伊藤ひであきの視察報告

佐伯市の「総合運動公園整備」 01・11・14
 宮崎から「にちりん6号」で2時間。大分県の南東部、東に豊後水道を隔てて四国西南部と面し、天然の良港佐伯湾、悠久の番匠川、何よりも九州地域唯一の瀬戸内海気候で温暖な気候、大分南都の中核市ー佐伯市。人口5万人のこの街は、慶長の時代に鶴屋城城下町に始まり、かっては海軍航空隊が設置され軍都として栄え、平和産業都市、そして今、海洋文化都市として戦中、戦後、そして未来に向かっている。

 佐伯市政の基本理念は「豊かな心、豊かな福祉、豊かな郷土」、そして「一市民一スポーツ」のスローガンのもと、市民の健康づくりを推進している。

 その象徴なのが、中心部から車で20分、高台一帯に広がる佐伯市総合運動公園。平成元年から10年の歳月と約40億円の事業費をかけてテニスコート、多目的グランド、野球場、陸上競技場、多目的広場、弓道場、アーチェリー場、相撲場、市民総合プールを竣功させてきた。そして、来年にはウォータースライダーの建設にも着手する。

 なかでも、野球場は内野席が市民の三分の一に当たる15,000人収容のマンモススタンドであり、陸上競技場は第2種公認全天候型トラックと見事な芝生のサッカー場を併設している。市民総合プールの屋内プールは年中使える温水プールで25m公認プールである。

 温暖なこの地に合宿にやってくる大学チームも多く、それだけに合宿キャンプ場やセミナーハウスをどうしても作りたいという。また、念願の総合体育館もこの一角に建設して全体計画を完成させたいと思いは強い。

 人口5万人のこの市が、これだけの施設を擁し、市民スポーツの振興策を展開しているのには驚かされる。代々の市長が「作るなら中途半端なものは作るな」の気概で取り組んできたリーダーシップによるものだという。そして、その背景に、甲子園の常連校佐伯鶴城高校を中心に佐伯市出身のプロ野球選手の名前が次々とでてくるのである。阿南、野村、川崎、山中、高橋直己など、また9年前のバロセロナオリンピックの野球チームの監督山中正竹氏と水泳チームの監督青木剛氏もこの地の出身である。

 そして、今、見事なサッカー場を拠点にJ2の大分トリニータチームの公式試合が行われるだけでなく、来年に迫ってきた日韓共同開催のワールドカップのビッグイベントにベースキャンプ地として参加することで、市民に夢と活力を与え、その後における各種スポーツの振興に貢献しようと考えている。
 全国で80自治体が名乗りをあげているベースキャンプ誘致活動。12月1日には最終抽選で日本で予選を行う16チームと韓国で予選を行う16チームが決まる。そうした流動的な面もあるが、すでにアフリカ代表に決まったチェニジア共和国とは仮契約も済み、近々には同国の外務大臣が視察にやってくるという。

 佐伯市の市民スポーツの推進は、各種スポーツ大会やスポーツ教室の開催、市民スポーツクラブの育成・指導、競技スポーツの振興、体育・スポーツ組織の充実、指導体制の充実、そして体育施設の整備充実などの様々なプログラムが重なり合ってのことである。市内の小中学生がこれらの施設を使うのは全て無料という計らいも市長のトップダウンで行われている。

 「スポーツのまちー豊橋」を掲げた我が豊橋のスポーツ振興策−豊橋市生涯スポーツ推進計画も昨年度にまとめられたが、これだけの熱意とたゆまぬ積み重ね、何よりも戦略性が内包されているであろうか。また、神野地区の総合スポーツ公園構想も行く末は不明のままである。

 「隣の芝生はよく見える」のかもしれないが、佐伯市のスポーツ振興策ーそれは半端ではない。小さなまちのデッカイ気概が、スポーツ振興で都市間競争に打って出ようとする真剣さとなってひしひしと伝わってくる。

 視察に際し、佐伯市議会事務局の神崎書記、教育委員会体育保険課寺嶋課長、高瀬係長をはじめ多くの皆さまに誠意ある対応をいただきました。深くお礼申しあげます。

 また、途中、わずかの時間でしたが、佐伯市平和記念館「やわらぎ」を訪問させていただき、改めて戦争の悲惨さと平和の尊さを教えられました。館内で戦争体験を踏まえながら穏やかにご説明いただきました大分県甲飛会会員の檜垣氏にも御礼申しあげます。


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