伊藤ひであきの視察報告

視察報告 甲府のまちなか再生 06.06.21

●甲斐の府中の再生戦略

 山梨県の中央部に広がる甲府盆地の県都ー甲府市。歴史は古く市制施行は明治22年である。都市としての発達は武田信虎の甲府移転に始まり、甲斐の府中を意味する甲府の初見もこの時である。

 昭和57年の中央自動車道の開通により首都圏との接近をもたらし、ごみ処理施設、新図書館、区画整理事業などの社会資本の整備が進んだ反面、公債費をはじめ財政環境は厳しく、今でも公債費比率は17.6%、財政力指数は0.81であるが、平成12年には特例市となり、日本の中央部に位置する地方中核都市としての発展が期待され「人と自然に優しさあふれるまち」をめざす。

 甲州街道の宿駅として発展してきた中心部も郊外型ショッピングセンターなどの出店に伴い地域間競争の激化や、商業集積の分散化などの環境変化にさらされ、「甲府市中心市街地活性化基本計画」に基づき、活性化に取り組んでいるが、市街地からの人口流失に歯止めをかけ、まちなか居住を進めようとする戦略が「まちなか居住再生プラン」。

 中心市街地は、都市の社会・経済・文化活動などの中枢として、また都市の顔として甲府市の発展に欠かせない都市機能を担う地域であり、その具体策として「人口増加」と「都市再生」をキーワードに「まちなか居住再生プラン」を推進している。
 事業対象区域として中心市街(約110ha)を含む約300haと定め、この区域に居住しようとする方へ5つのメニューを用意し、それに対応した支援策を用意する。

●5つの市単独支援策と成果

@賃貸住宅の家賃への助成−家賃助成金は月額1万円とし、助成期間は36ヶ月。
A街づくり研究会の活動への支援ー区域内で市街地再開発事業(予定区域の面積は500u以上、関係権利者3人以上)を目指す活動に年額20万円を限度とに補助金交付。
B共同住宅建設基本計画作成への支援−住戸面積40u以上、4戸以上の共同住宅建設計画への支援で費用の2/3以内で100万円を限度。当該計画に基づき建設された場合、コーディネータへの謝金として100万円を限度に交付。
C共同住宅建設事業計画作成への支援−Bの認定を受け事業計画作成の費用の2/3以内で100万円を限度に交付。
D共同住宅の建設・改修への支援ー認定住戸の戸数に50万円限度の金額を乗じた額とし、1棟の補助対象戸数は40戸を限度とする。

 以上の市単独の補助・助成制度を平成14年度から18年度までの5年間の時限装置として立ち上げ民間活力の誘導を目的として実施した。
 近年の地価下落の進行や景気回復の機運が見られてきたのも追い風になり、まちなか区域において4件約440戸の共同住宅が建設中であり、一定の成果を収めている。
 支援策@の賃貸住宅の家賃の助成は48世帯132人が助成を受け、支援策Aの街づくり研究活動への支援は2件、支援策BとCは実績はない。これは計画への支援よりも実事業への支援策を優先したものと見られる。
 支援策Dの共同住宅の建設・改修支援には4件約440戸の新規の共同住宅が建設中であり、改修とあわせ624戸、152百万円の支援を受けている。

 この事業は今年度に終息する予定であるが、今後は中心市街地活性化に根ざした国の補助制度への以降も含め、事業効果を検証しながら、継続を検討していくとしている。

●商店街活性化への必死策

 中心市街地の活性化は全国の主要都市の大きな政治課題であり、それをとりまく国の施策も「街づくり三法」の改正や「街づくり交付金」など積極的であるが、甲府市のように市単独でこれらのメニューを用意し、「まちなか居住再生」に賭ける意欲を具体的な支援策で中心市街地を図ろうとしている必死さをひしひしと感じた。
 それはとりも直さず、視察の前後に甲府駅から市役所界隈を歩き回り、シャッターが閉まったままの商店街が多く、実態として納得できることでもあった。

 視察に際し、甲府市議会事務局の金箱局長、林野係長、都市建設部都市計画課長田課長、遠藤係長には大変に丁寧にレクチャーいただき、お世話になりました。ありがとうごいざいました。


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