伊藤ひであきの地方からの提言


08地方から 相次ぐ改定にミス続出の自治体のシステム

●プログラムミスが続出、住民の怒り沸騰!

 厚生労働省は10月15日に行われた介護保険料の年金からの天引きで、本来は中止すべきなのに事務手続き上のミスから天引きされてしまう人が160人いると明らかにした。

 10日にも、死亡後などに天引きされる人が290人いることが判明しており、ミスで天引きされる人は全国で計450人となるという。
 その理由は、市町村が氏名などを誤まって依頼したために変更処理ができなかったり、社保庁が年金記録を修正している最中で、物理的に天引きを中止できないなどの理由による。
 また、後期高齢者医療制度と国民健康保険で、15日の天引きを中止すべきなのにできなかった人が、18,200人に上ることも発表している。

 また、国保中央会は後期高齢者の医療制度の高額療養費の払い戻しで計算ミスが続出している事から、制度を運用している各都道府県ごとの広域連合に払い戻しを中止するように求めている。全国一律の算定システムにプログラムミスがあったためと見られるという。

 豊橋市でもインフルエンザ予防接種の対象者(65歳以上の高齢者など)72,850人に送った通知書の中に、市民税非課税世帯のうち368人に対し「負担金はありません」とすべきなのに「事故負担金は1,000円」と通知してしまった。住民税の国・地方の割合の変更によりシステムの変更をした時に、死亡したり転出した方を課税対象者として識別してしまったことによる。

 などなど、ミスが相次いでいます。

 住民税システムや後期高齢者医療制度の10月からの変更や、10月から65歳以上の前期高齢者の国保保険料の年金からの天引き、普通徴収への変更など、次から次への改正にプログラム開発が対応し切れていないからです。
 事前に国に問い合わせても、「法律がまだ固まっていない」と概要さえつかめず、ねじれ国会でやっと成立すると、施行日まで時間的余裕がないなどで見切り発車する以外にないのが実態です。

 コンピュータは正確に動きますが、限りなくバカ正直ですから、様々なミスが続出し、役所はお詫びの記者会見をし、対象になった市民は怒り沸騰、これが繰り返されています。

●膨大な開発費用が全自治体で費やされている!

 全国の地方議会では9月度の補正予算で、来年10月からの年金からの市民税・県民税を天引きするためのプログラム開発費が審議され成立していると思います。
 豊橋市の場合、9月補正で開発設計委託料として3760万円が計上され、12月議会の補正で開発費が予定されています。
 当然ですが、この開発は導入されているホストコンピュータの住民情報システム、市民税システムにリンクしていますので、随意契約でメーカーに委託する以外にありません。

 全国約1800自治体でのこの部分だけの開発費でも膨大な金額が費やされるわけです。

 また豊橋市の場合、H19年3月議会で医療制度変更、後期高齢関係で4,800万円、6月議会に年金徴収、後期高齢関係で17,300万円、12月議会で国保料の年金からの天引きや後期高齢者への移行関係で6,200万円、去年一年だけでも計28,300万円となり、これらは全て随意契約です。

●統一基準で整理統合すれば、膨大な財源が捻出できる

 次から次へと制度変更するたびに、地方自治体は膨大な開発費用を費やしているから、「国は制度変更を安易に行うな」と申しあげているのではありません。

 総務省は、全国の自治体の住民情報システムや課税徴収システムを、富士通系かNEC系か、それ以外か、開発言語はBasicかCobolか・・・、などと分類し、制度改正のたびに、新制度を反映したPRGを開発し、何通りかの分類に従って、上書き用のプログラムをCDROMで提供するような事はできないだろうか。

 あるいは、住基システムのように国のスーパーコンピュータで一元管理して、地方はアウトプットだけを行うようにはできないだろうか。
 ましてや、全国で合併が進んできて、当然システムの統合が行われていくわけだから、統合の際の統一基準を国が示して、整理していくことはできないだろうか。

 膨大な自治体ごとの随意契約による開発費、運用費にメスを入れて、大きく改善できれば、それこそ後期高齢者医療保険料は全額無料、年金受給者の上乗せ支給、中学生までの医療費の無料化ができるくらいの財源が捻出できると考えるがどうだろうか。


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