伊藤ひであきの視察報告

● 監査に人あり、重みあり−和歌山・堺 ● 2001.07.23

 ●7月23日に訪れたのは和歌山市監査事務局。和歌山城を正面に見据えた会議室でお会いしたのは通称”いとまっつあん”こと伊藤松雄代表監査委員。
 「監査とは何か、監査委員とは何かを追求し続けてきたが、未だ解りまへんわ」豪快な人間である。昭和62年まで長く市議会議員を勤められ、市議会議長を歴任するなど和歌山市議会の重鎮として活躍されて、その間の行政への幅広い精通と培った見識から要請されて平成6年の 地方自治法による常勤監査制度の施行と共に、現職に就かれて7年目の大ベテランである。

 「簿記から、パソコンまで何でも勉強しますんや」意欲旺盛である。 決算審査に当たっては監査委員による質疑が行われるが、往々にして事前に基本的な質疑事項が渡されていて、内々の監査という側面が見受けられる。
 しかし、和歌山では違う。「議会の追及よりも厳しいんですわ」監査事務局のスタッフが言う。それほど、真剣に真正面から愚直に取り組まれている”人間”に和歌山で出会った。
 紀州の暴れん坊将軍ー吉宗は33歳までこの和歌山城の藩主として活躍し、享保の改革の礎をここで築いたという。その和歌山に人あり。すがすがしい感動をもって堺市に移動した。

●7月24日(火)は朝から温度計はうなぎのぼり。早朝の大浜公園を約1時間歩いた。旧堺灯台やフェニックス通り。過去に何度も繁栄と衰退を繰り返してきた堺の歴史。その刺激と静けさが朝の澄んだ空気の中で交錯する。
 人口80万人,関西圏第四の拠点都市、中核市堺は政令指定都市への移行を目指している。そびえ立つ堺市役所の最上階展望室からは 西に大阪湾を望み、東南部には緑豊かな丘陵が広がり、都心部の高層ビル群と鮮やかなコントラストを描いている。中心部には仁徳陵の古墳群や公園など緑豊かな自然に恵まれているのがよく解る。
 堺市監査委員事務局の吉村局長の説明が淡々と続く。そして、その一つ一つから人口80万人の大所帯の独立性、中立公平さを貫こうとする気概がにじみ出る。中世自治都市の歴史の重みか、歴史と伝統が育てた地場産業が立たされている厳しい局面か。
 37万都市-豊橋にはない行政の緊張感が伝わってくる。

<< 調査事項の三市比較 >>
 

項  目 和歌山市 堺市 豊橋市

1.市の概況

人 口 384,855人 791,404人 370,231人
世帯数 143,524世帯 298,795世帯 131,050世帯
面 積 210.22ku 136.79ku 261.26ku
2.監査委員
定数 4人 4人 4人
識見の経歴 市議OB、市議OB 市役所OB、会計士 市役所OB、税理士
 報酬識見(代表) 510,000円 715,000円 697,000円
    識見 154,000円 152,000円 231,500円
    議選 55,000円 66,000円 88,500円
3.監査(委員)事務局の定数 10名 15名 10名

4.監査委員費
 H13年度当初予算

116,113千円 157,246千円 165,630千円
5.例月出納検査
実施期日 毎月概ね28日 毎月下旬

毎月27日

実施方法 事前に事務局職員による予備監査を行い、監査委員に復命。検査当日は概要説明を受けた後、提出資料の説明の後、委員による質疑応答を行う。
報  告 事務局で案を作成し、委員の決裁を経て、市長及び議長に報告。写しを収入役、事業管理者に送付
6.定例監査実施要領      
実施期日 11月から12月、2月から3月 10月から11月、2月の年2回 12月から翌年5月まで
実施方法 監査1ヶ月前に市長へ通知し、資料の提出を求め対象部室へ出向き調査 監査2ヶ月前に書類、資料等の提出を求め、事務局職員による事前調査を実施、当日は事務局各担当課長から調査結果報告後、事務事業説明を受け質疑応答を行う。 1部局15〜20日間で事務局職員による予備監査を行い、後は例月出納検査と同じ
公表等 監査後、指摘事項の改善等にについて担当部長から文書で回答を求め、事務局で検討のうえ、委員決裁により都度、市長、議長に報告。公表は市公報に登載。

市役所掲示場に掲示。

部局単位で、都度、報告、公表。市長議長に報告。
公表は市掲示板に掲示し、じょうほうひろばなどで写しを閲覧。
対象部の
ローテーション
4年で一巡

2年で一巡
7.決算審査実施要領      
実施時期 企業会計 5月中旬〜7月中旬
一般、特別会計 6月中旬〜8月上旬
企業会計4月中旬〜7月下旬
一般特別会計5月上旬〜8月下旬
企業会計 6月上旬〜7月中旬
一般、特別会計9月上旬〜10月中旬
実施方法 必要書類の提出を求め、事前調査を事務局で行い、委員審査においては、決算概略説明を受けた後、委員の質疑により行う 全ての部局において事務局職員より形式審査、及び実質審査を行う。委員審査は事務局による事前調査結果報告後、監査室において所管課長から説明を受け、質疑応答を行う。約1時間。なお、一般・特別会計においては市長の出席を求め、委員による公表を行う。 あらかじめ抽出された決算審査重点事項に基づき職員が予備審査を行い、委員に復命し、後日、委員が担当部課長と質疑応答を行う。

意見書の提出

市長に送付

審査結果に改善意見等をつけ、監査委員会議で協議検討のうえ決定し、監査委員が意見書の内容を説明し、市長に手渡す。

本会議、決算委員
会などへの出席



企業会計-9月議会提出 12月議会認定
一般特別会計-9月議会提出 12月議会認定


共に9月議会に提出、11月議会に認定

本会議及び決算委員会に出席要求あり。
企業会計-9月議会提出認定、
一般・特別会計-12月議会提出、認定
8.工事監査について      

技術職員の
配置について

事務局に技術職員は配置されていない。監査対象工事は1件1,000万円以上の施工中の工事の中から選定 常勤職員1名(建築)、非常勤嘱託員1名(土木)が配置されており、定期監査と位置づけ毎月実施。対象は1,000万円以上、出来高30%以上の中から土木3件、建築2件程度抽出して調査。 技術職員2名が配置されており、定例監査審査の際、工事関係資料から数件を抽出して調査。

技術士による
業務委託

H8年度から技術士による技術調査業務委託を実施。
H13予算570千円
設備工事を社団法人大阪技術振興協会に委託。
H13予算433千円
平成5年度から技術士による技術調査業務委託を実施。
H13予算1,429千円
9.財政援助団体等監査について      
実績及び予定 H10年度1団体
H13年度は未定
H12年度 2件
H13年度 2件
H12年度 2件
H13年度 2件
監査対象 財政援助団体、出資団体及び公の施設管理委託団体 財政援助団体及び同団体を所管する部局
報告及び公表

市長、議長に報告すると共に、対象団体には所管部局を通じて報告する。公表は定例監査と同じ
10.行政監査について

実施状況と方法
及び公表について

監査委員が施策の動向などを踏まえ監査のテーマを選定。H12のテーマは都市公園の整備及び維持管理について。公表は定期監査に準ずる。 H11年度の「広報活動について」単独実施。H12年度は「小中学校の就学にかかわる援助金等について」定期監査と並行して実施。公表は定期監査と同じ。 H4年度に「委託業務」について実施。H12年2月〜9月に「公の施設の管理運営について」をテーマとして実施。予備監査、現地監査、本監査実施。公表は定例監査と同じ
11.住民監査請求の最近の事例 H11@市長交際費にかかわる和歌山市長措置請求A地方新聞紙代に支出した市長交際費の返還請求
H12業者が談合によって不当な利益を得たとする返還請求
H13.楽市楽座事業にかかわる敷金の返還請求・元料亭旅館を迎賓館として利用する整備事業に対する返還請求
H11@校区補助金について(棄却)Aし議会選挙の公費負担(棄却)
H12@水道局分館警備業務委託料(棄却)A学校給食業務委託料(棄却)B議員の費用弁償(棄却)C有害物不法投棄(却下)
H11@更新焼却炉の契約及び支出の差し止め請求について
H12@土地開発公社の取得した土地の取引についてA市長交際費について
12.包括外部監査の状況      
外部監査人 公認会計士(補助10名) 弁護士(補助者8名) 公認会計士(補助7名)
契約年月日 H12.4.1 H12.4.1 H12.4.1
契約金額 15,414千円 21,000千円 12,000千円
選定テーマ ・財団法人和歌山市福祉公社及び福祉について
・公有財産の管理について
・堺市の行政事務の外部委託に関する一切の事項 ・土地の取得及び売却の処理手続き並びに保有土地の管理状況
・市税等の徴収管理

 


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