伊藤ひであきの視察報告

●派遣団(1)バーミンガムの都市開発● 06.09.27

●衰退する中心市街地
 ロンドンから列車で約1時間半、ロンドンについでイギリス第二の都市ーバーミンガム市は人口100万人、周辺地域で350万人。17、18世紀の産業革命の歴史を経て、特に自動車の歴史とともに約1000の企業が集積し、リッチな製造業の都市として発展してきた。
 しかし、1970〜80年代に自動車産業が落ち込み、約20万人の新しい雇用を作り出さなければならなかった。併せて自動車の普及に対応するために中心市街地を取り囲むように整備されてきた環状道路が障壁となり中心市街地が著しく衰退していった。

●市議会のリーダーシップ
 それで、1987年に市当局や市議会、国からの施策も一緒になって、中心市街地の活性化、都市経営戦略構想が検討された。
 環状道路の古いコンクリートの壁を壊し、品質を高め、環境に配慮したイメージを高め、24時間機能するビジネスと観光の拠点に再生するか。そのリーダーシップを担ったのがバーミンガム市当局と市議会であり、長期のビジョンとガッツをもって取り組んでいった。
 中心市街地西部ではバーミンガムの象徴である国際コンベンションセンターの建設とその周辺の再開発に取り組み(1991年に完成)、中央部ではバーミンガムニューストリート駅に近接する大ショッピングセンター「ブルリング」の再開発(2003年完成)、東部では職業訓練施設などが入館する「ミレニアム・ポイント」(2001年完成)をランドマークとする大規模再開発や、かっての「郵便局」をリニアールし、周辺一帯を再開発する「メールボックスストリート」などがダイナミックに継続中である。

●歩行者優先のまちづくり
 こうした再開発ともに交通施策としても交通体系の見直しをし、特に、歩行者道が地下道も含めて整備されてきて、公共交通機関との組み合わせで「歩いて暮らせる街づくり」−歩行者を優先したまちづくりが展開されていった。そして中心部に1万戸の住宅を増やす施策も並行して取り組まれている。
 こうして、高次の専門サービス業を誘致する受け皿が用意され、1985年以降のオフイススペースの供給は50%以上増加し、コンピュータ産業や金融サービスなどロンドン大都市圏の他では英国最大規模の集積が形成されるようになった。また、民間による投資によって雇用機会を増大させ、一連の再開発が完成した段階でブルリングで8000人、中心市街地東部の再開発地区で12,000人規模の雇用を達成することが見込まれ、年間100万人を超える観光客が訪れるようになった。

●土地と資金
 バーミンガムの再開発はすべてが成功したわけではないが一連の取り組みのなかで二つの要因がうまく機能しているように思われる。
 一つは多くの利権者の利害がからむ土地の収用が日本では考えられないほどの強制力でもって機能していること。
 もう一つは、例えば14億ポンドあまりの建設費が要した国際コンベンションセンターでもその5億ポンドはERDF(欧州資金)からの調達でなされていることである。

■この報告は派遣団の公式報告ではありません■


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