伊藤ひであきの地方からの提言


08地方から 東京で「地方議会」と「地方議員」について考える

 8月27日(水)、千代田区食糧会館の地下のような狭い会議室で行われた「地域科学研究会」主催の「議会改革:活性化と運営の改善方策」セミナーに出席した。  北海道から沖縄まで全国各地から18人の議員が出席した。
 短時間であったが「地方議会、地方議員とは何か」を改めて考える機会となりました。以下、コメンテーターとして登壇された4人の方の発言要旨を私なりにまとめました。

●分権時代の議員・議会像と議会運営の改革(全国都道府県議会議長会 野村稔氏)

 野村稔氏はかって豊橋市で行われた東三河市議会議員研修会に講師で来ていただいたこともあったが、当時から主張は明確。

 地方選挙の時は住民は大いに関心を示すが、ひとたび議員を送り出すと、住民の議会離れは深刻である。それはなぜか。議会の生産物を示していないからである。議会は、住民に議会の役割や存在意義についての認識を深める努力をもっともっとなすべきである。

 しかし、また議員はプロである必要はない。また、議員は明日、知事や市長や、町長になったらできることを主張することである。できないことを主張してはいけない。そのためにも議会質問は短く、答弁は長く。議員は、当局からいい答弁を引き出すのが仕事だからである。

 全国の市町村の予算は89兆円、議会費のそれは、その0.5%の4561億円。二元代表制といいながら決定的な差がある。かつ、この10年間で議会費を▲6.6%も減らした行革の優等生である。
 全国町村議員の平均報酬はH9年21万円→H19年21万円。市議会議員は44万円→42万円。都道府県議会議員は84万円→83万円。都道府県議会議員はともかく、この報酬では子どもを高校へも行かせられない実情がある。地方議員はもっと怒るべきでなかろうか。

●議会改革の取組みから見えたこと(横須賀市議会議員 矢島真知子氏)

 聡明である。生活ネットワークを支持母体に2期議員を務めた後は市民派議員として5期目、途中法政大学大学院で立法学を学ぶ。

 横須賀市議会での10年にわたる議会改革の取組みで議会のIT化、議会制度検討会の推進役を果たす。横須賀市議会では現実的な政策提言ルートとして特別委員会を活用している。例えば医療環境問題特別委員会では民間の病院長や助産師さんに来ていただいて現場の生の声を述べてもらったり、意見交換するなど。
 また、横須賀市議会は委員会中心主義を取っていて、法案審議のほかに請願・陳情審査、報告事項と所管事項を毎回質疑することができる。

 「政務調査費の問題などで議員は縮こまっていてはいけない。もっと誇りを持って、胸を張って公選職の議員である役割を果たすべきだ」凛とした発言には納得。

●市民から見た議会と議員活動(相模原市をよくする会 赤倉昭男氏)

 「議員の嫌いなものは市民の陳情と選挙、そして情報公開」と仰せになる。勤務実態からみて破格の高額報酬、成績評価・採点されない身分で当選回数優先主義の非実力主義の世界、過度に重厚な本会議場の施設や絨毯を敷き詰めた議会棟フロア・・・、ゆえに議員には本当は議会改革などできない。

 議員の能力に大きな差を発見し、議会傍聴を通じ不偏不党・公正・中立な立場から公約達成努力度、基本能力、総合評価にわけて議員通信簿を作成し、公開している。 率直に言って、凝り固まったような偏見、不認識も甚だしい。「受講料の一人1万8000円のうちから交通費以外は受け取らないでいただきたい」と言ってしまったほどである。

 こういう人が市民代表として、何の資格があるのか通信簿をつけて公開する意味は私にはわからない。配布された相模原市議会議員50人の通信簿をいただいたが、負けずに頑張って欲しい。「この通知表はおかしい!」と市民からの声が沸きあがるくらいに徹して頑張ってほしい。通信簿のためではない、応援していただく支持者、そして全市民のために。

●地方議会の役割と議会活性化への役割(山梨学院大学 江藤俊昭氏)

 議会は多くの権限(基本構想、条例、予算・決算、契約などの議決権)を持っているが、それにもかかわらず、議会はこの力を発揮できず、「承認機関」になっていないか、地域経営を担う主体としての議会への改革が急務である。

 地方分権に伴って、自治体改革が急激に進んでいる。行政改革や住民参加・協働でも、議会は主体的にかかわっていない。もっと言えば自治体改革が進んでいる自治体ほど議会は「蚊帳の外」におかれていないか。議員あって議会なしといった議会運営では住民にアピールできるわけがない。むしろ「何もしない」議会に対しては「議会不要論」までおこっている。

 今日の議会改革のコンセプトは、自治の理念に即して、地域経営の一翼を担うべき議会改革を進めるべきである。そのポイントは@住民と歩む議会、A首長と切磋琢磨する議会、B討議する議会でなかろうか。


 いずれにしても地方議会、地方議員が改革の対象になっていることは、間違いのないことである。それはまた、日本再生のために、住民の身近な地方議員・地方議会への期待の裏返しなのではなかろうか。

 ゆえに、我々はプロである必要はないが、どこまでも研鑽し、「何のための議員か」という理念と「我がまちのあるべき姿」を表現する政策力、説得力、構想力・・・を磨きに磨いて、どこまでも住民の側に立って生活と取組み、生活実感の中からの敏感さを鈍らせることなく、議員としての、またそのための議会改革に取り組み、頑張る以外にないのではないだろうか。

 それは、そのまま「地方議員よ、立ち上がれ!」である。


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