伊藤ひであきの視察報告

糸満の元気な子どもたち 04.08.04

 長崎空港から那覇空港に降り立ったのは正午、陽射しが沖縄を実感させる。「でも昨日当たりと比べれば過ごし易いですよ。もう、くらくらと立ちくらみがしていたわけですから」日焼けした沖縄の人たちは屈託なく笑う。

 那覇空港から車で40分、沖縄半島の最南端、摩分仁の丘に続く砂浜の海岸線沿いにある糸満市。太平洋戦における沖縄戦では悲劇の舞台となり戦禍の犠牲となった。激減した人口の増加とともに発展してきた糸満市の歩みは、沖縄の戦後復興の象徴。

 今や人口5万6千、南浜の埋立てにより拡大した潮崎地区に2年前に竣工した市役所が沖縄の空に聳え立っていた。

 この市役所から車で20分のところにある2階建ての建物、一階が児童家庭課の「がじゅまる児童センター」、二階が教育委員会生涯学習振興課の「青少年センター」である。
 一口で言えばこの建物は側の児童公園とも併せて近隣の糸満小学校や中学校、糸満高校の子どもたちの遊びの場である。
 訪問したときも幼児から小学生、そして高校生たちもまじって、ワイワイガヤガヤ、元気に遊んでいた。

 「誰もが自由な雰囲気の中で遊びにこれるように遊び環境を整え、仲間作りの援助をし、その居場所を提供し、子どもたちが安定して自己表現できるようにする」。これが運営方針である。この児童館を活動拠点にしている母親クラブ活動事業や障害を持つ児童を対象に母子通園ディサービス事業も行っている児童福祉施設である。
 2階の青少年センターは体験学習、子育て教育相談などを通じて、心豊かな青少年を育成することを目的にする。

 同じ建物のなかにあることから交流がごく自然に活発に行われているし、「元気チャレンジ隊」を結成し、無人島サバイバル体験や地域教育力活性化モデル事業として「いとまんウィークエンド倶楽部」による「うみがめ産卵観察宿泊研修」や「セリ市場体験と魚のさばき方体験」などメニュプログラムも盛りだくさんである。
 地域とも連携し、近づく地域の夏祭り「まあらまつり」にも参加すると「お化け屋敷」の準備も行われていた。また宮崎県都濃町や網走市との交流も行われている。

 昨日は長崎で一年前の「駿ちゃん」が殺された現場を訪れ、併せて2ヶ月前に佐世保でおこった小学生女子による殺人事件にも思いをはせ、寒々とした気持ちになったが、ここに来て、元気に屈託なく遊ぶ子どもたちや高校生や中学生たちが小学生や幼児を肩車したりしている姿を見ていると、希望がでてくる。
 あの長崎の12歳の中学生と4歳の少年がゲームセンターでなく、ここで出会っていたらきっと楽しい少年時代があったろうにと思う。
 佐世保の少女たちがチャットでなく、こういう場所で一緒にバドミントンをし汗していたらとも思う。

 時代の変化は「よい子は道路で遊ばない」「よい子は川で遊ばない」社会を作ってしまって、それに変わる遊びの居場所を用意しなかった。今改めて、こうした児童館や青少年センターを用意する事は、こういう時代を作ってきた大人の責任ではないかと痛感した。


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