伊藤ひであきの視察報告

徳島の文化の森の美術館 01・10・04
 徳島県の東部、吉野川が作り育てた三角洲にたたずむ人口26万の徳島県の県都−徳島市。その徳島市の南部に広大な40.6haの森が広がる。これが「文化の森総合公園」

 この公園は置県(明治13年、1984年の廃藩置県)100年を経た徳島県のこれからの1世紀が、より輝いたものとなることを願い「置県100年のモニュメント」として構想されたもので、図書館、博物館、近代美術館、文書館、二十一世紀館など県の中核的な文化施設が集まった総合公園。徳島県の将来にわたる文化創造活動を先導し、県民の文化意識を高めていくためのシンボルとなるものである。総事業費300億円。5年の歳月をかけて、1990年11月に開園している。

 その中核施設が徳島県立近代美術館。「人間」をテーマにした近代・現代の絵画や彫刻、現代版画、徳島ゆかりの作家の作品を収集し、常設展示するほか、さまざまな企画展示や一般展示を行っている。ピカソの「赤い枕で眠る女」、「ドラ・マールの肖像」なども収蔵作品に名を連ねる。

 「国の財政難の中で、今までと同じように1.5億円の範囲で収集の維持ができるのかどうか、県民ニーズに応えることができるのかどうかがこれからの課題です」と穏やかな笑顔で話す武市克雄副館長。

 開館5年間は毎年2億円を、それ以降は1.5億円を収集費に当ててきたことが何よりの特徴。地方の美術館で収集費に1億円以上持っている美術館は数えるしかない現実から見れば、いくら県施設といえども半端でない。

 しかし、また人口26万人の徳島市を中心に県全体でも83万人のこの徳島県でこれだけの集中した文化施設がうまく機能しているのかどうか、そんな思いを失礼ながら率直に質問してみた。
 「この文化の森はコンピュータシステムが最先端の総合施設であるがゆえに、デメリットもあり、互いの横のつながりは取れずに、単独で動いている。企画展をやるにしてもなかなか人が集まらなくなってきてる。しかし、文化の創造は地道な活動の繰り返し。徳島のようなコンパクトな行政体が勝ち組になっていくためには文化振興は不可欠。明日の徳島のために頑張りぬいていきます」と表情がしまり瞳が光る。

 こうした公共施設、特に文化施設に対しては批判の眼も鋭い。対費用効果、対行政効果だけが数字で問われることもしばしば。しかし、徳島の十年、二十年後に思いを馳せるとき、これだけの文化の森から飛び立つ鵬雛に思いを馳せるとき、そこに一条の光を見出す。

その取組みや良し。


ホームページに戻る 視察報告メニュー