伊藤ひであきの地方からの提言


09地方から 給付金作業、民間力を活用を!

●前代未聞の事業、肝心の問題はまだまだ不明のまま

 定額給付金の舞台は地方へ移り、地方自治体でその取り組みは急ピッチです。

 しかし、また、肝心の微妙な部分がまだまだ検討中では現場はなかなか推進できないのが、地方の実際ではないでしょうか。ましてや事務費は予算が成立したから問題ないにしても、事業費は関連法案が成立しないと動けないという問題は依然としてあるわけです。

 それは取りも直さず、豊橋市を例に取れば8年前の「地域振興券」の時は対象となった約8万7,000人の市民の方に総額17億5,000万円近くの振興券が配られたのですが、今回は37万人、14万世帯の全市民に、総額58億円の現金給付となり、前代未聞の大作業だということです。

●膨大な経費と、時間と、神経が費やされる

 その場合、総務省から配信されている「定額給付金給付事業費補助金交付要綱」による申請及び給付の方法については以下のように示している。

 「市町村は、申請・受給者に対し、第1の1の情報(注:給付対象者)に基づき、申請に必要な書類を送付又は配布する(当該市町村の規模等を勘案してこれに代わる適当な手段がある場合は、それにより伝達することも可)。
 申請・受給者は、郵送又は窓口への提出により給付の申請を行い、市町村は、審査の上給付を決定し、申請・受給者が指定した口座への振込又は現金による窓口での交付により定額給付金を給付する。なお、現金の交付による給付は、可能な限り、振込による給付が困難である場合に限り行うこととする。

 なお、給付に当たっては、郵送による申請又は窓口における申請のいずれの場合においても、公的身分証明書等により、十分な本人確認を行った上で、給付を決定することとする」とある。

 作業の流れは市民の側から見れば
@役所から申請書が送られてくる
A世帯主は口座振込みか直接給付かを明確にし、金融機関名と銀行口座を記入し、本人確認できる免許証などの写しを同封し役所へ申請する。
B役所は申請書にしたがって台帳に書き込み、対象者リストを作成し、指定の金融機関口座に振り込む。また窓口で現金を用意しお渡しし、リストから消しこむ。
ことになります。

 当然、世帯主といっても高齢者から若い方までおられて、申請書にミスなく金融機関名と口座番号を記入しなければならない。また事務方においても、それを正確に読み取って、ミスなく台帳に転記しなければならないし、本人確認書類をチェックしなければならない。この部分が一番の問題であり、時間のかかる部分です。

●その作業こそ、金融機関の窓口業務そのもの

 しかし、考えてみればこの口座確認と本人確認という業務は日常的に金融機関の窓口業務そのものであるし、そのノウハウの蓄積もあるはず。何より、申請者が自分の口座のある金融機関に申請書をもって申請に行けば、ミスも防げる。
 あとは、金融機関は申請書をまとめて、役所に金額を請求し、振り込むだけです。現金給付の場合でも金融機関にはガードマンを含めて体制は日常的にできています。

 このためには総務省と銀行協会、役所と地元金融機関との協定、手数料の取り決めが必要ですが、申請書の郵送、読み取りにくさ、読み取り間違い、転記間違いなどの作業を考えれば、はるかに効率的なはずですし、予想される約800億円という事務費も相当節約されるのではないだろうか。
 何よりも、高齢社会のなかで、高齢の世帯主に、本人確認の書類を用意させ、申請書を間違いなく書いてもらって、郵送させるなどということは、そんな簡単な事ではありません。

 日頃から、「民間のノウハウを」、「効率的な行政を」と、また「地方分権を」というのなら、前代未聞の定額給付金の給付作業を、迅速に正確に進めるために、「民間力」をなぜ使わないのでしょうか。
 でなければ、どんなに急いでも、住民への案内は4月中旬、定額給付金が国民の手に渡るのは早くても5月上旬になってしまうはずです。今からでも再考すべきではないでしょうか。


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