伊藤ひであきの監査報告


住民監査請求公表 7月26日


 13豊監査公表第4号
 地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第1項の規定に基づく住民監査請求の結果を、同条第3項に基づき次のように公表する。
  また、同法第252条の43第7項の規定に基づき、個別外部監査を相当と認めなかった理由についても併せて公表する。

  平成13年7月26日

                  豊橋市監査委員 伊藤 秀昭
                  同       岩見 征生
第1 監査の請求
   平成13年6月8日付で、次のとおり監査の請求があった。

           豊橋市職員措置請求書
1 請求の趣旨
 1 2000年5月26日の午前11時45分から午後1時まで、豊橋市役所東館第41会議室において「平成12年度新旧監査委員懇談会」が開催された

 2 この懇談会には、早川勝市長、小出正司助役、坂部道夫収入役、平松裕史総務部長、加藤潤こ財務部長、堀内一孝行政課長、渡辺保之代表監査委員、橋本好秋監査委員、山岡弘幸監査委員、石黒巌監査委員、野末義正前監査委員、村松千春前監査委員及び加藤紀之監査委員事務局長の13名が出席した。

 3 この懇談会では、平松総務部長が司会を担当し、早川市長の挨拶、渡辺代表監査委員の挨拶、市議会選出の野末、村松前監査委員及び山岡、石黒両新監査委員の挨拶が順次行われた後、上記13名の出席者が昼食をともにした。

 4 昼食費用は、有限会社一平の弁当(消費税込単価1,575円)13個、合計20,475円、市庁舎食堂の紅茶(消費税込単価230円)13杯、合計2,990円、総計23,465円であり、2000年6月15日に市交際費から支出された。

 5 この昼食費用の支出は、次の理由で違法かつ不当な企金の支出である。
@ 監査委員は執行機関である市長の事務執行を中立公正に監査しなければならない義務を負うにもかかわらず、監査される側である市長及びその補助機関と監査する側である監査委員(又は直前までその職にあった前監査委員)及びその補助機関とが「懇談会」と称して公金を使って昼食をともにするのは、監査委員の独立性や中立公正さを放棄せしめ又は自ら放棄するものであって、地方自治法第198条の3第1項の規定に反し違法かつ不当である。

A市交際費は本来豊橋市の執行機関が行政執行上豊橋市を代表して外部と交際をするために要する経費であるから、執行機関である市長及びその補助機関と監査委員及びその補助機関との内部的飲食の経費を交際費から支出するのは執行科目を誤っており、地方自治法施行令第150条第1項第3号に反し違法かつ不当な公金の支出である。

 6 従って、上記公金を支出した市長又は支出手続担当者は、上記違法かつ不当な公金支出により豊橋市が被った損害を賠償する責任がある。

 7 よって、豊橋市長に対し、次のとおり勧告することを求める。
  豊橋市長又は全ての支出手続担当者に上記違法かつ不当に支出した公金23,465円を豊橋市に返還させること。

 2 監査委員監査に代えて個別外部監査契約に基づく監査によることを求める理由の趣旨
 本件住民監査請求に関しては渡辺、橋本両監査委員は本件懇談会の参加者であり、地方自治法第199条の2の規定により除斥され監査を行うことはできない。
 伊藤、岩見両監査委員は市議会から選出された監査委員であり、本件懇談会に参加した利害関係のある市議会からの4名の監査委員の同僚議員の立場である。
 このことから、伊藤、岩見両監査委員による監査は「仲間内」による監査であるといわざるを得ない。このような監査では、地方自治法が要請する監査委員監査の独立性や中立公正さを担保することはできないことは明らかである。
 よって、本件住民監査請求については、監査委員の監査に代えて、個別外部監査契約に基づく独立性のあるかつ中立公正な監査を求める

3 監査請求人
 豊橋市多米西町こ丁目23番地の2   長屋  誠
 豊橋市西口町字西ノロ46番地の56  柿招 隆清
 豊橋市下地町字額上51番地の1   横田 正光
   豊橋市石巻本町字中野口26番地         豊田 八千代

 4 事実を証する書面
・平成12年5月26日会食の弁当代(20,475円)の支出負担行為決裁書写し
・平成12年5月26日会食の紅茶代(2,990円)の支出負担行為決裁書写し
・平成12年5月26日会食の弁当代(20,475円)の支出命令書写し
・平成12年5月26日会食の紅茶代(2,990円)の支出命令書写し
・豊橋市長と新旧豊橋市監査委員との懇談会の開催状況
・平成10年5月18日会食の弁当・フルーツ代(27,300円)の支出負担行為決裁書写し
・平成10年5月18日会食の紅茶代(2,730円)の支出負担行為決裁書写し
・平成11年5月24日会食の弁当代(22,050円)の支出負担行為決裁書写し
・平成11年5月24日会食の紅茶代(3,220円)の支出負担行為決裁書写し
 


 第2 監査の結果
 第1の監査の請求について、監査した結果を次のとおり請求人に通知した。

                      13豊監査第118号
                      平成13年7月26日
 豊橋市多米西町二丁目23番地の2   長屋  誠 様
 豊橋市西口町字西ノロ46番地の56  柿招 隆清 様
 豊橋市下地町字瀬上51番地の1   横田 正光 様
 豊橋市石巻本町字中野口26番地   豊田 八千代 様
                   豊橋市監査委員 伊藤 秀昭
                   同       岩見 征生
 

                豊橋市職員措置請求について(通知)

 このことについて、地方自治法(昭和22年法律第67号)第242条第3項の規定に基づき監査した結果は、下記のとおりです。
                記
1 請求の受理
 本請求は、平成13年6月14日に受理した。

2 監査執行上の除斥
 本監査請求にあたって、豊橋市監査委員渡辺保之、同橋本好秋は地方自治法第199条の2の規定により除斥した。

3 監査の実施
 監査は、請求人に証拠の提出及び陳述の機会を与えたほか、市当局から提出された書類についての調査と関係職員からの事情聴取等により実施した。

 (1)監査対象事項
 措置請求書に記載されている事項及び請求人の陳述の内容を勘案した結果、請求の趣旨を次のように解して監査を実施した。
@平成12年5月26日に開催された新旧監査委員と市長の懇談に伴い公金を使用して昼食をともにしたのは監査委員の服務を定めた地方自治法第198条の3第1項の規定に反し、違法かつ不当であるか。
A同食事代等を交際費で支出したのは執行科目を誤っており、予算の執行に関する手続を定めた地方自治法施行令第150条第1項第3号の規定に反し、違法かつ不当であるか。

 (2)監査対象者
 豊橋市長及び上記代金の支払いに関与した支出手続担当職員
 (3)請求人の陳述
 請求人に対し地方自治法第242条第5項の規定により平成13年6月25日証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
 (4)事情を聴取した監査対象者及び関係職員等
 平成13年7月11日に監査委員室で下記関係職員等について事情の聴取及び懇談会の内容についての確認を行った。
 ・収入役(前総務部長)
 ・福祉保健部次長(前企画部秘書課長)
 ・企画部秘書課長
 ・総務部行政課長
 ・議員選出前監査委員

 4 監査の結果

(1)事実確認について
 議員選出の監査委員2名(野末義正前監査委員、村松千春前監査委員、石黒 巌監査委員、山岡弘幸監査委員)の交替に伴い、市長の主催により平成12年5月26日に豊橋市役所東館東41会議室において午前11時45分から午後1時まで「平成12年度新旧監査委員懇談会」が開催された。出席者は早川勝市長、小出正司助役、坂部道夫収入役、平松裕史総務部長、加藤潤二財務部長、堀内一孝行政課長、渡辺保之監査委員、橋本好秋監査委員、加藤紀之監査委員事務局長及び上記議員選出の監査委員4名の計13名であった。

 同懇談会について関係職員からの事情聴取によれば、懇談会は市長が監査業務経験を通して感じられた監査委員からの市政に対する率直な意見を聞き、今後の市政運営に役立てるために、市長はじめ市三役等と忌憚のない率直な懇談をすることを目的としたものとしている。
 同懇談会についての記録がないため、いつから開催されたかの特定はできないが、ここ数年の監査委員の交替時には上記の目的により開催されてきた。

 懇談会の懇談内容について記録などがなされていない。同懇談会に出席した関係職員への事情聴取及び前監査委員への確認によれば、懇談内容は市長から前監査委員への労のねぎらいと、新監査委員に対しての厳密な監査への期待の言葉があり、前監査委員からは監査を通して得た市政に対する率直な感想、新監査委員からは今後の監査を実施するについての抱負等を述べる形での懇談会として催されている

 懇談会が昼食時に開催されたのは、各出席者が多忙のためスケジュールの調整が比較的容易であり、できるだけ多くの時間が確保できることを考慮して設定したとしている。
 昼食の提供は、懇談会の開催時間と率直かつ忌惇のない意見交線を行うには会食の場を設けるのは適当と考えたためであるとして、参加者13名に昼食(税込1食1,575円)と紅茶(税込1杯230円)が提供されていた。

 昼食代と紅茶代は平成12年度秘書課所管の一般会計の2款総務費、1項総務管理費、1目一般管理費、10節交際費において懇談会開催日に支出負担行為決裁と支出命令がなされ、平成12年6月15日に支払がされていた。なお、平成13年度の同懇談会は平成13年5月16日午前11時から同45分までの45分間の開催であり、昼食の提供はなく、コーヒー(税込1杯315円)の提供のみであり、同コーヒー代は平成13年度秘書課所管の一般会計の2款総務費、1項総務管理費、1目一般管理費、11節需用費(細節食糧費)として支出されていた。

 (2)監査委員の判断

  @ 地方自治法第198条の3は平成3年度の地方自治法の改正により制定された規定であり、第1項において監査委員の職務について公正不偏な態度の保持、第2項で守秘義務について規定してある。
 請求人が主張する「懇談会」と称して公金を使って昼食をともにすることが地方自治法第198条の3第1項の規定に反しているかどうかを検証すると、平成12年度新旧監査委員懇談会は市長の主催により退任監査委員への感謝と監査委員からは監査を通して得た市政への実感等を懇談という形式により行われたものと判断される。
 監査委員の監査についての権限は、市長からの関与を受けることなく独立して行使できるものであり、その監査を通して得た市政への実感等を市長が監査委員の交代時に懇談というかたちにより直接聞くことは、市政の執行者である市長にとって有用なものであると考えられる。
 また、監査委員が市政の執行者である市長へ監査を通して得た市政への感想を直接述べ、うち解けて話し合うことが監査委員の職務についての公正不偏な態度の保持義務に抵触する行為であるとは判断されない。
 開催時間が昼食時に設定されたことについても一定の合理性は認められ、開催時間を考慮すれば、同懇談会において昼食の提供がされたことについても理解はできる。昼食の内容についても社会通念上の範囲のものであり、昼食が提供された同懇談会に出席したことにより、監査委員が、地方自治法第198条の3第1項に規定している監査委員の独立性や中立公正さを放棄しているとは考えられない。
 なお、地方自治法第198条の3第1項の「監査委員の職務遂行における公正不備な態度の保持」に規定する服務の保持は、監査委員に対するものであり、本件請求の対象である市長及び代金の支払いに関与した支出手続担当職員に対する規定ではない。

 A交際費は−般的には、対外的に活動する地方企共団体の長その他の執行機関が、その行政執行のために必要な外部との交際上要する経費で、交際費の予算科目から支出される経費である。」(昭和28年7月1日 自行行発第200号 千葉県総務部長あて行政課長回答)と解釈される。
 監査委員が豊橋市の組織の中の機関であることを考えれば、対外的な活動であるとは解釈されず、食糧費での執行が妥当であるとも考えられるが、同懇談会における食事が、退任した監査委員への感謝の気持ちを表すことも目的のひとつであったとすることを考えれば、食糧費の執行でなく交際費による執行も考えられ、交際費で執行したことが請求人の主張する地方自治法施行令第150条第1項第3号に反し違法かつ不当な企金の支出であるとまでは判断されない。

 (3)結 論
 以上のように、平成12年度新旧監査委員懇談会に伴う公金の支出については違法かつ不当であるとは認められず、請求人の措置請求については理由はないものと判断する。


 5 市長に地方自治法第252条の43第2項前段の規定による通知を行わなかった理由(個別外部監査契約に基づく監査によることを相当としない理由)

 外部監査制度が設けられた趣旨は、地方企共団体の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者による外部監査を導入することにより、当該団体における監査制度の独立性専門性を一層充実するとともに、地方企共団体における監 査機能に対する住民の信頼を高めることにあるが、この制度は監査委員制度と相反するものでなく、地方公共団体の行政の適正な運営の確保という共通の目的に資する制度であり、両者が相互に機能を発揮することによって地方公共団体の監査機能の全体が充実することが期待されているものである。

 今回の住民監査請求は、市長と監査委員が懇談をした際にとった食事代の公金の支出に関するものであり、その財務会計上の行為について違法又は不当性について判断を行うものであり、特に専門的な知識や高度の判断を必要とするとは認められず、監査委員の監査に代えて、個別外部監査契約に基づく監査を実施することが相当であるとは認められない。

 なお、請求人は個別外部監査を求める理由として当日懇談会の出席委員及び 現在の監査委員のうち、平成13年5月15日付で新たに選出された議員選出監査委員は、前監査委員とは市議会の同僚の議員の立場であって、いわば「仲間内」による監査であって、地方自治法が要請する監査委員の独立性、中立公正を担保できないとして個別外部監査契約によることを求める理由としているが、当日の懇談会出席監査委員については法第199条の2の規定により除斥をしており、また、市長が新たに市議会議員のうちから市議会の同意を得て選任した現在の監査委員においても、個々の監査委員が単独で職務権限を行使でき、事実を客観的に認証する役割を担っており、公平、中立的な監査の実施は可能である。議員のうちから選任された監査委員であることを理由に独立性及び中立公正さが保証されないとはいえず、請求人の主張の理由があるとは認められない。


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