伊藤ひであきの視察報告

金沢のまつ達の議員提案 04.08.09

 江戸時代に加賀百万石の城下町として栄え、長年災害を受けず伝統文化と美しい自然環境を維持してきた金沢市。
 2年前の大河ドラマ「利家とまつ」により金沢が全国に発信され、今や小さくても世界の中で独特の輝きを放つ「世界都市・金沢」の形成を目指す。今年6月議会では全国初の「ファッション産業都市宣言」を議決した。市役所の横に「金沢21世紀美術館」が秋の完成をめざして急ピッチ。人口46万人、平成8年より中核市。

 この北陸の都ー金沢を豊橋市議会議会運営委員会の視察で訪問した。

 視察先に選定したのは金沢市議会では活発に議員提案がなされていることからである。いうまでもなく地方自治法では「提案提出権」(地方自治法第112条)が確立されており、議員定数の1/12の賛同者で持って議案を提出できる議員に与えられた重要な権限である。

 平成12年12月議会では「乳幼児医療費助成に関する条例の一部を改正する条例」が提案され否決されたのをはじめ、平成13年3月定例会には「金沢市議会委員会条例の一部を改正する条例」(可決)、同12月には「金沢市男女共同参画推進条例」(可決)、「金沢市議会議員政治倫理条例」(否決)「金沢市在宅介護サービス利用料助成条例」(否決)、最近でも平成15年3月議会に「金沢市議会委員会条例の一部を改正する条例」(可決)など活発に議員提案の条例が議会に提出されている。

 豊橋市議会では「議員定数条例」や「委員会条例の一部を改正する条例」など議会に関する条例が議員提案でなされた事があっても「乳幼児医療費助成」「在宅介護サービス利用料助成」などについて議員提案されたことはない。
 また今年3月議会で「豊橋市男女共同参画推進条例」が成立した。昨春、勇退された豊橋市議会初の女性議員でもあった我が公明の菊池喜代子議員が「女性会館」の設置、「男女共同フェスティバル」の開催、「男女共同参画課」の設置、そして勇退前の議会で「男女共同参画推進条例制定」への確約をとるなどその先導的役割を果たし、現在の宮沢、沢田両女性議員に受け継がれ推進してきたが、市長より提案されたもので、特にその推進役を果たした女性議員が中心となり原案を作り議員提案した金沢市議会のような形ではなかった。

 特に平成13年12月議会に提出され可決した「金沢市男女共同参画推進条例」については市議会から東出文代市議(社民党)に参加していただき、説明を受けた。
 国の「男女共同参画社会基本法」が成立したのは平成11年であり、その2年後に女性議員5人が中心となって、成立させたのは画期的である。

 国の基本法の成立を機に連合金沢オレンジ委員会(男女平等社会をめざす運動が未完=ミカンであることからオレンジとしたという)ではその学習会を行った折の講師からの「地方においてどう推進するのか、地方議会でその具体的推進条例を制定し、推進すべきだ」という言葉がきっかけとなり、すでに党派を超えて存在していた金沢市女性議員懇談会がその役割を果たしていった。

 条例の検討会を立ち上げ、その座長が東出氏。原案作成に8回の検討会を重ね、市民との意見交換会を2回持ち、平成13年4月に金沢市議会議長に条例案を提出した。
 「現在、国の動きにあわせ男女共同参画のための行動計画を作成中なので時期早尚でないですか」という市当局の困惑を越えて「執行部が作るよりいいものを作ろう」と意気込んだという。
 条例案を提出してからの議会の検討会は13回開かれたが、その構成は小会派では1名づつ女性議員が委員になってでてきたが、二つの大会派からは男性議員が2人づつでてきて、この男性委員の理解がなかなか得られなかったという。検討会の名前も「男女平等条例検討会」であったが、条例では「男女共同参画推進条例」となった。「名前よりも中味が勝負」とあえてこだわらなかったという。
 かくして全国に先駆けて議員提案により同条例は平成13年12月議会で成立した。提案者は最終的には、最終日の前日に開催された議会運営委員会で決定され、全会派が賛成であったので議会運営委員会の委員が提出者となった。

 ただ当初、男女共同参画のための拠点施設の整備を盛り込む事が検討されたが「市は男女共同参画の施策を推進するため、その機能を高めながら、必要な体制を整備する」とする表現にとどめるなどの課題は残った。

 「利家」を天下人に高めた「まつ」の聡明な意気込みは市議会の中の女性議員による議員提案という形でDNAは継承されているかのごときである。


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