伊藤ひであきの視察報告

鹿児島の「都市農業センター」 01・11・12
 南国九州鹿児島は秋の陽がおだやかで、鹿児島空港に降り立つ前に機上からみた阿蘇の山々は雄大に広がっていた。今日から4日間、鹿児島市から宮崎市、佐伯市、そして大分市とそれぞれの調査項目にしたがっての行政視察。

 人口55万人、南九州の中核都市鹿児島市は訪れるたびにその風格が漂う。鹿児島市民病院、ごみ行政、ウオーターフロント計画と3度視察で訪問したが、今回は「都市農業センター」。

 歴史ある鹿児島市庁舎から北西へ車で約30分、高台に囲まれた広大な30haの敷地に広がる「都市農業センター」。
 農業技術の実証及び普及研修などを行うことにより鹿児島市の特性を生かした農業の振興を図り、土とのふれあいを通じて、市民の農業に対する理解と相互の交流を深めようとするのが設置目的。
 それだけに、園内は三つのゾーンに分かれている。

 農業研修ゾーンでは優良種苗の実証栽培や土壌分析、バイオ実験などのほか、黒毛和牛の肉質を向上させるための受精卵移植業務を行っている。バイオ実験室ではちょうどカトレアの品種研究が行われておりたくさんの苗の試験器が並び、アカデミックな雰囲気。また、狂牛病問題などで暗い話題の牛肉だが特産品の黒毛和牛の品質向上には畜産農家から期待が寄せられているという。生産者の研修を行う施設では農家の簿記実務や後継者のパソコン研修なども行われている。ビニールハウスや果樹園も配置されている。

 市民農園ゾーンでは市民に農作業を体験し、収穫の喜びを味わってもらおうと市民農園が724区画用意されている。家族用の628区画は1区画20uは人気があり、3年契約で申し込む人が多いとのこと。農作業の管理指導を行う園芸指導員を4人常時雇用していることも心強い。特筆すべきは車いす使用者用区画が用意されていること。車いすでそのまま作業できるように約60cmの高さの花壇の中で農作物を栽培できるようになっている。市民農園のバリアフリーには感激した。農具倉庫や休憩室、あずまやも配置されており至れり尽くせりである。

 ふれあいゾーンでは四季の花園やバーベキューができる食彩ハウス、ふれあい学習館、果樹園など農業への理解を深めてもらう施設や鹿児島で盛んなグランドゴルフができる芝生広場も配置されていて、ふれあいリフレッシュ空間である。

 日本一の農業粗生産を誇る豊橋から見た場合、こうした施策はどちらかといえばJA(農協)が中心となって行う施策の感がするが、「鹿児島ではJAは金融主体で推移してきた」という経過があるのだという。

 そして、何よりも農業県鹿児島の農業施策の中で、鹿児島市の農業は「1農家の耕地面積は45aと小規模で、かつシラス台地というハンディを克服し付加価値を高め、55万市民に野菜を供給していくために、ほうれん草やこまつ菜などの葉物野菜が中心であり、市独自でこうした施策を展開する必要がある」という。

 現在、豊橋市では資源化センター一帯にエコビレッジ構想があり、農業公園もその中で検討されている。大きくイメージが広がった鹿児島の「都市農業センター」視察。

 高台から望む澄んだ秋空とどっしり構える桜島、そして広がる広大な農園、印象的な光景でした。

 視察に際し、鹿児島市議会政務調査課の田中女史を始め、経済局農林部都市農業センターの児玉、前村両係長には大変にお世話になりました。

 レポートをまとめている途中、臨時ニュースでニューヨークでの飛行機事故が生々しく写し出されている。犠牲者が少ないことを、そして、テロによる攻撃でないことを祈る。


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