伊藤ひであきの地方からの提言


豊橋競輪事業の撤退表明に対する意見のまとめ

     豊橋市議会環境経済委員会 2002.11.5
 

  はじめに

 昭和24年8月に第一回の豊橋競輪を開催して以来、53年に及ぶ本市の競輪事業の歴史に大きな節目を迎えている。豊橋市として「競輪事業撤退の方向で準備する旨」が平成14年10月10日に各議員に知らされたのである。
 以来、議会の内外において様々な論調が繰り広げられてきている中、議会側の正式な機関として平成14年10月23日の環境経済委員会において、市長が公式の場で初めて「平成15年3月末日をもって撤退したい」とする意思とその理由を明らかにしたところである。
 またこの間、中部自転車競技会や一般市民からの存続に向けた要望書も議会に寄せられている。

 申すまでもなく、豊橋競輪の果たした役割は大きいものがある。特に、戦後の混乱期の中での復興事業をはじめとして、学校建設、土木事業など多くの社会基盤整備を推し進める上で、競輪事業は累計で157億円余を一般会計へ繰り入れ、貴重な財源を提供してきたものとしてその実績を評価するところである。
 また、雇用確保や関連事業の創出など、地域経済においても果たしてきた役割は多大と言わなければならない。今また、競輪がスポーツ文化や娯楽という視点からも見直されてきているときでもある。
 それだけに、長い歴史と実績を持つ豊橋競輪への思いは様々に錯綜しており、今回の市側の判断について唐突の感を持っている市民が少なくないということも理解しなければならない。

 今日、長引く経済不況とライフスタイルの変化に伴い、豊橋のみならず全国の競輪の売上は軒並み大幅な減少傾向にあり、収支状況も悪化の一途をたどっている。議会としても毎年のように全国競輪主催地議会議長会を通して、競輪事業の改革、交付金の見直しなどを求めてきたところでもあり、これを受けて国も包括的な競輪事業の構造改革の検討を進めつつ、一定の見直しも図られて来てはいるが、いまだ緒についたところとの感が強い。

 そのようなとき、市側が示した「撤退の方向で準備する」とした判断理由としては、行き着くところすべては経営状況と今後の見通しの困難さによるものとしている。
 市長は「赤字補填としての税金投入はしない」というのが、来年度以降の撤退方向を決断した判断基準であることを言明している。

 環境経済委員会として、これらの豊橋競輪事業の経営を取り巻く状況と市長の撤退の判断に対して、限られた時間の中で様々な観点から議論し、現段階での課題等を確認したところである。
 ここに各委員の意見等を取りまとめ、市長に「意見のまとめ」を提出するものである。

 今後、当局においては、これらを十分踏まえた対応を期待するものである。

撤退方向の判断に至る経過に対して

(1)赤字の収支状況が続く中で「ふるさとダーピー」の誘致が出来なかったことが直接の引き金であり、対して今後の経営見通しにおけるあらゆるケーススタディのシミュレーションを検討してきた結果であるとしているが、それにしても意思形成における関係団体及び関係者、そして議会や市民との協議が必要であった。このような視点から今後の対応には最大限の意を用いるべきである。

(2)企業会計ベースで減価償却費を含めて考えれば、更に赤字幅は大きくなっており、ここで撤退したとしても一般会計からかなり税金を投入しなければならない経営状況である。したがって、自らの経営努力について厳しく総括しなければならない。

前提にまだまだ努力すべきことはないか

(3)本年の11月20日位を目途として、全国競輪施行者協議会をはじめとした上部団体が「豊橋問題」について協議しているとのことであるが、この結果を受けて、経営展望における新たな見通しの有無について検討する必要がある。

(4)したがって、この間にも売り上げ推進策や経費の節減策(賞金基準、車券発売窓口の縮減等)及び委託の推進、PR活動の効率化と強化など、これまで進めてきた経営改善努力を引き続き継続すべきである。
 また、現行制度の中で豊橋市独自の対策は限られているが、上部団体とも協議しながら、今なお経営に寄与する施策について大胆な発想と実現の可能性を追求すべきである。

(5)具体的には、ドル箱としての正月競輪やゴールデンウイーク及びお盆での競輪開催の復活は出来ないのか。どこまで開催日数の弾力化と場外売り上げの充実が可能なのか。
 あるいは、3年間の交付金支払い猶予制度とその後の減免制度を活用した経営スキームについてどの程度詰めが行われたのか。他にも多々あろうが、これらの努力事項と3連単投票機器導入のための投資との関係で、やはり経営見通しが困難であるのか。目途の11月20日位までに残された時間は短期間ではあるが、あらためて競輪事業における経営改善努力について一層詰めた具体的かつ多角的な検討が必要である。

撤退方向の準備と事後対策について

(6)すでに撤退の調整に入っているとのことであるが、それでもまず全体を網羅する大筋のスケジュールを明らかにし、市民的理解を得ていく必要がある。

(7)地域経済への影響は大きいと思われるが、特に約300名の臨時従事員に対しては、誠意ある対応で理解を求め、再雇用への支援策も検討する必要がある。
 そして、売店等の関連業者や嘱託職員、委託業者、駐車場地権者などのほか、長年理解と協力をいただいてきた周辺地域住民に対してもやはり誠意ある対応で理解を求めていく必要がある。

(8)仮に競輪事業撤退の場合における施設等の活用について、都市計画との絡みや市全体の公共施設との関係の中で有効活用の方途を探ると同時に、早い段階で具体的内容を示す取り組みが必要である。

(9)すでに廃止した競輪場の事例からも、関係団体からの損害賠償請求は必至とのことであるが、法理と正当性がなければ市民的に納得できるものではない。
 はからずもそのような事態になった時には毅然とした対応で臨まれたい。


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