伊藤ひであきの地方からの提言


06論点 三位一体改革と地方      2006.02.25

●これは国の財政建て直しのためか

 3年間の「三位一体改革」が決着し、補助金改革は4.7兆円の規模で行われ、それに伴って国から地方へ3兆円の税源移譲が行われました。地方交付税は総額で5.1兆円が見直されました。
 結局
              国     豊橋市の場合
1.補助金改革         ▲4.7兆円  ▲2,423百万円
2.税源委譲額(所得譲与税)   3兆円     2,540百万円
3.地方交付税への影響額    ▲5.1兆円  ▲7,890百万円
       影響額合計   ▲6.8兆円  ▲7,774百万円
 豊橋市の場合、補助金改革分と税源委譲はほぼツーペイ。地方交付税の見直しの影響をもろに受けて、3年間で77億円の削減という試算になりました。
 結局、国全体で▲6.8兆円という数字になれば、「国の財政立て直しが目的であれば責任転嫁以外の何者でもない」という表現になります。

●地方は自立へ向かう以外にない

 地方は税源が移されたものについて、どこにどう振り向けるか。差額の分については廃止も含め、どう事業を見直していくか決断を迫られるます。この作業を通じて、「地方分権の展望開く第一歩」として地方が自立の方向に向かうことになります。

 「今まで、息子の生活必需額のうち息子の収入だけでは足りない部分を親元から仕送りしてきた。しかし、親元も年々収入が減ってきて、借金までして仕送ってきたのでその借金返済も重なって、首が回らなくなってきたので仕送りを減らすことにした。息子も生活を切り詰めて、生活を見直し無駄なことは書き出して、倹約しよや。そして、そろそろ親元から独立しよや」ということでしょうね。

 豊橋市は平成11年度に財政力指数が0.83まで落ち込みましたが、国の動向の先行きが見えないという事で投資的経費の抑制や市債への振替措置などに努力し平成15年度には0.91平成16年度には0.98にまで回復させて1に近づけてきました。しかし、その結果、大幅に普通交付税を削減されたという皮肉な結果となっています。
 しかし、逆に財政力指数が「1」以上であれば、不交付団体であり、交付税見直しの影響をもろに受けたなどとは言っておれぬわけで、その意味では、交付税に依存しない自治体を目指すべきです。

●豊橋の行政評価システム

 政府は昨年(2005年)末に「行政改革の重要方針」を閣議決定しましたが、この方針の柱となるのが「事業仕分け」(国の全事業を洗い直す作業)です。公務員が携わる仕事について一つ一つ本当に必要なのかどうか、誰が担うべきか、民間に任せることはできないのか――そういうことを仕分けして効率化を図るという手法が「行政改革の重要方針」に盛り込まれました。

 豊橋市では平成8年度から5ヵ年に渡る「行政改革」を実施してきました。結果、143項目、人的効果として227人、経済的効果として125億円という成果をあげてきました。それ以外にも給料表の見直し(平成12年度からの10年間で人件費160億円の縮減効果)、調整手当てを始めとした各種手当ての見直し(10億円の縮減効果)、アウトソーシング(平成15年度から3ヵ年で人的効果116人、経済効果15億円)、PFIの推進、扶助費等の見直し(平成17年度の単年度だけで5億円の縮減効果)

 そして、平成12年度からの新たな行政改革に取組むにあたり「行政評価手法」を導入し、「事務事業評価」に加え「政策・施策評価」を導入し、政策・施策の達成度を把握しながら施策の重点化や事務事業の優先度判断を行い、市民満足度を計測しながら、事業の選択と行政資源の重点的な配分に取り組んできました。

 同時に、政策推進に向けた調整機能を強化し、Plan:総合計画(基本構想・基本計画に基づく実施計画)-Do:実施-See:行政評価、決算審査ーCheck:見直し-Planと連動するシステムとして構築してきました。

 昭和63年3月の本会議は前年に市議会議員となって2回目の一般質問でしたが、品質管理、方針管理に取組んできた企業の営業マンだった経験から「Plan.Do,See,Chekの民間のQC手法を導入すべきである」と提案しました。当時としては、全く異質の提案でした。

 以来17年、豊橋市における豊橋型行政評価システム構築の先導的役割を議会で果たして来ました。この豊橋型行政評価システムにはこの一年だけで85自治体から視察に来られています。

●スピードある歳出改革を

 その立場から、「事業仕分け」手法を考察するに「外部の人を交える」こと、「公開の場でチェックする」ことのために議会があるのではないでしょうか。豊橋市議会では「行政評価システムの評価表」をもとに決算審査、予算審査が行われています。外部の、公開の、市民によるチェックの場が「議会」だと確信しています。よって「事業仕分け」と「議会」との関係をきちんと整理して導入しないと、「議会とはなんぞや」ということになりかねません。

 さらに、昨年3月末の「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」に呼応し、平成21年度までの「豊橋市経営改革プラン」が発表になり、3月予算議会で審査されます。「湿るれ木より、火を出す」どころか「乾いた木より、水を出す」にも似た作業です。

 今回の三位一体改革で6兆円の歳入削減が急速に進む中で、議会人として、スピード感ある地方行革による歳出面の改革の論陣を展開し、市役所改革をリードしていく決意です。


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