伊藤ひであきの視察報告

仙台から盛岡へ−街づくり探索 2003.07.02

 杜の都−仙台のコンセプトは「木を植えよう、杜をつくろう、百年の杜づくり」である。杜づくり百年の言葉が重い。
 同じように街づくりにも長い年月と確かなる理念が必要である。

 「せんだいメディアテーク」は2001年3月にオープンしたばかりの仙台市の新たなシンボル拠点である。美術や映像文化の活動拠点であると同時に、全ての人々がさまざまなメディアを通じて自由に情報のやり取りを行い使いこなせるようにサポートする公共施設である。総事業費は290億円、工事費は約130億円かかっている。
 「テーク」とは棚を意味し、メディアの入れ物である。複合型生涯学習施設で、仙台市民図書館が併設されている。開館から約2年半で来館者は概ね250万人を越える集客力を誇る。

 その背景にあるのは「最先端の知と文化を提供」、「端末でなく接点へ」、「あらゆる障壁からの自由」の三点をコンセプトに何よりもユニークな建物が全てを物語る。
 2001年のグッドデザイン賞の大賞に選ばれるなど数々の建築賞を受賞している。地上7階、地下2階建て、柱がなく13本のチューブと呼ばれるものとハニカム構造の床、全面のガラスで構成される建物として、世界的にも一躍有名となっている。

 オープンスクエアの1階、受付相談カウンター・児童図書館の2階、3・4階は仙台市民図書館、5・6階はギャラリー、7階はシアター、スタジオ、映像音響ライブラリーの構成である。管理運営は仙台市より仙台ひと・まち交流財団へ委託している。
 これだけ斬新なデザインを採用したことに仙台市の文化度と先進度が伺われる。また、その先進的な建物が見事に杜の都に溶け込んでいる。

 また、そうした仙台市の先進性はその後訪れた仙台市市民活動サポートセンターを4年前に全国初の「公設民営型」でオープンさせていることからも伺える。

 また、午後から訪れた岩手県盛岡市の「もりおかのオムニバスタウン計画」にも感心した。オムニバスとは乗り合いバスの語源で、もともとは「何の御用にでも役立つ」という意味で盛岡では「地域の足・まちづくり・環境問題など多様な御用にお役に立つ」意味で親しまれている。

 盛岡市では、朝夕の交通渋滞が著しく、市内の主要道路が典型的な放射型の形態であり、都心部では3つの河川が合流し橋を渡って移動するという地理条件も混雑の背景にある。

 こうしたことから、盛岡市では交通需要管理を行い、自動車交通を抑制するとともに、バスの利用促進を通じて、交通住宅を緩和し、快適な街づくりを行おうとするプロジェクトである。
 その骨格を成すのがゾーンバスシステム。郊外型と都心部を期間バスで結び、都心部は都心循環バス−通称でんでんむしと呼ぶ低床、小型バスの導入などの支援施策で組み合わせ運行体系の改善や走行環境の改善、利用条件の改善などと複合施策で一定の効果をあげている。

 北に向かうほど地域経済が厳しいことを実感する中で北の住民の意欲的な知恵が生活に密着した効果的な施策を展開している事を実感した一日であった。


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