伊藤ひであきの視察報告

視察報告 宇部市の挑戦 06.01.19

 山口県の西部にあり、瀬戸内海からなだらかに南北に伸びる宇部市。明治時代の沖の山炭鉱開鉱以来、産業の開発に拍車がかかり、石炭から重化学工業へシフトしながら産業都市として発展してきた。
 併せて公害防止対策と緑化事業を並行して進めたことにより、街路樹が見事な成長ぶりを示し、緑化都市の印象を強くしている。この取組みが評価され97年には国際連合環境計画(UNEP)グローバル500賞を受賞している。中心街には煙突高く工場群が並ぶ「緑と花と彫刻のまち」である。

 平成12年に「第三次宇部市総合計画」を策定し「活力とやすらぎに満ちた国際交流都市」を都市像として、少子高齢化、地球温暖化、地方分権などの時代の潮流や市民ニーズに的確に対応し、宇部市のもつ特性・資源を活かしたまちづくりを進める指針とした。
 昨年夏の四期目の市長選に臨んだ藤田忠夫市長はこの総合計画を基本に「ローカル・マニフェスト(選挙公約)」を発表し、再選された。このマニフェストは「市役所は変わります」「地域が変わります」「宇部市は挑戦します」という三本柱を軸に、37項目にわたり明確な期限と数値目標が掲げられ具体的である。
 そして四期目の藤田市政となり、市民に約束したこのマニフェストを宇部市マニフェストと昇華させ市政運営の柱とし、そのための「経営戦略会議」を立ち上げ、その達成のための事業構築、実行計画づくりに取組み、計画遂行に向けて市役所が一丸となって取り組んでいる。

 庁内には庁議・調整会議は従来のまま行われているが、経営戦略会議は市政運営における重要な事項等について、経営的、戦略的な観点から存分に論議し、より総合的、戦略的、大局的な市政の推進を図る事を目的としている。
 主宰者は市長、助役、収入役、教育長、特別参与、及び14人の部長の参加者で構成されている。
 この会議はまだまだ始まったばかりではあるが、最初は他部の施策にまで口をはさめるかという印象もあったが、次第に闊達な会議になってきたという。何事も形を作れば、中味は満たされていく。経営戦略会議と名前をつけて取り組みだした事に宇部市の挑戦の気概がにじみでている。

 基本構想・基本計画は「地方自治法」で制定が義務づけられており、自治体の義務であり自治体のまちづくり指針そのものである。しかし、それはその基本構想・基本計画を定めた時の首長のまちづくり青写真そのもであるはずだし、それはそのまま選挙公約になるのも当然といえば、当然である。
 それを市長選のマニフェストとして市民にアピールし、支持を得て市政執行者としてそのための戦略会議を立ち上げ、市のマニフェストと位置づけ具体化しようとしていることは的確である。
 財政力指数は0.7台で推移し、公債費比率が17%台の厳しい財政状況の中で、自ら政策の立案、決定、実施ができる自立した自治体に変え、市民に最も身近なサービス業に変えていこう。住民が主役となり、地域の課題を解決していく仕組みを作ろう。そして、市民が安心して生活でき、誇りを持てる宇部市にしていこう。熱意が伝わってくる。

 特に、そのなかでも
 山口大学・宇部高専・宇部フロンティア大学との包括提携により、市の政策のレベルアップを図り、市職員の意識改革を推進する。そのために民間企業のカイゼン手法TQMを取り入れる。
 「環境首都コンテスト」に参加し、「環境首都」の称号の取得に挑戦します。
 地域コミュニティ醸成のためエコミュージアム(生活環境博物館)の手法を取り入れた展開を図ります。
 子育ての悩み解消の場(子育てサロン)や高齢者のふれあいの場(イキイキサロン)の設置支援を行う。
 都市としてのイメージのPRと定着を図るために「宇部ブランド検討委員会」を立ち上げます。
 など総花的ななかにもキラリと戦略的施策が光っている。コンパクトな宇部市の挑戦の姿勢がこめられている。

 視察に際し、宇部市議会熊高議事課長や総合政策課小川課長をはじめ多くの皆様にお世話になりました。


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