伊藤ひであきの視察報告

視察報告 串と団子で富山のまちづくり 07.08.23

 古くは前田藩の城下町で、越中富山の薬売りなどの独自の産業や北前船にによる物質交流で栄え、現在では北陸地方最大の工業都市−富山市。
 H17年4月に、富山市・大沢野町・大山町・八尾町・婦中町・山田村・細入村が合併し、新しい富山市が誕生している。そのことにより人口は富山県全体の約4割の41.7万人、面積は県全体の約3割の1,241kuを占める広大な地域となり、海抜0mの富山湾から2,986mの水晶岳までの多様な地形を誇るようになった。

 H26年の北陸新幹線の開通を目処に、富山高山連絡道路、富山外港の整備、富山空港の国際化などを推進すると共に、日常生活に密着した機能的な都市基盤の充実を図っている。

●中心市街地の現状

 中心市街地の人口はH7年には27,2千人であったのがH18年には24.0千人と富山市全体では、ほぼ横ばいで推移しているなかで、中心市街地の人口が大きく減少し、郊外での開発が行われ、併せて高齢化率も22.9%から29.1%と進み、市街地の空洞化・高齢化が進んでいる。

 小売店舗数もH6年の1,995店からH16には1,480店と3/4に減少している。中心商業地の歩行者通行量もH7年の78千人からH18年には25千人と1/3以下になっている。  こうして富山市は県庁所在地の中で最も市街地の人口密度が低い都市となり、市街地が「薄く」、「広く」なり続けています。

 当然であるが、このままでは車を自由に使えない市民が増加し、市民一人当たりの行政コストが増加し、都心の空洞化により都市全体の活力が低下し、市全体の維持発展が困難になるおそれがあります。

●「串と団子」の都市構造

 また、今後の人口減少や少子高齢化を踏まえると、社会や経済の規模も小さくなります。そこで富山市では居住、商業、業務、文化といった都市機能や生活基盤を歩いていける範囲に集約し、行政を効率化する「コンパクトなまちづくり」を進めていくことにした。
 具体的には、地方都市としては恵まれた公共交通を活性化させ、その沿線における商業の振興や住宅整備支援による居住人口の増加といった都市機能の総合的な向上を図り、拠点の魅力を高めることで「車に頼ることなく、歩いて暮らせるコンパクトなまちづくり」を目指すことにした。公共交通を「串」に、その串で結ばれた徒歩圏を「団子」にした「串と団子」の都市構造を目指す。

 公共交通の活性化に向けた−「串」づくりの第1弾はわが国初の本格的な富山ライトレールの活性化、第2弾はJR高山本線の本数の増加や終電時間の延長などの社会実験、第3弾は市内電車の環状線化をH21年度の実現しようとするもの。
 また市全体に徒歩圏をつくる仕組みとしては中心市街地の徒歩圏の充実に力をいれ、公共投資を呼び水に、民間の投資意欲を促す、きっかけをつくる、そして中心市街地の活性化を市全体に広げようとするもの。

 そして、中心市街地活性化基本計画の柱として、@公共交通の利便性の向上A賑わい拠点の創出Bまちなか居住の推進を3本柱に17の具体的な事業が進行している。
 この計画は、昨年8月に「中心市街地活性化法」が改正され、内閣総理大臣本部長とする「中心市街地活性化本部」が発足して以来、全国第1号の活性化基本計画として認定された。計画期間はH19年から5年間ではあるが、H26年度末に予定されている北陸新幹線開業まで取り組むことにし、計画区域は富山駅周辺や中心商業地区を含む約436ha。

●賑わい拠点創出の仕組み

 「中心市街地の活性化」という古くて新しい施策の展開は、全国各地で様々に展開されている。また鉄道駅が開設されて70年以上経過し、建て替えの時期にもあたり、都市基盤整備の名目で多額な投資も競うように行われてきた。
 しかし、シャッター通りは増え続けてきた。車社会の普及と共に郊外型のショッピングセンターや、土地の高騰とともに郊外に居住地を求める郊外型ライフスタイルが広がっていった流れを食い止めることはできなかったからである。

 併せて、行政も郊外に駐車場つきの公共施設を配置した街づくりで中心部の空洞化をもたらす因もつくってきた経過もある。何よりも、中心市街地の個店や商店街が経営に消極的で、消費者のニーズにあった商品が提供されていないという現実がある。かくして全国に中心市街地の活性化に成功した例は見当たらない。

 富山市では、全国的にも屈指の公共交通である富山ライトレールや市内電車を最大の武器に、65歳以上の市民に「おでかけバス事業」や、住宅取得に50万円/戸、賃貸住宅の入居に1万円/月を補助するなどの「まちなか居住推進事業」や全天候型ガラス屋根の広場整備などの行政主導の仕組みを起爆剤に活性化に取り組もうとしている。
 何よりも、市街地再開発事業で進出した大和富山店が今秋オープンする。共同化によるワンレンジ化や生活者・消費者のニーズにあった商品・サービスの提供という商業者としては当たり前のことが期待できる。

 また、西武百貨店富山店跡地など三ヶ所を大店立地法が定める地元説明会などの手続きがほとんど要らない特例区域に指定するよう県に要請しており、規制緩和は8月下旬にも実現する見通しである。中心市街地への大型店の誘致が富山でどこまでの成果を挙げるのか。今後の、推移を見守りたい。

 視察に際し、富山市議会事務局や中心市街地活性化推進課の皆様などに大変にお世話になりました。ありがとうごいざいました。


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