伊藤ひであきの視察報告

大分市の「コンパルホール」 01・11・15
 今年は監査委員業務の関係でこの週しか日程が取れなかった行政視察。東九州をぐるっと回らせていただいたが最後の視察地は大分市。現在人口は43万人、平成9年中核市となり、「心かよい緑あふれる躍動都市」をめざす、風光明媚な九州の中核都市であり、東九州の交通の要衝である。

 その大分駅から約300mの地点に「コンパルホール」はある。「コンパル」とは「親しい仲間が集い、憩うところ」という意味で、市民から募集され、「語いと語感もよい」ということで名づけられたという。

 さてこの「コンパルホール」、大分市を中心に周辺市町村も包含した文字通りの総合コミュニティセンターである。開館は昭和61年、総事業費は用地代も含め70億円、年間維持費は人件費(30人、1.4億円)を含め4.5億円。
 鉄筋コンクリート7階建ての威容を誇り、500人収容の文化ホール、35万冊の蔵書の市民図書館、中央公民館、市民体育館、市民武道館、多目的ホール、天体観測ドーム、喫茶室、勤労青少年ホーム、婦人の家、市民ギャラリー、茶室まで揃えた多機能な複合施設である。

 「子供も利用できる。親子で利用できる。高齢者も利用できる。あらゆる人々が広く交流し、新しいコミュニュケーションを生み出す場ですから」館長の安東 保氏が穏やかに語ってくださる。

 一日平均4000人が利用し、複合施設の特性を生かし、スポーツイベントや文化イベントが様々に開催され、その機会に図書館も利用できる。多岐な市民ニーズを吸収し、市民の自主参加を促し、市民と共に感動と共感を生み出していくための様々なプログラムが展開されている。

 囲碁、写真、絵画、書道から、各種語学講座、各種音楽講座、各種スポーツ講座が多岐に用意され、それらに参加した市民が、更に一歩上の講座を自主的に開催していく。
 訪れたこの日も、体育館では卓球大会や幼児体操、ホールや会議室では養命大学、ギャラリーでは書道展、ロビーでは初のティタイムコンサートなど多彩に開催され、多くの市民で賑わっていた。

 そして、特筆されるのは「コンパルホールまつり」。「子どもの日フェスティバル」、「夏まつり」、「春まつり」を筆頭にビッグイベントが開催されていて、それらは「コンパル主催」行事なのである。嘱託職員を含め約30人の職員が、「プロデューサとなり、スタッフとなり汗をかくのです」安東館長の瞳が輝く。「貸し業務でなく、情報発信基地ですから」。一方通行でなく、市民と双方向で運営されているのである。

 そのために、他市での取組みや、市民ニーズ調査、アンケート調査を何度も繰り返し、時代の変化にどう対応していくか、どう反映していくか。絶えず追い求める努力を怠らない。館長は言う「多機能だから動いて汗をかかないと進まない、人材を育成していかないと時代に連いていけない」。この人ありての「コンパルホール」の意を強くした。

 ともすれば、こうした施設の責任者は役所OBの再就職先と用意され、無難に役目を果たすタイプの方が多いが、いつまでも挑戦者なのである。その気概が若い職員を動かし、館内にピーんと張り詰めた緊張感をもたらし、開設して15年の歳月を経ても、「新たなコンパルホールへ成長させていく」ための労苦を惜しまないのである。

 現在、豊橋では市民病院跡地に「こども関連施設」を、豊橋東口駅南地区に「総合文化学習センター」を配置し、中心市街地活性化策の切り札として推進計画が検討され様々な論議が行われている。
 その中で、この大分の「コンパルホール」も参考にされているが、「37万人の我が豊橋で果たして二つの公共施設に分散配置することが本当にあるべき姿なのであろうか」という素朴な疑問に行き当たる。

 「コンパルホール」のこれでもかというほどの複合多機能、そして、館長を先頭に「たゆまぬ挑戦」ぶりを知るにつけ、その思いを強くするのである。

 視察に際し、お話いただいた安東館長を始め、案内していただいた加藤課長補佐に厚く御礼申し上げます。

 4日間の駆け足の九州視察。行く先で出会った懸命な人々。高齢化が進み、ただでさえ経済環境の厳しい東九州各地、そこへ長引く経済状況が追い討ちをかけている。
 しかし、それを逆ばねに、真剣な街づくりへのチャレンジぶりを垣間見た4日間。さわやかな視察だった。


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