伊藤ひであきの視察報告

● 歴史と水郷のまち−日田のISO ● 2000.04.21

 江戸時代には幕府の直轄地「天領」となり、九州の中心地として繁栄を極めた歴史のまち。そして、三隈川を始め、花月川、大山川、玖珠川などが合流する地点に開けた日田市。甲子園に出てくる日田林工はこの街の中心部にある。この小京都のまちが全国の自治体の中で2番目にISO14001の認証取得をしている。最近では、他の3市(大牟田・鳥栖・門司)との競合の中で自然の豊な恵みと地の利を生かし、サッポロビール新九州工場の進出が決定し、今春から出荷している。森林田園都市を目指す面目躍如である。、 (人口63,000人、面積269.21ku 市議会議員定数 26人 党派別構成 社会民主党5人、公明党2人、日本共産党2人、無所属17人)

<<ISO14001について>>

 スイスのジュネーブに本部を置く「国際標準化機構」が例えばフィルム感度(ISO100・400・1000)などの国際標準に取り組み、環境分野の国際規格の番号を14000台に振り分け、そのうち14001が環境マネージメントシステムの規格である。
 環境マネジメントシステムは自主的な環境管理を継続的に行って行くための仕組み。環境方針(Plan)、実施及び運用(Do)、点検及び是正処置(Check)、指導層による見直し(Action)がサイクル。その組織の環境マネジメントシステムがISO14001に適合しているかどうかを外部の機関から審査を受け、適合していると判定されれば国際認証がえられる事になり、審査登録の手順は以下の通り。

 審査機構の選定→申請・契約→予備審査→事前審査→登録審査→判定会議→登録公表→サーベイランス→更新審査のながれであり1・2年後のサーベイランスには90万円、3年後の更新審査には200万円を要する。

 自治体の取組みは新潟県上越市、日田市を始め87の自治体が取得しているが、日本の審査登録件数約3000件の2%にも満たない。98%は企業である。すなわちこのISO取得は企業向けである。にもかかわらず自治体が取得するメリットは@環境に対する負荷が軽減できる、地球環境保全への貢献Aシステムの構築、システムの応用によって縦割り行政を打破し、行革の推進B環境に配慮した都市へのイメージアップなどである。

 この日田市が認証取得に取り組む事になったのは、3年前、日田市の清掃センターのダイオキシン濃度が240ng(基準値80ng)検出され、大きな騒動となり、そのため10億円と言う莫大な資金を投じ、焼却施設の改修を行った事がきっかけ。大石市長は水郷−日田の名誉挽回を図りたいと考えていた。そこへ市内にあるTDKの三隈工場が市内で最初に認証取得をしたという経過があり、工場長が市長に報告に来た。市長は目標とする街づくりのためにも、行革の推進のためにも活用できると考えた。平成10年1月、トップダウンで認証取得を決断し、予算措置し、準備を進めた。

 しかも、当初は10年度内に取得する段取りであったが、「どうせなら九州で最初の取得を」との市長の熱意で年内、12月末までに取得する事になったと言う。

 途中、当初配属された専任職員2名のうちの一人が心労で倒れ、入院と言う事態に陥り、この事が逆に全庁一丸となって取り組む気運が盛り上がって行ったという。

 事務の文書化作業、マニュアル作成、適用範囲を日田市長が行う事務に適用すると集約し、最大の難関であった環境影響評価に取り組み、「要領」を策定していった。

 最大の難関は700名の職員への意識啓蒙であり、かなりの時間と労力をかけて丁寧にやったのが功を奏している。こうして予備審査、事前審査、12月1,2,3日の登録審査を経て、12月18日の判定委員会で認証取得をしている。

 「今後は森林都市づくりや観光などと環境保全活動にどう結びつけるかが課題である」とISO担当の江田氏。トップダウンで決断し、かつ3ヶ月早めて取得しようとした市長は元商社マンで行動派の現場主義という。ジョッキングしながら、市内の施設や工事のチェックをするというから、さすがというか面白い。この市長ありて、この取組みありというべきか。

 この取得までに要した費用は513万円。ほとんどは登録審査関係で395万円。ただし人件費は別である。
ただ、目的項目を見ると公用車のガソリン使用量削減とか電灯・電気機器・空調機の使用における節電などと並ぶと特別な事でなく、当たり前の事である。当たり前の事を費用までかけて取り組まなければならないところに日本のお役所仕事の意識の根深さを示している事にならないか。

 それでも大分の一小都市が精一杯に活力をみなぎらせ未来に向っている事だけは伝わってきた。

 視察に際し市議会事務局の末永女史、田中局長、藤田係長、ISO担当の江田氏に大変お世話になりました。ありがとうございました。


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