伊藤ひであきの視察報告

2学期制を鳥取で考える 04.11.25

 千代川の下流域に開けた鳥取平野のほぼ全域を占める鳥取市。高速道路や新幹線が通らないなかで航空路線の増強やJR高速化などで山陰の中核都市として山陰の発展をリードしてきた鳥取市。
 115年の歴史を積み重ねてきてこの11月、周辺9町村が編入合併し新鳥取市が誕生。市域は765kuと旧市域の3倍以上に広がり、人口は20万人を越え、新たに特例市をめざす。

 この鳥取市は来年春からの全小中学校における2学期制の完全実施に向けて動いている。
 我が豊橋市においても06年度、遅くとも07年度に2学期制に移行しようとしてモデル校での取組みが始まっている。先行する鳥取市での取り組みの経過から2学期制を調査研究のために福祉教育委員会一同が訪問した。

 教育を取り巻く環境は近年さまざまな変革の波にさらされている。新学習指導要領、学校週5日制、不登校問題、果ては学級崩壊や同級生殺人・・・・。
 であるがゆえに社会の変化に対応した教育改革の突破口として、「ゆとりある学校生活を通して子どものためになる教育実践」を具現化する環境を整えようと2学期制導入が全国で始まっている。

 鳥取市の場合、鳥取大学付属小中学校での小中連携も含めた2学期制に取り組んできた教育長のリーダーシップの下で準備が進められてきた。
 昨年度、中学校2校でモデル試行が始まり、今年度は全中学校(10校)で、小学校では30校中18校でモデル実施し、検討委員会・推進委員会で進捗状況を随時、情報提供し、この11月からの市町村合併で増えた小学校18校、中学校8校も含め来年度の完全実施に向けて準備に余念がない。

 この経過の中で特に小学校では「日本の四季に合わせた3学期制に特に支障がない」などの抵抗感もあったが「制度にあわせるのでなく、2学期制を機に学校経営を新たに始めていこう」と鳥取市教育委員会の教育改革推進チームが父兄も交えた説明会でその趣旨を徹底していった。
 それは、従来の3学期制と比べ、2学期制への転換はこれまでの教育現場の大きな意識改革を必要とする。それは「今までの3学期制を見直して時間的精神的ゆとりがあっただろうか」という問題提起から始まっている。

 そして、@長いスパンで子どもを見取る事が指導の充実につながる。Aより的確な絶対評価ができるB各学校の特色が出しやすくなる
 という予想される効果にたどりつくためには実施上の留意点もあぶりだされる。
 @各学校の教育目標の具現化に向けてどのような教育活動を展開していくべきかという問題意識を絶えずもたないと意味がなく。その視点からの学校教育活動全体に渡っての調整・見直しが必要である。
 A通信表の回数が少なくなることへの保護者の不安や児童生徒の学習意欲を高める対応が必要である。
 B学期途中に長期休業日(夏季、冬季)が入る事により、学習の連続性を維持するための対策が必要になる。そのための子ども自身による課題設定の支援する機会を設けたり、長期休業中の家庭訪問、学習相談日の設定などの工夫が必要。
 と鳥取市教育委員会は来春からの2学期制完全実施を前にまとめている。


 2学期制のポイントは教育現場に「ゆとり」を生み出すことができるかどうかである。しかし、その「ゆとり」は教師が楽になることでも、児童生徒がゆるも事ではないはずである。
 「教師がそのゆとりを児童生徒にしっかりと向けていく事ができるかどうか」に2学期制の成否はかかっているように思えてならない。

 現在の教育がかかえる問題の本質はあまりにも根深い。制度の改革だけで解決できるほど容易なものではない事は明白である。2学期制にさえすれば力がつくのではなく、一人一人の教師が目の前の児童生徒について熱い思いを持って共に学校生活を送っていく事がすべてであり、そのことが2学期制という新たな制度を効果的に活用する要ではないだろうか。

 学校・地域・家庭の連携が叫ばれ続けている。しかし、この三位一体の中ではやはり学校が頑張らなければならない。学校が頑張るという事は教員が頑張る事であり、「教育は人」であり「教育革命」は「教師革命」である。そんな思いを鳥取でさらに強くした。


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