸の強さなのだと実感した。

 5月24日から26日にかけて神戸市でG8環境大臣会合が予定されている。「こうべバイオガス」は大いにアピールされることだろう。


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