伊藤ひであきの視察報告

● 青春の大垣の街はやる気だ ● 2000.11.15

 揖斐川水系の自噴帯にあり、良質で豊富な地下水に恵まれる水都−岐阜県大垣市。県立大垣北高校での16歳からの3年間、そしてコマツ大垣営業所所員としての26歳からの7年間、我が青春の地である。

 近鉄養老線で通学していたので大垣駅前に立つと”あの頃”が澎湃と蘇ってくる。駅前のロータリーには亀が泳ぐ噴水があったが、すっかり広くなって跡影もない。
 当時は高校生には出入りが禁止されていたが、よく出入りした”純喫茶”もなかった。吉永小百合の日活映画を見に通った市役所前の映画館も、初めてやった”パチンコ屋”も・・・。ゲルマニユウムラジオを買った百貨店は空きビルになっていた。
 営業マンとしてスタートを切った大垣営業所も市役所前にあったが、岐阜支店に統合されてもうなかった。よく行った市役所横の喫茶店は変わらずのテーブル配置で、チャーミングだったママさんは少々お年を召されて・・・。

 岐阜県西部の中核都市−大垣市は人口153,000人、79.75ku、大正7年市制施行(82年目)。大正初期から繊維産業を中心に発展してきたが、糸へんの構造不況で産業転換が遅れ、今、県のソフトピアジャパンを核とする高度情報産業都市としての可能性に賭けている。
 大垣市議会党派別構成は自民クラブ 20人、民主クラブ 6人、市議会公明党 3人、日本共産党 1人、大垣市を良くする会 1人、自由民主党大垣市議会 1人、現員数 32人。

 この大垣市、古くは城下町として、その後は繊維産業など業務集積により、集客力を発揮してきたが、全国共通的に時代の変化の中で、ファミリー層は郊外の大型店へ、若者は岐阜市や名古屋市へ流出し、中心部の拠点性は低下してきている。いかにして特色ある商業集積を形成していくか−−大垣市もまたこの課題に挑戦している。

 平成10年7月の中心市街地活性化法の施行、基本計画の策定、大垣市TMO設立準備、TMO構想策定、そして平成11年12月の大垣市TMOの設立、平成12年2月の大垣市TMO推進協議会の設立と全国同じようなステップでのTMOのパレードであるが、豊橋市のそれと比べても約6ヶ月くらい前倒しである。
 これは今年、3月25日から10月9日までの「決戦関ヶ原大垣博」が開かれ、これに対応した活性化策を展開する必要があったからである。

 特徴的なのは大垣市TMOは大垣商工会議所なのである。ここが豊橋市TMOと大きく違う点である。豊橋市の場合は新会社「豊橋まちなか活性化センター」を設立。資本金四千万円。市と商工会議所が各一千万円、商業者25者が二千万円出資、商工会議所会頭が社長に就任した。今年8月である。
 今回の豊橋市長選で再選を果たした早川市長の対抗馬に入れ揚げた豊橋商工会議所と市長との関係とは比べ物にならないくらい、大垣では商工会議所との関係がうまくいっているのである。

 こうした、仕組みと施策の展開をリードしているのが高橋経済部長と商工観光課の伊藤主幹である。特に伊藤主幹の「大体、商業者は収益のあがる事業には関わってくるが、収益が上がるかどうか分からない事業には腰が重い。しかし、よくよく中心市街地活性化法を読み返せば、中心市街地商業者活性化法にはなっていない。ならば、その事に関係なく中心市街地を活性化すればいいのだ」という持論で中央突破していったと言う。ここがおもしろい。こういう人があって、様々なユニークな施策を展開している。

 まず、「まちづくり工房大垣」の発足である。単に商業者に留まらず、市民、学生など幅広く参集し、自ら考え、自ら行動する担い手育成に取りかかる。

 また、大垣地域産業情報研究協議会を設立している。これは「いかに大垣市の産業を振興し、まちづくりをどう行っていくか、新しいアイデアをいかに生み出していくかのリーディング機関」である。

 こうしたTMO応援部隊のハード・ソフト両面からの取り組みが、歯車をいくつも回転させる。

 具体的には2年前から空き店舗を借用して、大垣商工会議所の直営店として三つの店舗を管理・運営している。

@「ちゃれんじ横丁まちの駅」−−気軽に入れて、休息ができる憩いの広場であり、市民活動の拠点である。この中に、この夏からは2坪のチャレンジショップが開かれている。リサイクル情報の自動販売機もある。

Aマイスタークラブ−−情報誌「マイスター新聞」の発行や岐阜経済大学生と商店街の共同商品開発の研究や関係情報の受発信などが行われている。

Bスインクショップ・農家の店−−西巳の地域の交流スペースとして朝採り新鮮野菜や農産物の即売を行っている。

 この三つの店を訪問したが、みんな元気に取り組んでいる。

「行政の金、行政の企画」ばかりあてにして、半身で構えている豊橋のTMOにはまだこうしたアイデアと具体性はない。例えば、豊橋技科大、愛知大学、豊橋創造大学の学生達に中心市街地に買い物に、遊びに来てもらうために、大垣を見習って「学割の店」を開いたら若者がペアで、グループで集まってくるではないか−−こういう発想は豊橋にはない。

 それでも74万人が集まった「大垣博」は終わった。大垣TMOはこれからが勝負である。しかし、あのユニークなやる気の主幹と、商工会議所と、なによりもやる気の大垣の若者とおばさんたちはきっと大きな柿を実らせるだろう。

 視察に際し大垣商工会議所の伊藤事務局長、市経済部の高橋部長、伊藤主幹、議会事務局の箕浦局長、中野課長補佐に雨の中、大変お世話になりました。ありがとうございました。


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