伊藤ひであきの視察報告

那覇のちゃーがんじゅう 04.08.05

 「おきなわ」の「なわ」と同じで「なば」とは漁港を語源とする那覇市。沖縄県の県庁所在地であり、東南アジアの各都市を結ぶ要衝である。人口30万人。

 「ちゃーがんじゅう」というのは「いつも元気」という沖縄の方言、「いつも元気なお年寄りに豊な老後を送ってもらいたい」と那覇市健康福祉部ちゃーがんじゅ課は介護保険、在宅福祉事業、養護老人ホームの入所などお年寄りの生活最前線で奮闘している。

 「民間でやれることは民間でどんどんやってもらいます」それは「できるだけ安く民間ノウハウを使う」ということと同課の儀間真治主幹。小柄な体に情熱があふれてやる気である。

 この6月には「那覇市高齢者筋力向上トレーニング事業」をスタートさせた。介護保険法に基づく要支援、要介護1、または要介護2であって在宅サービスの通所リハビリテェーション及び訪問リハビリテェーションの利用者以外のお年寄りに筋力トレーニング事業を実施しようとするもの。これを民間事業者に委託して事業運営を行うのである。

 委託事業者もプロポーザル提案で募集し、決定した。利用者も公募し、公開抽選で決定。申請者は114名あり、定員93人が決まった。8月17日までに主治医意見書などで事業実施により効果が期待できると判断した後、本決定し、9月から12月の3ヶ月間、いよいよ「那覇市高齢者筋力向上トレーニング事業が始まる。

 利用者本人負担は実費として300円を負担し利用の都度事業者に支払う。財源は予算335万円、介護予防・地域支えあい事業費補助金(国1/2 県1/4 市1/4)する。

 高齢化が進むと、筋力や平衡感覚の低下などにより、転倒、骨折するケースや、体力の低下に伴い、閉じこもるケースが多くなり、介護度が進むといわれています。介護度が進むと介護保険からの支出、老人医療費も増え、市民の負担も増えることになります。要は転ぶと骨折する。骨折しないためには肉をつけようということです」と儀間主幹。この人、何時間でも講演できるくらいに饒舌で頭の回転が早い。

 国も05年の介護保険の見直しに向けて「総合的な介護予防システム」の導入を検討しているし、先の参院選で我が公明党が「介護予防10ヵ年戦略」をマニフェストに盛り込み、「介護保険に新たな介護予防サービスの創設、介護予防サービス拠点を歩いていける場所に整備、総合型地域スポーツクラブの推進」をあげて、大きな反響を読んだばかり。

 その具体的実践がこの那覇で行われようとしている。文字通り「ちゃーがんじゅう老人づくり」そのものである。

 この那覇市では高齢者給食サービスも行っているが、食材の質や量によって弁当は選べるようにしているし、事業者も選択できるようになっている。画一的な「お役所仕事」ではなく、どこまでも利用者側に立って、その上、効率的なのである。
 いただいた資料の中には「あなたの利用した介護サービスを確認しておきましょう」と「介護保険サービスを受けたときにどのくらいの費用がかかっているかを知っていただくための明細を一人一人にお知らせしている。チェックと見直しでよりよいサービスの利用を図ろうとするのと介護費用の節減のためでもある。

 また、昨年度から一人暮らしの高齢者に定期的に電話をかけ安否確認を行う「那覇市ふれあいコール事業」を実施しているが業務委託をNPO法人に委託している。この事業は更に委託事業者が民間のタクシー会社と契約し、緊急時などにタクシー派遣をしてお年寄りの安否を確認することも盛り込んでいる。

 高齢化率18.2、100歳以上が109人もいる高齢長寿のまちであり、財政力指数は0.61 公債費負担率は18.6という厳しい財政状態がこうした知恵を生むのだろうか。


 4日間の行政視察が終わった。大分、長崎、糸満、那覇と生活の現場で行政の知恵が手作りで発揮されていた。学ぶべきことが多かった充実した4日間だった。
 立ち寄った長崎の「駿ちゃん」の現場、そして「ひめゆり平和記念資料館」「沖縄県平和記念資料館」。どこも生命の尊さと人間の愚かさの重い課題を私たちに提起していた。
 「戦争をおこすのは たしかに 人間です しかし、それ以上に 戦争を許さない努力のできるのも 私たち人間ではないでしょうか」と平和祈念資料館にはしたためてあった。

 地方政治の場でひたすら頑張らねばとその責任をひしひしと感じた4日間でした。4日間に読んだ本−「地方は変われるか」「市町村合併」「日本の構造改革」「沖縄−時間がゆったり流れる島」「プロジェクトX リーダーたちの言葉」以上5冊。


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