伊藤ひであきの視察報告

視察報告 和歌山が始めたシステム評価 06.01.18

 東大阪からJRで南へ一時間。紀伊半島の西北端、紀ノ川が静かに流れる和歌山市。冬の陽に紀州和歌山城がそびえ、市制施行が明治22年、120年の歴史を誇る水と緑と歴史のまちである。人口38万人、面積210ku。

 和歌山市を訪問したのは、昨年秋に豊橋市で開かれた中核市サミットで和歌山市の助役から「和歌山市では情報システムの内容と価格の妥当性を事前評価する専門部署の設置」と語られたからである。
 国のIT戦略にのって各自治体がe-自治体をめざすなかで「情報システムへの要求が増大する中で情報システムコストに妥当性があるのだろうか」という素朴な疑問を持ち続けながら、一方でe市役所を推進する先頭に立ってきた私自身にとってこの具体的な取組みは寝耳に水であった。

 豊橋市では例えば今年度予算でも情報管理費として基幹システムの汎用機や庁内の端末のリース、維持費用に6.4億円を計上している。
 また行政情報システムの管理運営費に約2億円、住民情報管理運営費にも同規模の費用が毎年使われており、現在開発中の戸籍情報電算化システムにもH16年から4年かけて約5億円の費用が投入されている。それもシステムを開発した業者以外には開発できないので競争性も疎外されている現実がある。また昨年12月議会の補正予算では障害者自立支援法の改定によりシステム改変の必要に迫られ1200万円の開発費が議題になったが、この費用は高いのか安いのかその判断に苦慮するのです。

 和歌山市でも同じような課題に直面し、議会からも「システム導入についてはホストコンピュータに縛られ経費も業者の言いなりではないのか」「各部局においてSE委託料等、コンピュータ導入に関わる膨大な費用が支出されているが全庁的に一本化した対策を講じるべきだ」などの指摘があり、情報システムの管理及び推進を図る情報政策課から独立した情報管理課をH16年に新設し、システム評価実施機関とした。

 そして、事業担当課が導入・修正を計画するシステム内容や価格の妥当性を「システム事前評価」という手法で検証する。その手順は以下である。
 @新たにシステムの導入が必要な場合や制度改正などに伴うシステムの修正が必要な場合、事業担当課とのヒアリングの後、事業担当課は情報システム計画書、見積資料等を提出する。
 A提出された資料に基づき、事業担当課及びベンダーとの三者による会議を行い、計画の目的や必要性、導入・運用・保守の経済性、効率性等を重点的に確認する。
 B三者による会議を基に、システムアドバイザーとして和歌山大学システム工学部の先生3人による評価会議で最終評価を行う。
 C事業担当課は評価結果書を添えて予算要求を行う。
 D法改正など早急に対応する事案についても、随時、上記の流れで対応する。
 このことによりホスト対象システムにおける一社による随意契約から脱却し、できうる限り競争原理が機能させようとするのが目的である。

 和歌山市のこうした取組みはまだ始まったばかりであるが昨年度だけでも20件近くの案件を12回の会議で精査し、開発運用コストを約3割削減している。
 今後、業務随行のために必要不可欠なインフラである情報システムのコストを可視化しコントロールすることは各自治体の大きな課題である。その仕組みづくりを和歌山で学んだ。

 視察に際し和歌山市議会事務局佐伯氏や情報管理課栗本課長をはじめ多くの皆様に対応していただきました。ありがとうございました。


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