伊藤ひであきの視察報告

福山の「すこやかセンター」 01・10・02
 広島県の東部、人口38万人、中国地方4番目の都市規模を誇り、「人間環境都市福山」の実現に向けて取り組んでいる備後の中核市ー福山市。

 この福山市で今年5月1日にオープンしたのが「福山すこやかセンター」。医療・保健・福祉の総合連携複合拠点である。具体的には「保健所・総合相談・情報提供部門」「地域福祉活動・自立・社会参加支援部門」「在宅ケア推進支援部門」の3部門で構成する。福山市保健所、福山市社会福祉協議会、福山市医師会の行政と民間部門とで役割分担し、市民ニーズに合ったきめ細かいサービスを提供し、社会的トータルコストを低減しようとする意欲的な施設である。用地費も含めた総事業費は46,7億円

 それだけに、施設全体が障害者、高齢者に配慮されており、ハートビル法(高齢者・障害者が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律の誘導的基準」適合施設である。特に、トイレの呼び出し施設や非常時文字施設、難聴者集団補聴設備や、なかでもオストメイト(人工肛門)対応トイレは広いスペースで準備されている。太陽光発電やソーラ設備など環境にも配慮されている。

 1階にはNPO法人「福山手をつなぐ育成会」が清掃事業を受託し、精神障害者家族会ーバラ会が喫茶コーナーを、社会福祉法人「すこやか」が身障者デイサービスセンターを運営している。

 特に、この施設の「売り」は、水浴訓練室で、障害者の健康増進、身体機能の維持、向上を図り、障害者や高齢者の自立と社会参加を促進するための、温水プールと昇降式浴室である。障害者団体からの強い要請もあり、一度は消えかかった水浴訓練室の計画は、身障者連合会や障害児父母の会連合会の実現への粘り強い活動と市議会の後押しで、実現した経過があり、特筆される。

 それだけに、20m×6m(3コース)の温水プールは、可動式であり、車椅子用スロー等により、障害のある方でも安心して利用できる施設となっており、利用者もうなぎのぼりで、8月には2,500人を越えている。障害者は無料であり、一般者の利用は2時間を基本に500円。

 また、ボランティア活動センターでは、若い女性グループが活発に活動の協議をしていて、さわやかな光景でもあった。
 高齢者も含めた総合相談窓口が設置され、いつでも安心して相談に行ける機能と153台分しかない駐車場の拡張が今後の課題である。

 福祉は、もはや特別なものでなく、ごく普通の社会の仕組みそのものであり、その拠点はハード・ソフト両面から、その質が問われる時代に入っていることを実感した。そのためにコストがかかろうとも、それは新しい公共投資であり、街づくりそのものである。

 「福山すこやかセンター」は福山市の市政そのものである。抜けるような青空に福山駅に並ぶように福山城がそびえていた。


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