伊藤ひであきの地方からの提言


06論点 苦肉の「交付税1000円      2006.02.17

●項目を守るために

 平成16年度から始まった国の三位一体改革は平成18年度で第一段階を終える。持続可能な財政構造の構築と予算の質の向上を測るため、歳出改革を一層推進したものであり、地方財政に大きな影響を与えるものとなっています。

 豊橋市の来年度予算案から検証する。(Pは17年度、Qは18年度の意味、金額単位は百万円)
○国庫補助負担金は児童手当費などで△10億円
○地方交付税はP1,360百万円→Q1千円 △1,360百万円
(うち普通交付税はP860百万円→Q0    △860百万円)
○臨時財政対策債はP3,270百万円→Q2,950百万円 △320百万円
(普通交付税+臨時財政対策債=P4,130百万円→Q2,950百万円 △1,180百万円)
○所得譲与税はP1,280百万円→Q2,540百万円 +1,260百万円
                            合計△1,420百万円

 しかし、これは前年度予算案に比べての比較であり、Pにおいても普通交付税は860百万円の予算に対して決定額は僅か60百万円。三位一体改革の初年度のOにおいても4,680百万円を見込んだものの内示額は2,110百万円。ご案内の通り各自治体が次年度の交付税額を算出し年度末の3月議会で予算として議決するのですが、総務省が正式な額を内示するのはその4ヵ月後の7月末と時期がずれるからです。
 18年度の予算案計上に当たっては、これまでの経過や国の地方財政計画からほとんど見込めない状況のため、予算上の最少額の1千円で普通交付税の項目を残すだけの処置となった。

●3年間で77億円の削減

この3年間の影響額の試算。 1.一般財源化による国庫負担金の削減   ▲1,545百万円・・・@
 これは15年度の身体障害者生活支援事業など、16年度の保育所運営費、介護・児童手当・児童扶養手当事務費等、17年度の養護老人ホーム保護費・公営住宅家賃収入補助など、18年度児童手当費、児童扶養手当費など
 税源委譲額(所得譲与税)        2,540百万円・・・A
 @+A                   994百万円・・・B
2.その他の国庫補助金等の削減       ▲878百万円・・・C
 ワイワイ広場開催事業費等奨励的補助金の削減や公共事業補助金の削減など
3.地方交付税への影響額         ▲7,890百万円・・・D

豊橋市への影響額 B+C+D       7,774百万円

 平成18年度からは税源委譲は所得税(国税)から個人住民税(地方税)へ恒久措置として行うことが決まったことは画期的であっても、当初から三位一体改革は平成18年度までに、補助金改革▲4.7兆円、税源委譲+3兆円、交付税総額▲5.1兆円の改革であったわけで、もともと▲6.8兆円の減額という改革であったわけです。それが、財政力指数が高い豊橋市では▲77億円ということです。

 また交付金改革も「まちづくり交付金」や「道作り交付金」など依然として国に獲得に動く仕組みも残っているわけです。

 端的にいえば、地方交付税の縮減、補助金カット、税源後回しという国の「三位一体改革ならぬ三位ばらばら改革」のあおりで、本市の財政を翻弄し、直撃しています。結局、豊橋にとって「三位一体改革」は「補助金削減、地方交付税削減」のためのもの以外のなにものでもありません。この不足分を豊橋市は繰越金でやりくりし、来年度は財政調整基金でやりくりすることになります。

 三位一体改革は、地方の自由度を高めて自主的な街づくりを可能にする−地方分権の一環であると位置づけるならばその意義は大きい。しかし、国の財政立て直しが目的であれば責任転嫁以外の何者でもない。
 「地方の自助・自律」をいうなら、地方への税源移譲は当然であり、所得税などの確固たる税源移譲があって初めて真の三位一体改革になる。税源移譲があいまいなまま交付税削減を先行させるやり方を三位一体とはいわないのでないか。第二期の三位一体改革論議においては臨時財政対策債もどうなるかわからないという。こういうのをバラバラというのです。

●地方は正念場

 堂門冬二氏は「今の地方分権の流れは江戸時代の藩に戻っていくようです。藩は自前の政策を自前の計画によって展開する。その財源は自らの産業振興によって調達する。今で言えば、10割自治です。地方交付税や国庫負担金などは一文もないわけです。たとえ北限にあって生活必需品を生産できなかったとしても、それを自前で克服していかなければならなかったわけです。このバネとか努力のふんばりがこれからの地方には必要だ」と述べています。

 地方自治体はこのバネとふんばりの地域間競争の正念場にさしかかっている。


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