伊藤ひであきの視察報告

視察報告 AnAn柏のまちづくり 05.11.15

 東京から常盤線を乗り継いで1時間、千葉県柏市。今春に隣接する沼南町を編入合併し、新柏市となり人口は38万人、面積は114.90kuとなり、3年後の中核市移行(中核市条件:人口30万以上、面積100ku以上)をめざす文字通り「多様性に満ちた活力ある中核都市」である。
 柏市はサッカーJリーグ「柏レイソル」のホームタウンであるなどスポーツを活かしたまちづくりも特徴的である。また東大柏キャンパスや千葉大学園芸学部、国立がんセンター東病院、科学警察研修所など研究機関の集積も見られ、産学官連携による新産業の創出を目指した新しいまちでもある。

●活気あるまち  JR柏駅に降り立つと都内ではないかと錯覚するほどの活気ある雑踏に驚く。この8月にはつくばエキスプレス(秋葉原〜つくば)が供用開始されたこともあり東京都心部や筑波研究学園都市、成田国際空港、幕張新都心などから30`圏内に位置し、交通条件に恵まれている。それだけに柏駅周辺には千葉県北西部地域や茨城県南部からの来柏者も多く、広い商圏を有し、近年はストリートミュージシャンも駅周辺に集まり「東の渋谷」とも言われるほど、若者が多く集まる活気に溢れたまちである。
 昭和40年には人口は45,000人であることから40年で8倍の人口増である。ベッドタウンとして急激に都市化が進んだ事がうかがい知れる。

●治安が悪化  当然、こうした不特定多数の人が集う事により青少年の非行や風俗店の勧誘、落書きの横行など治安が悪化し、平成9年には6,000件ほどであった柏警察署管内における刑法犯の認知件数は5年後には遂に1万件を超え年々悪化の一途をたどっている状況にあり、市民からも防犯体制への早急な取組みを望む声が強くなってきた。

●安全安心へ条例と推進会議  このような現状を打破し、市民の市民による市民のための安全で安心できる”柏”を実現するため「柏市安全安心まちづくり検討委員会」で検討を重ね、平成13年4月には「柏市安全で安心なまちづくり推進条例」をいち早く施行している。
 そして「犯罪を起こさせない人づくり(組織づくり)、おこりにくいまちづくり、地域づくり」を基本コンセプトに、行政・市民、事業者・警察の役割と責務を明確にし一体となり犯罪防止のための事業を展開する事になった。
 具体的には同年6月に防犯団体、事業者、柏警察署、市など16名で構成する「推進会議」を発足。スローガン「セーティ&クリーン、安全・安心で清潔なまち」とし柏駅周辺63haを安全推進モデル地区の指定を行った。

●安全安心まちづくり推進事業の主な施策 @安全安心まちづくり標語やポスターの募集、街頭キャンペーンの実施
A犯罪発生状況をコミュニティエリア別、大字別に表示した犯罪発生マップを作成し、市民へ情報提供。
B防犯についての知識の習得を図り、安全安心活動に参画する人材育成連続講座−Kasiwa・An・Anアカデミーの開校。
C「日本ガーディアン・エンジェルス」(赤いベレー帽と白いTシャツがトレードマークのボランティア団体、都内で繁華街のパトロールを行っている)による柏駅周辺の夜間巡回パトロールの実施。
D落書きを消すだけでなく、犯罪をやめさせたいという意識高揚のための「落書きやめさせ隊」の結成、実施。
E散歩やジョギングに併せて地域を見守るエンジョイパトロール制度、行政からは防止を貸し出し現在では2900人が登録。
F警察官OBや市職員OBを9名雇用し、青色回転灯を備えた市民安全パトロール支援車(サポカー)4台による地域防犯活動の支援。
G携帯電話を使用した不審者情報等の配信ー今年度の新規事業で市民の携帯電話に防災情報や不審者情報などの「重要なお知らせ」メールを配信。現在登録者は6,000人。

 「日本が安全でなくなった」「治安が悪くなった」危機感から立ち上がった柏市の「安全・安心なまちづくり」への取組みは「地域コミュニティの復活」、「市民協働のまちづくり・人づくり」へのステップを広く確実に歩みつつある事を実感しました。

 視察に際し丁寧にレクチャーいただきました柏市総務部防災安全課をはじめ関係者の皆様に感謝申し上げます。また豊橋市でも「安全・安心条例」制定への動きもあり大変に参考になりました。


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