伊藤ひであきの視察報告

視察報告 学校教育金沢モデル 07.08.24

●地方分権と金沢の教育

 人口44万人、467kuの金沢市。いうまでもなく加賀百万石の城下町として栄え、金沢の個性ともいえる高等教育機関が周辺立地する環状大学都市、そして伝統文化を磨き高め、美しい自然環境を守りながら、「世界都市−金沢」をめざしている。

 この金沢が、石原多賀子教育長を先頭に、個性豊かな学校教育の実践をコンセプトに、「教育の地方分権」の旗の下で「新しい時代の義務教育の創造」に取り組んでいる。ここに学校教育金沢モデルに挑戦しようとしている金沢市教育委員会の存在感がある。

●学校2学期制について

 金沢市では「学ぶ楽しさが実感できる授業の充実」をめざし、平成16年度からすべての市立小中学校で2学期制を実施し、授業時数の標準時数以上を確保しているのは、全国的にもみずらしくない。
 しかし、金沢では定期テストや単元末テスト以外に漢字や計算などの小テストを全校で実施し、学習指導と評価活動を充実させている。また、学期途中で連絡表等を出して子どもと保護者に学習状況が丁寧に伝えられているし、夏季休業中には全校でサマースクールを実施し、基本の学力向上の機会と場を用意し、家庭訪問もこの時期に実施して、子どもたちが有意義な生活が送れるよう働きかけている点が際立っている。

●小中一貫英語教育

 「世界都市−金沢」は具体的である。平成16年4月より「小中一貫英語教育特区」に認定され、小学1年から中学3年まで小中一貫英語教育がすべての市立小中学校で行われている。教育課程を弾力的に運用し、小学校に英語科を新設し、中学校英語授業時数の拡充に努め、小学校6年生への中1英語教科書の配布を行っているのが金沢モデル。
 その指導体制には、小1、小2ではスクールサポーター制度などでゲストティチャーを活用し、小3からは学級担任と指導講師によるティーム・ティーチング体制を引いている。特に小6では中1前期程度の学力をつけさせ、中学に送っている。これら経費は市単独予算でまかなっているが総額2億円余のうちの9割を指導者費用にあてている。

 中学では、必修英語以外に、すべての学年で選択英語「補充・発展」の2講座が用意されている。また小6後期から中学3年で使う「中学校英語副読本」が用意され、特に金沢の紹介や金沢出身の偉人の紹介を英語でできるように取り組んでいるのも、観光都市金沢の英語教育の特徴。

 こうして、小学生の英語の力は児童英検ブロンズで相関ポイントは66.4ポイントから85.3ポイントに上昇している。
 中学生では英検3級以上のレベルの生徒の割合はH16年度は22.5%だったのがH18年では53.6%と全国平均の33.7%を大きく上回っている。

●学習指導基準「金沢スタンダード」

 学習指導要綱で定められた目標を達成するため、内容やその取り扱いにおいて全ての市立小中学校が共通に取り組む金沢市独自の学習指導基準を設けているのが金沢モデル。
 小学校では国語・社会・算数・理科の4教科、中学校では、それらに英語を加えた5教科で「重点的に指導する内容」と「発展的な内容」を設定している。「発展的な内容」とは「学習指導要綱」を超えて指導する内容。
 それらを画一的に行うのでなく、金沢市の学力調査結果等を学校で分析し、その結果を下に学校独自の発展・補充的な学習、いわゆる「学校独自のスタンダード」を策定・実施し、学力の向上を図る取り組みを一層進めている。

 これら、金沢モデルをバックアップしているのが「教育プラザ富樫」。子どもの健全育成活動への支援をはじめ、職員の研修センターや子ども総合相談センター機能も有し、開設以来3年で50万人が利用している。

 地方の自立とは、その地域の人々の自立の総和であり、明日を担う教育の場で、学校の裁量・自由度を高める分権改革(人事や学級編成に関する権限の市への委譲などの)に先駆けしようとしている金沢の挑戦は続く。かって前田藩が庶民王国をつくり、加賀百万石の栄華を創出したように。

 視察に際し金沢市議会事務局や金沢市教育委員会教育総務課の皆様に大変にお世話になりました。


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