伊藤ひであきの地方からの提言


崩れた安全神話−児童殺傷事件が問うもの 2001.6.20

 6月8日、大阪の池田小学校で児童が殺傷された事件は、全国の学校現場に衝撃を広げている。各地で進んでいる「学校開放」の流れを見直そうという動きも出てきた。学校の危機管理はどうあるべきか。子供たちの安全をどう確保していけばいいのか。突きつけられた課題の根は深い。

●現場の苦悩
 今回の事件直後、市内の10校の小中学校の校長や教頭に面接し、今後の対応について話し合った。いずれも学校の危機管理について現場の責任者に突きつけられた衝撃的な事件という認識と、「開放」と「安全」の両立にどう取り組めばいいのかという苦悩がありありと伺えた。
 なかには市や県からの通達や、文部科学大臣の談話まで次々と送られてくるが、受け取る現場では「"通達あって対策なし"で、学校ができる事はすべてやるが、だからといって子どもの安全を確保できるか。金がかかる事、人手がかかる事には対応できない」という悲痛な叫びもあった。
 「開かれた学校」とは門を開けっぱなしにして、いつでも誰でも入ってくる状態が「開かれた学校」だろうか。それを前提にすれば閉鎖的だった昔の学校に戻ればいいというおかしな論議になってしまうという指摘もあった。
 防犯ブザーやインターホンの設置を予算がなくて、PTAの特別会計でとりあえず設置した学校もあった。
 「命が信号を作る」という言葉があるように、結局、豊橋市内で同じような事件が起きるまで、市教委は重い腰を上げる事はないでしょうというあきらめの指摘もあった。

●教育長に申し入れ
 6月14日、我々公明党豊橋市議団は、市内の小・中学校や幼稚園・保育園の安全管理に全力を尽くすこと教育長に申し入れた。具体的には

 1.「学校安全対策協議会」の設置
地域の学校安全対策協議会は、児童生徒の保護者、PTA、総代会、児童相談所、警察など地域の諸機関が、学校などと協力し合い、日常的に地域ぐるみで学校の安全を確保していくための体制である。
 2.「スクールガードマン制度」の導入
 地域ボランティアやPTA、さらには民間警備会社や退職警察官の活用なども含めた警備体制の強化を早急に検討すること。実際、米国では民間警備会社のガードマンを配置するスクールポリスというシステムが普及している。

●対応早い各地の取り組み
 岐阜県では600の小中学校の1割60校に「学校安全サポーター」を二学期始めから設置する。川崎市は教員とPTAによる「安全対策協議会」を設置し、小学校140校で「校内パトロール」の実施を始めた。京都市は266校に防犯システムの設置を決めた。1億4千万円の緊急予算である。小牧市や亀山市は防犯ブザーの設置を決めた
 いずれも具体的であり、何よりも対応にスピードがある。

●危機への「体質改善」と「意識改革」を
 豊橋市内では5月下旬には旭小学校でシンナー常習者が放送室にまで進入し、教師が殴られたという事件もあった。昨年5月には小学生が連れ去りという衝撃的な事件もあった。にもかかわらず、「豊橋ではおきないだろう」という甘さが市教委にはあるのではないか。現場の校長教頭に会って痛感したのは「予算がないから」というあまりにもお役所的体質で、安全管理の意識の薄さである。問われているのは子どもを預かる学校の危機管理への意識と体質である。

●人間主義は時代の要請
 「期待」と「不安」で始まった21世紀。営々として築かれてきた20世紀の歩み、その恩恵の反面に時代の暗い闇が人々の心に拭い去れない影を落していることをこの半年間に起きてくる衝撃的な事件が証明している。「つよる心」が失せ、コントロールが効かなくなってしまった社会…誰の目も曇ってしまう現実である。

 人間は「つよる心」への「内なる戦い」を絶対に回避してはならない。「内なる戦い」を勝ち抜くには、漫然たる日常性から脱却し、「たゆむ心」と決別し、自己を律する「つよる心」でありたいと自己練磨に挑戦しつづけなければならない。我々が主張しつづけてきた「人間革命」とはこの事である。


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