伊藤ひであきの視察報告

視察報告 松本の天ぷら油 06.11.02

 長野県松本市ー西に北アルプス連峰、東に美ヶ原高原など雄大な山々に囲まれ、これら急峻な山岳地帯からの豊かな雪解け水は松本平を潤し、豊かな土壌を育み、豊かな人間を育んできた。そこから醸し出される教育文化の香り高い環境と市民性によって発展を重ねてきた松本市。

 昨年4月1日には四賀村、安曇村、奈川村及び梓川村の周辺4村の編入合併により、3倍の919kuという広大な市域を有するようになって、「文化薫るアルプスの城下町」をめざす。来年は市制施行100周年を迎える。松本駅では100周年記念の自由連絡通路建設の槌音が響いていた。

 この松本市で「廃食用油を再生利用しディーゼル燃料を製造」しているという。松本クリーンセンターでレクチャーを受けた。

●事業の概要

 @家庭から可燃ゴミとして排出される天ぷら油(植物油)を、環境に優しい再生軽油(BDF)として資源化し、ゴミ収集車の燃料として使用することにより、地球温暖化防止に協力する。
 Aこのことにより、天ぷら油を排水に流すことを防止することで、環境汚染の軽減をする。
 Bこれら事業を知的障害者授産施設「共立学舎」と連携し、障害者の働く機会を確保する。
 という目的で進められた。

 具体的には市民はペットボトルなどの容器に入れて持ってきてもらい、回収所に用意したポリ容器に移し替えてもらう。これを回収する方式。
 H14年に、市内2地区の79ヶ所の全資源ステーションでのモデル拠点回収を実施し、精製プラント(処理能力400L/日)を建設、H16年から作業開始、精製油の買取りを開始。
 現在では全市で拠点回収を実施し、BDF車を6台に増車。学校給食の廃食用油も回収している。これらを「共立学舎」が加工精製し、環境にやさしい「バイオディーゼル燃料」を作る。精製品は同学舎のディーゼルワゴン車の燃料(月100g)とするほか松本市が買取り(月700g、今年度は92円/g)、ごみ収集車2台分の燃料としている。
 全体的には循環型社会への貢献や障害者の働く場の確保を図るなど、一石何丁にも広がる施策である。

●知的障害者授産施設「共立学舎」

 この「共立学舎」(定員40名)では陶芸、手工芸品等の生産や廃食用油を原料とした石鹸の製造などを行ってきたが、全国の授産施設と同じように昨今の厳しい経済状況の中で、経営は苦しく、時代に合った新しい作業の導入が必要であった。
 プラントで精製したBDFは当面、松本市営直営のゴミ収集車の燃料として使用されるので、安定した収入の確保が出来る。そのための精製プラント設備投資は国、県、中信社会福祉協会構成市町村の補助金と自己資金で建設された。この事業により、5名(通所者)の作業人員の確保が可能ともなった。

●環境に優しい燃料

・BDF(バイオ・ディーゼル燃料)は大気中の二酸化炭素を取り込んだ植物から生成される大気循環型燃料である。
・地球温暖化の原因である二酸化炭素が1割以上削減される。
・ぜんそくの原因となる黒煙が1/3になる。
・酸性雨の原因となる硫黄酸化物が発生しにくい。
・走行性、燃費、価格いずれも軽油と比べ遜色がない。
・引火点が110度と高く、保管上安全である。
・陸運局に車検証燃料欄に「廃食用油併用」と申請し運行できる。
 などの特性があり、このような仕組みを導入することは。そのまま市民への環境教育になるのではないかと感心させられた。


 市民が一番身近に実感できる環境問題は家庭ごみの収集。「ごみステーションにやってくる収集車が黒煙を出して、ディーゼルエンジン独特の音を響かせて市内を回っているのはいかがなものか」と40台の収集車を電気自動車化を議会で提案したことがあったが、松本では、環境にやさしいディーゼル燃料を授産施設で精製し、ごみ収集車の燃料にし、それを増産し、ごみ収集車での使用を増加させようと幾つかの歯車が回転していた。

 視察に際し、松本市議会事務局や松本市市民環境部環境清掃課の皆様に大変にお世話になりました。ありがとうごいざいました。


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