伊藤ひであきの視察報告

キッザニアの子供王国 2007.08.21

●エデュテインメントタウン

 8月21日、猛暑の東京で視察したのは「こどもたちの、こどもたちによる、こどもたちのための国ーキッザニア」。東京江東区豊洲の「アーバンドッグららぽーと豊洲」の3階にある。
 「テーマパークではありません。ここはエデュテインメントタウン(教育を意味するエデュケーションとエンターテインメントを組み合わせた造語)です」と担当者は言う。
 キッザニアには、消防士、キャビンアテンダント、モデル、医師など、 約70種類の仕事がこども達を待ち受けている。各パビリオンでは、こども達の年齢や興味に合わせて、さまざまな種類、難しさのアクティビティ(具体的な仕事や体験)が用意されています。パイロットになって飛行機を操縦、アナウンサーとしてニュースを読む、それをカメラマンとなって撮影する。消防士になって消火活動、バスガイドとなって乗客(こども)にアナウンスする、幼稚園の先生になって小さい子の世話をするなど、大人になりきって遊ぶことができる。入場料は幼児は1500円、4歳から15歳までの子どもは3000円、16歳以上の大人は2000円。

●働き、遊ぶ擬似社会体験

 場内には本物そっくりなお店や施設が立ち並び、まさにこどもの街。大きさも約2/3のこどもサイズに統一されていて、自動車販売会社に展示してある車も自動車メーカーが手作りで2/3モデルを作り店頭に並んでいるほど。病院、消防署、ビューティーサロン、銀行をはじめ、ラジオ局、テレビ局、ピザショップ、劇場など、楽しい街並みをこども達が走り回っている。
 働く前には、その仕事に関連した解説や働く上でのルールが説明され、こども達一人一人に役割が与えられる。各種サイズのユニフォームに着替え、スーパーバイザーからの説明をよく聞いて、いざ仕事スタート。

仕事を体験したこども達には、キッザニア独自の通貨“キッゾ” でお給料が支払われる。そのキッゾを使っていろいろなサービスを受けたり、ショッピングをすることもできる。
 お金を持っていけば、自動車に乗れるという遊園地でなく、自動車に乗るためにはまずお金(キッゾ)を払って講習を受け免許を取得する。そして、お金を払ってレンタカーを借りる。コースを2周して、ガソリンスタンドに立ち寄って燃料を満杯にして返す。不具合があればバッテリーやタイヤを交換したりの点検も受ける。ガソリンスタンドでも、子どもが給油したり、フロントガラスを拭いたり働く子どももいる。

キッザニア内の銀行で口座を開くとキャッシュカードがもらえ、ATMを使ってこどもが自分でキッゾを引き出したりもできる。もちろん、貯金しておけば次回来場した際にキッゾが残っているし、年利10%の利子もついている。こども達はキッザニアで遊ぶために、自分でキッゾを使ったり、貯めたりするのです。

●スポンサーが用意する社会体験の場

 これらの仕事場は店構えから、扱い商品、ユニフォームも含めて提供スポンサー47社の提供による。朝日新聞社が新聞社パビリオンを作り、子どもたちは取材から編集、新聞発行までを体験する。化粧品メーカー”おるびす”はビューティサロンを、大成建設は建設現場を、森永製菓はお菓子工場を、先に説明した運転免許試験場・カーディラー・レンタカーは三菱自動車が提供する。企業イメージアップと企業アイデンティティのPRの場でもある。

 こども達は職業体験を通して、さまざまなことを学ぶことができる。キッザニアは、仕事体験をベースとした社会学習の場といえる。遊びの中から社会のルールやマナー、経済のしくみ、将来の可能性を学んでいくことができる仕組み。
 それをサポートするのが スーパーバイザーと呼ばれるスタッフ達。トレーニングされた彼らが、子ども達の自発的な仕事体験をお手伝いする。一緒に来た保護者は立ち入ることはできいない。キッザニアで目を輝かせて懸命に過ごす子どもの楽しむ横顔を見守りながら、子どもの成長に目を見張ることになる。

 かくして、こども達は様々な仕事の社会的役割を理解したり、働くことの楽しさ・厳しさを学んだり、自立性や社会性、金銭感覚を養ったりすることができるのが狙い。
 また、キッザニアではセキュリティ用のブレスレットを導入して入場者の管理を徹底している。入場する際には、メンバー全員のICチップをグループとして登録。退場する際にも、登録したメンバーが揃って初めてこどもが外に出られる仕組みなので退場するまでの安全が確保されている。

●新プロモーションを「子ども未来館」へ

 そもそもキッザニアは、メキシコのKZM社によって開発された屋内施設、年間来場者数82万人、そのユニークなコンセプトが社会的にも高く評価され、新しいマーケッティングおよびプロモーション手段として注目されている。
 キッザアニア東京は1999年にオープンしたメキシコシティとモンテレイ(2006年5月オープン)についで世界第3番目の施設、昨年2006年10月にオープンした。夏休み中でもあり、多くの子どもたちや引率した父兄でにぎわっていたが、平日には遠足や修学旅行、社会見学や自由研究などで東京・関東のみならず全国から子どもたちが集まってくるという。

 東京キッザニアは今年3月29日「環境の国 宣言」を行い、さまざまなエコ・プロジェクトを積極的に進め、印刷工房や電力会社、飛行機、ラジオ局、新聞社などのパビリオンでは様々な環境への取り組みを体験プログラムに入れて、チーム・マイナス6%の一員となっている。

 豊橋市では来年7月のオープンを目指し旧市民病院跡地(15,000u)に「子ども未来館」の建設が進む。「子どもを中心に多世代の人々がかかえわる文化交流施設」としてまちなかににぎわいや楽しさを発信する施設をめざしている。こどもを中心とした多世代の人々がふれあう交流拠点がコンセプトであり、約30億円の建設費と企業会計から受け入れた70億円の地代と併せ総事業費約100億円。
 そこには体験・発見ゾーンが用意されているが、キッザニアのようにはいかなくてもロールプレイング型の社会体験ができるような、あえていえば「環境文化都市」「530(ごみゼロ)運動発祥の地」らしいソフトがどこまで用意できるのか、大いに参考になり、ワクワクした視察となった。


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