伊藤ひであきの視察報告

富良野の「ワイン工場」 2002.07.01

 爽やかな風が吹き抜ける北海の大地、千歳空港、札幌から滝川を経由し、3時間。上川地方の南部に広がる富良野盆地の中心富良野市。人口2万7千人、面積601ku。

 東に十勝連峰を望み、西に夕張山系を望む盆地には空知川が流れ、肥沃な土地は稲作をはじめ玉ねぎ・アスパラ・ぶどう果樹・じゃがいもなどの農産物が食糧生産基地としての役割を果たし豊かな生活圏と快適な環境を創造している青年産業都市である。

 地域経済の活性化を図り、地場資源の農産物を活用し、ふらのワイン・ふらのぶどう果汁をはじめふらのチーズなどの研究・開発に努めている。

 その代表的な施設がぶどうヶ丘の高台にある「ふらのワイン工場」。ふらのワインは全国的にも珍しい富良野市直営のワイナリー、つまり自治体ワインである。適した気象条件、消費者動向、将来性からヨーロッパ系専用品種ぶどう及び富良野周辺の山ぶどうによるワイン事業を富良野市直営として採択し昭和47年4月にぶどう果樹研究所を設置し、この事業がスタートし、道立農業試験場と富良野市が一体となってぶどう栽培試験を実施し、昭和50年の国体冬季スキー競技大会に初めて試作ワイン1,250本を試飲提供することにこぎつけ、その翌年にこの「ワイン工場」が竣工している。
 昭和53年には市民待望の、ふらのワイン新発売、平成3年度にはふらのワイン55万本、ぶどう果汁23万本を出荷するなどに発展、平成10年代のワインブームも追い風となり、今日を迎えているが最近の出荷量は輸入品が安価に手に入るようになり、状況は厳しい。

 自治体事業であり、企業利益を追求する一般企業経営とは根本的に考え方が異なっている。「富良野市ワイン事業の設置に関する条例」にも規定し、市民や農家あるいは公共の福祉を優先するよう、常に市議会のチェックを受けている。一般会計へもその15%を繰り出している。一時は3、4000万円単位で貢献していたが、出荷量の減少とともに今は4、500万円と厳しい。

 @ワイン事業によって地域産業の振興A原料ぶどう優良品種の開発と良質ワインの限定醸造Bローカルワインとしての限定販売などの事業方針が今後、どのような形で実を結んでいくか、その手腕が問われていく。大手メーカーと競合することを避けるために道内主要都市に限定販売を行い、大量生産、大量販売といった戦略を維持するためには、富良野に来ていただいてお飲みいただく、求めていただくというお金と時間をかける価値ある製品作りを目指さなければならない。

 それだけに、ワイン事業における地産地消をめざす付加価値をつけた農産加工の振興に意が注がれる。ぶどう和紙研究やぶどう果汁からの果汁ゼリー、ワインからのチーズ、更に菓子類や加工食品への添加などぶどうをキーポイントにクラスターの挑戦は続く。

 ラベンダーブーム、「北の国から」のテレビ放映などが追い風となり観光資源とも相乗して、これから「ふらのワイン」がどのような軌跡を描いていくのか・・・、その頑張りに期待したい。

 視察に際し、愛知県出身の富良野市ぶどう果樹研究所の岡安俊明所長に大変にお世話になりました。


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