伊藤ひであきの視察報告

● ハウステンボスと佐世保駅の再開発 ● 2000.04.19・20

 半農半漁の一寒村であった佐世保が明治19年の軍港設置で大きく膨張し、明治35年には市政を施行し、戦後は戦災の復興と旧軍港の遺産を活用して、産業港湾都市を目指す佐世保市。 (人口24万人、面積248.30ku 市議会議員定数 36人 党派別構成 自由民主党9人、社会民主党5人、公明党4人、無所属18人)

<<ハウステンボス>>

 荒れ放題だった工業団地を整備し、1992年にオープンしたハウステンボス。敷地面積152ha、TDL(東京デェズニーランド)の約2倍の広さである。
 いうまでもなく、「エコロジーとエコノミーが共存する新しい街づくり」の実験場でもある。そのために土壌改良を行い、花30万本・木40万の植栽を行い、運河・石積み護岸、下水の完全処理とリサイクル、生ゴミのコンポスト(肥料)処理、クリーンエネルギーの利用などの自然を再生し共生していくための施設を設置している。また都市インフラの共同溝埋設、マルチメディア実験、淡水化プラント装置など未来型都市の具体化がなされている。投資額はオープン時2,250億円、現在までに約3,000億円。環境に配備した分の設備投資は600億円は余分にかけている。この部分が採算を圧迫しているとも言える。
 しかも、3500人の社員全体が環境文化研究所のメンバーとなり、自然環境委員会や文化委員会などに分かれ取り組んでいる。「リサイクルとエコシティ」などのテーマで環境フォーラムも実施し、情報発信している。

 年間403万人の観光客が訪れているが、うち海外からは1割強の36万人。中国本土の旅行自由化をにらんでアジアの観光拠点を目指すという。

 課題の分析も明確である。訪れる人の35%がリピーターで、TDLの96%とは大きな差がある。また主に20代後半の女性、50代、60代の熟年夫婦が中心になっている。

 日本の西の果ての、ひたむきな環境コンセプトは同時に、会社としての経営も問われる。経常赤字が63億円だが設備投資償却分を除けば、6億円の黒字、何とか稼いだお金で回転できる段階までは来ていて、主取引銀行の興銀に202億円の債権放棄を要請していました。それが認められたために、神近社長も自らの経営責任を明確にしようとする動きもある。

 同社は2002年度の単年度黒字化を目指していますが、自治体からの支援について「長崎県と佐世保市からは『具体的に何ができるか検討する』との回答をいただいている。だが、宮崎のシーガイアに対するような財政支援は求めない」とあくまでも自立志向。

 地域への波及効果も雇用創出、生産誘発においても地域産業発展の大きな核になっている。

 訪れた4月19日は1600年前オランダ船リーフデ号でウィリアムアダムズ(三浦按針)が漂着した記念すべき日、日蘭400年のその日でもあった。「京都は平安京より1000年の歴史、それに負けないくらいの1000年生き続ける街を作るんだ−ハウステンボスの挑戦は続く。

<<佐世保駅周辺再開発事業>>

 1日8000人が乗降する佐世保駅。昭和59年からの11000uの旧国鉄貨物ヤードの用地を使って、市制100周年に向け「多様な出会いと交流を創出するにぎわいの空間」をめざして急ピッチで再開発事業が進む。
 約152億円かけての県民文化ホール・地域交流センター、約72億円かける周辺土地区画整理事業、約130億円かける鉄道高架化事業などの公共が中心の事業と再開発組合が事業主体で取り組む下京地区市街地再開発事業、戸尾地区市街地再開発事業、潮見地区市街地再開発事業がそれぞれ立ち上がっている。キーテナントの進出が決まらず縮小した地域もあるが、年間400万人訪れるハウステンボスの観光客を長崎でなく、佐世保へ呼び込もうとする生き残りにかける熱意が伝わってくる。

そのために何よりも公が意欲的である。海側では佐世保港ポートルネッサンス21計画が航路利用の利便性向上をめざし、岸壁や桟橋の整備が急ピッチである。

 かっての軍港を心やさしい海辺のまちへ−新世紀への扉はここでも懸命に開かれようとしている。

 視察に際し佐世保市議会の区画整理事務所の豊里所長、ハウステンボスの堀口マネージャーなど多くの人に大変お世話になりました。


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