伊藤ひであきの現場報告 豊橋の鳥インフル@
豊橋で鳥インフルエンザ発生! (2/27)

●日本一の農業都市に衝撃

 我が愛知県豊橋市は、約30年にわたって農業産出額日本一を誇ってきました。平成17年における豊橋市のそれは495億円。(平成の大合併の関係で現在は豊橋市は5位となっています。1位 田原市―愛知県7,794億円 2位 新潟市 6,945 3位 鉾田市―茨城県 5,326 4位 浜松市―静岡県 5,241)

 主に生産されているのは、キャベツやハクサイなどの露地野菜、トマト、イチゴ、温室メロンなどの施設野菜、バラや洋ランなどの施設花き、果樹、畜産など多種多様な生産が行われています、大葉(青じそ)やウズラなどが全国1位となっています。

 豊橋市のうずら飼育は、市内で約460万羽飼われて全国の約60%の圧倒的なシェアを占めて、年間7451トン、20億2000万円(06年度実績)を売り上げています。卵は生食用としても使われますが、多くは加工されて水煮やフライなどに利用されます。

 この日本一のウズラの産地に衝撃が走りました。豊橋市南部のウズラ農場(飼養羽数32万羽)で飼育されているウズラ2羽から高病原性鳥インフルエンザウイルスH7型が27日に検出され、同日公表されたからです。豊橋の上空を取材用のヘリコプターが飛び交ったりして一時は騒然となりました。

●確認されたH7型は弱毒性

 今回確認されたのは家禽(きん)の家畜伝染病に指定されているH7亜型の高病原性鳥インフルエンザに感染しているウズラが確認されました。  鳥インフルエンザにはH5型とH7型があり、今回はH7型で、しかも弱毒性とみられる。これまで両型ともに、人に感染した例が報告されているものの、肉や卵を食べて感染した例はなく、H7亜型の高病原性鳥インフルエンザの発生は、84年ぶりで、ウズラではおそらく国内初という。

 県は直ちに特定家畜伝染病防疫指針に基づき、発生農場への部外者の立ち入り制限、周囲半径10キロ以内を移動制限区域とし、区域内の家禽、病原体を広げる恐れのある物品の移動禁止、食鳥処理場21か所の閉鎖などの感染拡大防止措置を講じ、現地では防疫活動が始まりました。また、同農場の飼育ウズラ32万羽は近く殺処分を行うことになります。

 ウズラは鳥インフルエンザのモニタリング検査が難しく、これまで検査から除外されていました。国のモニタリング強化の方針を受けて、愛知県が25日、初めてウズラ農家3戸を対象にモニタリング検査を実施したところ、うち1戸の農家で検査した10羽中2羽が血清抗体検査で陽性になったことによります。27日の発表まで時間がかかったのは陽性となった検体について横浜市の農林水産省動物検疫所などでウイルス遺伝子検出の再検査を実施するなどして、病性鑑定したところ、27日未明に高病原性鳥インフルエンザのH7亜型と確認されたことによります。

 発生農場では25日まで卵などを出荷していましたが、特に回収などはしない予定。近くには18戸の養鶉農家があり、約220万羽を飼養しています。今回の鳥インフルエンザの感染経路は不明で、近く農林水産省の感染経路究明チームが調査に入る予定です。

●店頭から撤去、風評被害が心配

 市内のスーパーでは27日午後には次々と卵の撤去が始まりました。日頃から付き合いのある豊橋養鶉組合の組合長は「せっかく育ててきた信用が地に落ちた。組合はもう終わりかもしれない」は頭を抱えています。直ちに、消費者と店舗向けに啓発用リーフレットの作成作業に入っています。

 心配なのは風評被害です。日本一を誇る生産物はミニトマトやつまものの大葉などの野菜を沢山の農家が作っています。直接、ウズラとは関係なくても、豊橋の農畜産物という形で消費減退につながる可能性が大いに危惧されるところです。

 中には「県や国はもっとほかにやり方がなかったのか。これまでウズラの検査そものが行われておらず、今回が初めて。データの積み重ねのない段階で、果たして危険性を言い切ってよいのか」という声もあり、突然行った検査、その結果の即時公表に異議を唱える声も大きい。

 もう一つ残念なのは現地の豊橋市への報告以前に、国や県が頭越しに発表してしまったことです。市議会に報告されたのは、27日の昼のニュースが全国に流れてからです。何か釈然としないものがあります。

 以上、現地からの第一報とします。