伊藤ひであきの視察報告

視察報告 長野のごみ有料化 06.11.01

 長い野原(盆地)が続く県都―長野市。昔から善光寺信仰の門前町、北国街道の宿場町として栄え、その歴史は古い。長野が一躍、国際都市・地方中核都市として躍進したのは、平成10年の冬季オリンピックの開催。
 その会場として建設されオリンピック記念アリーナ「エムウェーブ」などの維持管理費が市財政を圧迫している事以上に、翌年行われた長野パラリンピックを通じて、市民の間に「協働」意識が根付いたのが大きいという。

 平成11年4月には豊橋市と同じく中核市に移行し、昨年1市3町と編入合併し、面積が738kuと2倍になり、人口は約38万1千人。「都市と自然が調和する多軸都市ながの」の創造に取組んでいる。

 この長野で、「ごみの減量・資源化に関する施策について」特に「一般家庭ごみの有料化について」学んだ。

●長野の家庭ごみ処理の実態

 長野市民はごみ・資源物は「家庭用ごみ資源物収集カレンダー」や「ごみの出し方」に従って分別して、出しているが、特徴的なのはごみ指定袋。
 指定袋は、「家庭用ごみ指定袋購入チケット(黄色)」と引き換えに販売許可店で年間200袋(4人家族を想定)まで長野市の指定袋を購入し(30リットル入り、1枚30円で10枚セット300円)、それ以上必要な場合は、「家庭用ごみ指定袋購入チケット(赤色)」により1セット(10枚入)を、ごみ処理手数料300円を負担しての指定袋を購入、それにいれてごみを出すルール。
 黄色と赤色は「ごみ減量につとめ、赤色の購入チケットを使い出すということは、ごみが多すぎますという意識づけのため。

 また、指定袋に入らない一定の大きさまでの可燃ごみ・不燃ごみ・プラスチック製容器包装は、年間20枚配られる「粗大ごみシール」を貼って出せることになっている。不足の場合は4枚まで追加が受けられるが、それ以上のごみは「一時多量ごみ」として直接清掃センターへ搬入する(有料)。

 この指定袋制度の発足は平成6年、指定袋実費負担制度を導入したのは、平成8年11月。
 長野市の分別は、可燃ごみ(週2回)、不燃ごみ(4週1回)、プラスチック製容器包装(週1回)、紙類(4週1回)、ビン類、缶類(4週1回)、ペットボトル(4週2回)の7分別14種類。

●ごみ有料化による減量効果

 平成8年秋の実施によって翌年のごみ排出量は減ったが、それ以降は漸増、実施から7年経過した平成16年3月、「長野市ごみ減量・再資源化推進検討委員会」からの提言がなされている。
 それによると「指定袋によるごみの排出は定着しているが、この間、集積所における家庭ごみ収集量は約15%伸びている。このことは一定枚数以上の使用はごみ処理費用を負担することで排出抑制を図るごみ指定袋実費負担制度は、各世帯でチケットが余り気味な状況からも判断すると、全般にごみ減量に対する効果が必ずしも期待できない」としている。

 しかし、何を基準にごみが増えてきたといえるのかとなると基準はないだけに難しい。
 事実、長野市の市民一人当たりの家庭ごみ排出量は684g/日であり、類似都市51市との比較では少ないベスト10に入る。我が豊橋市はどうかといえば、778gであり多いほうの20位である事からみると、長野市の取組みは一定の成果を納めているとみるべきであろう。

 全国的なデータによれば、有料化している市と、していない市との比較では有料化している市のほうが1人1日あたりのごみ量が少なく、有料化が減量に有効な手段であることを示している。
 また平成14年度の全国都市清掃会議による調査では、有料化の効果として「ごみ総排出量の減少」が第一にあげられ、続いて「分別収集の促進」「分別の徹底」「財政面への寄与」「資源ごみ収集量の増加」となっている。

 このごみ有料化は全国都市776市の内、有料化を実施しているのは328市、42.3%。人口規模別では5万人未満の市が33%を示している。しかし、現在では人口規模の大きい自治体で相次いで有料化が検討・導入されている。平成17年には福岡市が、今年10月には京都市が実施、来年には旭川市が予定されている。

 長野市では「ごみ処理基本計画」において平成22年度を目標年次として数値目標を設定している。リサイクル率27.0%、市民一人当たり可燃ごみ量160gなどを明確にし、ごみ処理費用の公平な負担と更なるごみの減量・資源化を推進するために、家庭系一般廃棄物(家庭ごみ)処理の排出者負担のあり方として地域性を考慮した「長野制度」の具体的な検討に入っている。
 ごみ指定袋を有料化して、家庭ごみ有料化を実施している自治体は多いが、長野のように、購入チケットで購入してもらう制度、そのチケットは一定以上購入する場合は赤色のチケットになることにより、市民一人一人にごみ減量を意識づける長野方式を定着させたように、次の「長野制度」が楽しみである。

 重ね、重ね、「530(ごみゼロ)運動」発祥の地の我が豊橋市の実態が恥ずかしいと思い知らされた視察であった。
 視察に際し、長野市議会事務局や環境部の皆様に大変にお世話になりました。ありがとうごいざいました。


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