伊藤ひであきの現場報告 豊橋の鳥インフルJ
峠越えたが、遠い再生の道 (4/12)

●豊橋にだけ集中する、この問題の本質

 豊橋市内の養鶉(じゅん)農家で高病原性鳥インフルエンザウイルスH7型が見つかって以来、市内の農家16戸のうち、7戸で感染が確認され、「家畜伝染予防法」によって6割近い160万羽が殺処分され、「豊橋のウズラは全滅だ」とやり場のない怒りと不安と焦燥の日々が続いている。

 研究チームによって発生農家のウズラを遺伝子解析すると、3つとも微妙な点で異なり、3系統以上あることが確認されている。そしてまた、県下一斉の調査結果どころか全国の調査結果でも、見つかったのは豊橋市内からだけだった。

 そうしたことから、何らかの要因で感染したH7型ウイルスが大きく広がらず、小さな範囲内で生き延びて来た。そんな推測も行われるようになった。

 しかし、だからといって「ウズラとウィルスの共存説」を認めれば、石破大臣との会見でも話題になったが、検査の度ごとに、同じことが繰り返され、挙句の果ては豊橋のウズラは消滅していく。かといって「家畜伝染予防法」の対象からウズラだけを外す事は世界標準からもできない・・・ここに豊橋の鳥インフルの難題がある。

 国、県、豊橋市とも全面支援を公言しているが、法的な問題や前例(類似例)もあり、前途容易ではない。さらに「豊橋産ウズラ」の風評被害も深刻である。

 市内の発生農家7戸は夏ごろまでに感染の有無を調べるテスト飼育を終え、本格的な飼育に入るが、段階的に増やしていくことから、発生前の状態に戻すには1〜2年かかるといわれている。

●肝心の原因不明のままの再生会議

 県は10日午後3時半から、豊橋市内で、第1回「愛知のうずら再生会議」を開いた。再生への道筋を協議するための会議で、国、県、市の防疫、畜産関係者20人ほかウズラ殺処分を受けた生産農家や、卵の加工、流通業者ら30人も出席した。

 会議の中で、再生に向けて県が策定した基本方針を示した。その内容は@清浄なひなの供給体制の確立、A発生農家などへの経営再開支援、B家きん生産物の風評被害対策、C県内うずら農家の自主的な組織づくり、D鳥インフルエンザ再発防止の5項目を盛り込んだ。

 しかし、農家が最も期待していたウイルス感染経路の究明状況に関する説明は一切行われなかった。「豊橋ではウイルス確認後、3回にわたって農水省による感染経路究明の会議が開かれ、3月上旬には環境省による野鳥のフン採取を行われた」として、「再生の方針を示す前に、なぜ感染したのか、他の家きんやヒトへの伝播の可能性はどうか、それを説明してほしかった」と怒りを隠さない。

 また、農家が再生への喫緊の課題として挙げている種卵の確保について、具体策が示されないことにも不満を表した。なぜかなら、春のこの時期は、うずらの入れ替え時期で1年で最も種卵が必要な季節だからである。

 原因の究明がなされなければ、対策は中途半端になる。せめて、「ウズラの卵は人間への影響は絶対にない」という科学的お墨付きがなければ、前へ進めない。

 「火を通せば大丈夫」、「卵の中身は大丈夫」などといわれても根拠はない。かといって、研究・究明には途方もない時間がかかる。時間がかかればかかるほど、豊橋ウズラの流通ルートは消えていく。

 春一番が吹き、蕾が膨らみ、桜が咲き、葉桜になって・・、しかし、ウズラの冬はまだまだ暗く、そして深い。

 以上、現場からの第11報です。