伊藤ひであきの現場報告 豊橋の鳥インフルK
遂に終息宣言、しかし・・・ (5/12)

●原因不明の中で73日ぶりの終息宣言

 「本日午前0時をもって愛知県内で発生した鳥インフルエンザが終息したことを宣言します」。愛知県の神田知事は5月11日、豊橋のウズラ農場で発生した高病原性鳥インフルエンザについて、すべての防疫措置を終わり、半径5キロ以内に出されていた移動制限を同日午前0時ですべて解除し、終息宣言をした。

 2月27日の第1例目発生以来、73日間続いた豊橋の鳥インフルは、豊橋市内で飼育されていたウズラの約75%に当たる約162万羽を殺処分にしたことも併せて報告され、その結果、安全性が確保されたとする。

 今後は、飼養再開に向けて、国の鳥インフルエンザ特定家畜伝染病防疫指針に基づくウズラ舎の環境衛生検査や試験的にウズラを5週間程度飼育してウイルスを調べるモニター検査などを行い、問題がなければ2か月後には本格的にヒナの飼養を再開する。すなわち、どんなに早くても本格的な飼育再開は3ヵ月後であるということ。

●原因不明のままの種卵確保の高いバリア

 もっと問題なのは、殺処分を受け入れた農家7戸はいずれも経営再開に向けて種卵(有精卵)を求めている。求めている個数はヒナ換算で40万個(実際の必要数は120万個)という。
 しかし、関東地方のうずら農家は提供を断り、引き受ける事を了解したのは、結局、東三河の農家のみ。それでも、農家の中にも提供に二の足を踏む農家も出始めている。引き受ければ、厳しい検査が課せられる。もしも、そこでモニター検査などで、万が一鳥インフルH7型が発見されたならば、ただちにその種卵提供農家のウズラまでも殺処分され、再び同じことの繰り返しで致命的打撃が待っているからである。

 根本的原因は、感染経路は未だ解明されていなことにある。原因不明のままの終息宣言、安全宣言なのである。それは農家にとって、危険な道であり、手探りの再開なのです。農水省が設置した疫学調査チームは現在、解明に向けての研究を行っているが、報告は早くても9月だという。それも中間報告である。

●絶たれたままの流通経路

 ウズラ農家は1年後をメドに出荷規模を発生以前に戻したいとしているが、現実は厳しい。断たれた販路を回復するにも不安がつきまとう。豊橋養鶉農協によると発生前、市内を中心に東三河では40戸の農家が400万羽を飼育し、1日約320万個を産卵していた。

 しかし、400万羽のうち160万羽が殺処分され、ウイルス検査が陽性でも移動制限区域内に所在していたために出荷できなかった農家も多く、その間、大手スーパーなどでは関東や九州の卵に切り替えたケースも多い。
 ウズラ農家は組合や独自ルートで大手スーパーや大手コンビニに販路を拡大してきた。それも大手スーパーや大手コンビニの厳しい品質管理に合格するために過剰とも思える設備投資を経ての販路であっただけに、痛手はあまりにも大きい。今後、飼育羽数が順調に回復しても、販路が元の鞘(さや)に収まる保障はない。

●現場を走った73日間

 2月27日に降って沸いたような豊橋の鳥インフル。私たち公明党議員団も、何度も現場に走り、ウズラ農家の苦悩を共有し、打開策を見つけようと懸命になった。

 幸いのタイミングで私も副議長として議会対応の真っ只中にいたことも効を奏した。知事や市長が3月議会中にも農水大臣に陳情した動きに呼応して「議会も陳情に行こう。豊橋のウズラの危機に議会も立ち上がろう」と議長を先頭にした体制作りもできた。

 そして何よりも、発症したウズラ農家の経営者が公明党太田代表が豊橋の出身であり、政権の中枢におられるという太いパイプにどれほどに勇気づけられていた事か計り知れません。

 私たちの背中を押したのは真面目にウズラと苦楽を共にし、糞にまみれ品質向上に流してきたウズラ農家の汗を知ったからです。そのウズラ農家の皆さんが体を震わせて、手塩にかけたウズラの殺処分を受け入れた苦しい涙を見たからです。

 前途多難なウズラ農家の再生、課題は山積。しかし、当面の大きなポイントであったのは殺処分したウズラへの補償額の算定でした。それが1羽当たり最高額の200円相当で計算し、162万羽の補償額3億2000万円強の金額が県から国に申請できたことは大きな収穫だった。

 故郷の大きな問題に太田代表をはじめ、現場に何度も足を運んでいただいた伊藤 渉(比例東海ブロック)議員が心を砕き、苦しみを共有し、奔走していただいた事に心からお礼申し上げ、12回続いた「豊橋からの鳥インフル」レポートも一応、閉じさせていただきます。

 全国の皆さん!栄養価の高い豊橋のウズラをぜひご賞味ください!給食の食材に利用してください!

 以上、現場からの最終報告です。