伊藤ひであきの視察報告

視察報告 文京区の安全・安心のまちづくり

●文の京(ふみのみやこ)のたたずまい

 地下鉄後楽園駅を降りて、地上に上がると東京ドーム、小石川後楽園、中央大学・・・、そして目の前にそびえた立つのが中央シビックセンターとシビックホール。これが文京区役所なのである。吉幾三風にいえば「オラ、東京へ来ただ。見上げるばかりで首が痛〜」。26階のスカイホールからみる文京区は壮観である。ホテルと大学、公園、そして丹精な住宅街・・・。

 文京区の歴史は区内の旧弥生町から出土した土器が「弥生式土器」「弥生時代」といただいた資料に記してあって、「おら、またビックリ!」。

 明治時代に昌平坂学問所跡に師範学校が設立され、東京大学が移転を完了し、多くの官立、私立学校が区内に設立され文教地区文京の特色を鮮明にしている。とともに、逍遥、鴎外、漱石、一葉など多くの文人が住み、文教の地としての厚みを一層増している。 たといえます。
昭和22 年、日本国憲法、地方自治法が制定され、同年3月に文京区が誕生している。 平成13年には、「文の京」の明日を創る文京区基本構想を策定し、平成17 年4 月には、区の憲法ともいうべき「文の京」自治基本条例を施行。人口18.5万人、面積11.31ku。職員数1826人。一般会計予算61,622百万円、区議会議員定数34人(内女性議員12人)。

●ベストシティ「文京」

 この文京区を視察しようとしたのは、昨年夏、「週刊ダイヤモンド」が発表した全国805都市ランキング「安心して住める街」のベストシティ堂々第1位がこの文京区であったことから、そのための施策の展開を確認したかったからである。

 そのベストシティの構成要素は四つ。誰にとっても欠かすことができない「生命・財産の安全、世代によって需要が違う「教育」と「老後・病気」の安心、それに将来の安全・安心を保証する自治体の「経済力」。
 これらの基準をクリアして一位の文京区。平成11年には35年ぶりに人口が増加に転じている。平成19年10月1日の人口は前述したが、対前年比2,496人であり、この背景に教育水準の高さ、医療の充実が原動力になっているのであろう。
 そして、これらの指標を尺度にしなくても、文京区を歩けば大学が14(それも東京大学、東京学芸大学など国立大学が3)あり、当然、付属小中高学校があり、付属病院があれば、教育水準、医療水準は高く、外国人登録が約7000人といっても大使館員や留学生などであることからも犯罪も少なく、有名企業の本社や有名なホテルが林立しているさまを見れば、経済力も推し量れる。「文の京」は文字通りベスチシティであることがうかがい知れる。

●文京の「安全・安心のまちづくり」

 平成18年の豊橋市(人口37.5万人、270ku)の街頭犯罪(侵入盗、ひったくり、自動車盗、オートバイ盗、自転車盗、部品狙い、車上狙い、自動販売機狙い、強盗、恐喝)は3862件、中央区のそれは2787件である。

 文京区に「安全・安心まちづくり条例」が施行されたのは、平成17年4月1日。7月には「『文の京』安全・安心まちづくり協議会」が設置されている。また上野地区と隣接している湯島坂下地区を防犯対策推進地区に、通学路の安全対策推進地区として千駄木小学校地区を、春日・後楽園・水道橋・飯田橋駅周辺地区を路上喫煙を禁止するという推進地区を定めているのも特長。その他、「文の京」安心メールや庁有車3台による青パトなどが展開されている。

 おもしろいのは千駄木わんわんパトロール隊。これは犬の散歩を子どもの下校時にという活動である。
 また、「豊橋市安全で安心なまちづくり推進条例」(平成19年4月1日施行)と文京区の同様の条例との違いは、豊橋市は市の責務、市民の役割、事業者の役割を明確にし、「防犯教育」についても明記している。
 文京区のそれは、区・関係行政機関・区民・地域活動団体、及び事業者等の役割を明確にした上で、「安全・安心まちづくりに当たって、自由及び権利を尊重、バリアフリーへの配慮、障害者等への配慮」を定めている。その背景には「自治基本条例」が制定されている証左なのだろう。
 また、文京区は推進地区における特定の施策の実施を著しく害した者には指導勧告することができるとし、推進地区における他人に迷惑を及ぼす喫煙行為に対しては、その旨を公表することができると、罰則規定にまで踏み込んでいる。いづれも住民レベルの高い、大都会の「安全安心のまちづくり」を特長づけている。

 視察に際し、文京区危機管理室廣瀬課長、区議会事務局宗田係長に大変にお世話になりました。ありがとうございました。


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