伊藤ひであきの現場報告 豊橋の鳥インフルB
広がるばかりで、出口見えず! (3/5)

●「疑わしきは使わずではないのか!」

 3月2日、豊橋市議会3月定例会。開会と同時に直ちに「市長より発言の申し出があり、休憩します」と一旦休憩を取り佐原市長が豊橋の鳥インフルで緊急発言。「国・県の素早い対応について感謝し、議会に対しても、風評被害防止や農家支援の実施について、ご理解とご協力をお願いしたい」。

 前後して、市教育部長と給食課長が議長室を訪れ、学校給食で、一方的に中止を伝えた問題の顛末を報告に来た。  それに拠れば、発覚した2月27日は豊橋養鶉鰍ヨ何度も連絡を取るが混乱が続き、連絡取れず。保険給食課は、週明けの2日(月)にうずら卵を使った「はるさめスープ」を予定していたので、うずら卵の納品ができない場合を想定して、代替品を検討し、あわせて3月中の献立を変更し、給食材をまかなう(財)豊橋市学校給食協会へ連絡。同協会はやむをえずファックスで「3月分うずら卵の発注は鳥インフルエンザの発生により、使用を中止します」と送った。
 それが明らかになり、風評被害を増幅させるような市の取り組みがマスコミの餌食となった。

 2日の午前中に教育委員会幹部が養鶉組合を訪れ、手違いを認めお詫びし、一件落着かと思われたが、父兄からは「豊橋のうずらの安全性の実験台に子どもを使うのか!」「疑わしきは使わずではないのか!」と抗議が相次いだ。

●殺処分が続く中、再び陽性反応

 1日から発覚した農場で26万羽の殺処分が始まった。家畜伝染病予防法では、発生農家に対して殺処分を知事が命じた場合、処分したウズラの評価額の8割を農家に支払い、埋設費用は国と県が負担することになる。県東三河事務所や市職員約70人が現場に駆りだされ、健康診査の後、白色の防疫着を着用して消毒作業や殺処分作業に従事した。

 移動制限区域となっている半径5キロ以内から、ニワトリやウズラの卵を出荷するためのウイルス検査も行われた。前日から残った13戸で実施し計23戸が終了した。2日には結果が分かり、安全が確認できれば、卵の出荷が再開される予定だったが、そのうちの1件で陽性反応が出て、再び緊張。

 半径5キロ以内の家禽農場9カ所に肉、卵の移動の自粛を要請。あわせて早ければ2日に解禁する予定だった18農場のウズラ、ニワトリの卵の出荷停止を当面延期した。
 今回の検査ではウイルスの存在が確認されただけで感染しているかどうかわからない。細かい検査を動物衛生研究所(茨城県つくば市)などで行っており、結果は今週中にも判明するという。

 一部の農家から「ウズラはニワトリとは違う別の基準で対応すべきではないか」の声が上がっているが、農水省は「今後も、同様の検査・措置を講じていく」方針に変わりはない。

●2件目の鳥インフルの確認、焦燥感ばかり

 結局4日になって、2件目の高病原性の鳥インフルエンザウイルスH7型が確認された。今回も27万羽のウズラすべての処分と周辺農場からの出荷を規制する。  今回の移動制限区域の指定で、新たに周辺のウズラ農家1、卵用鶏農家4などの計9戸が新たに家禽や卵の移動ができなくなった。

 養鶉農協の幹部によれば「ウズラはもともとは渡り鳥。豊橋では戦後の食糧難のときに、市内および周辺の山中からウズラを獲ってきて、それを飼い慣らしたのが始まりなのだ。われわれに専門知識はないが、ウズラは野生に近い種なので、インフルエンザウイルスを持っているのは当然。検査をすれば、どうしても陽性反応する個体がいる」とする。

 また、訪れた周辺のある農家では「ウズラとニワトリを同じ基準で検査し、処分するには、疑問だ。国はウズラに関する基本的な知識を持っているのか!」と怒りを隠さない。

 5年前に鳥取などで鳥インフルエンザが相次いで見つかった教訓から、豊橋養鶉組合では予防策を徹底してきた。各家禽農家は渡り鳥の侵入を防ぐためのネットを張り巡らせ、入り口では作業員に靴の底を消毒させたりして徹底してきた。飼育舎の消毒は最低でも10日に1回はやってきた・・・・・・その上でのこの騒動。感染経路もいまだ判明せず・・・、現場では予防の難しさだけが残って、弥生の春風とは裏腹に焦燥感と疲労感ばかりが漂っています。

 以上、現場からの第三報です。