伊藤ひであきの視察報告

旭川の大雪クリスタルホール 2002.07.02

 北海道のほぼ中央に位置し、東に大雪山連邦を望み、周囲を丘陵に囲まれた街並みを石狩川水系の河川が縫うように流れ、素晴らしい都市景観を創り出している「水と緑に輝く北の拠点−旭川市。人口36万人、面積7471ku。人口は豊橋とほぼ同じ、広さは2.5倍である

 その大雪山を望む旭川の中心部にゆったりと構えるのが「旭川市大雪クリスタルホール」。

 平成5年度が旭川開基100年にあたるため、その記念施設として昭和62年「開基100年記念事業推進委員会」から記念施設として「歴史、文化資料館」の建設を答申。  平成元年2月に市議会開基100年記念事業特別委員会で@歴史文化資料館(博物館)A記念ホール(国際会議場)B多目的ホール(音楽堂)の3機能を持つ記念施設を駅南地区に建設する事を決定。

 平成2年8月建築工事着手、平成5年9月にオープンしている。総事業費80億円。地下1階、地上2階、建築面積7636u、延床面積9698uの広大な建物である。

 この旭川大雪クリスタルホールは、旭川市博物館・600席の旭川市音楽堂・300人収容の大会議室を中心にした旭川市国際会議場の3施設を集合した複合施設で、組織的には生涯学習部に属し、市の直営施設。但し施設維持管理業務の一部は専門企業に委託している。

 昨年度実績から見れば音楽堂は年185日の稼動、大会議室は134日の稼動、博物館は年間4万人近くが入場し、三つの施設の利用人数は毎年10万人を超える。
 ともすれば、こうしたいわゆるハコモノは、利用実態も厳しく、その維持管理コストが財政を圧迫し、批判の矢面にたたされている施設が多いが、このクリスタルホールでも184百万円の施設管理費が計上されていて、施設使用料や入場料などの歳入は5000万円である。

 それだけに、音楽堂を使った自主文化事業には力を注いでいる。昨年度は10回のコンサートの他により気軽に音楽に親しんでいただくために「LDサロンコンサート」やチェロ・ピアノコンチェルトの公開講習会、合唱講習会など音楽活動の普及、推進に努力している。

 目玉となる自主事業コンサートは昨年度10回企画、そのうち600人収容の音楽堂で500人以上の入場した企画はリトアニア室内管弦楽団と佐藤しのぶのオペラティックコンサートの2回であり、その取組みには御苦労されている様子。それだけに開館10年を迎えようとするこの節目に今後の課題として、自主文化事業の入場及び収入率の向上、音楽専門職員の配置をあげ、「音楽のまち−旭川」を目指している。

 しかし、またこうした文化振興事業は採算性は勿論、無視できないが、広く旭川市民だけでなく北北海道の拠点都市として、周辺地域も含めて文化振興に取り組む先導的役割を果たすために旭川市のリーダーシップは不可欠であり、責務であると考えられる。

 それだけに、市民ボランティアによるコンサートボランティア制度や、1300人の会員を擁するクリスタルホールメイト、クリスタルホールメイト通信「カデンツア」の発行などの取組みは裾野を広げる意味からも注目される。

 博物館は旭川を中心とした北国の自然と人間のかかわりを考え、未来を展望する総合博物館であり、6人の学芸員を擁し、普及・講演活動も活発である。シンボル的に展示してあるチセ(笹葺き住宅)やイタヤカエデ、ドドマツ、ヤチダモなどはさすがの展示であり、アイヌ文化を伝えるコタンの四季などは貴重な人文展示である。

 この博物館は何よりも入場無料であり、今後の学校週5日制のなかで、また生涯学習の流れの中でその拠点施設とし役割を増していくだろう。

 大雪クリスタルホールは、可能性を一杯に秘めて、まだまだクリスタルに輝いていくだろう。


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