伊藤ひであきの地方からの提言


06論点 じいちゃんを火災から守れ      2006.02.19

●「やすらぎの里」の悲惨な事件

 正月気分の1月8日未明、長崎県大村市の認知症グループホーム「やすらぎの里さくら館」火災でお年寄りが7人なくなるという悲惨な事件が起こった。
 特に、今回の火災は、夜勤時は1人になるなど、職員が少ない小規模施設の安全対策の手薄さを露呈した。職員数の増加は介護費用や入所者の負担増につながるために難しく、火災などが起きた場合、入居者をいかに早く避難させるかの問題を提起した。また、開設以来、このホームでは避難訓練も行われていなかったことも判明した。 。

●「火を出すな」手探りの実態

 老人福祉施設や知的障害者援護施設、精神障害者社会復帰施設などでのスプリンクラーや自動火災報知機などの設置は、消防法施行例で決められている。
 現行基準では延べ床面積が6千u以上はスプリンクラー設備設置が義務づけられており、300u以上なら自動火災報知器を設置しなければならない。さらに「身体上、精神上の理由により自ら避難することが困難な者が入所する施設」の場合は、1千u以上でスプリンクラー設備を設置するように定めている。
 今回、火災のあったホームは定員9人で280uで、スプリンクラー設備はなく、火災報知器もなかった。

  これを受けて各地で、消防署などによる老人介護施設の査察が緊急で実施されている。@消火器の位置、避難経路、喫煙場所。A夜勤体制や避難訓練の実施回数、方法など。B緊急時の連絡先一覧表の表示方法などが主な査察ポイントになっているのは当然でもある。

 また、夜間の介護体制は入所者9人につき1人が原則だが、仮に夜間のパート職員を1人増やすと年間400万円前後。施設には大きな負担だ。この分を介護保険で賄うとすると、保険料のアップは避けられない。

 自力での避難が難しい人たちの住まいで、人手のない夜間に火が出た時の恐ろしさが改めて示された。

●急増するグループホーム、課題も急増

 介護保険導入後、全国で急増しているグループホーム。1年間に約1500ヶ所設置されており、一日4ヶ所の割合で増えており、「認知症介護の切り札」として期待されている半面、介護の質の評価や、急増による保険料アップ、入居者の重度化などの課題も多い。

 新潟県のあるグループホームでは、普段から町内会との交流を重ね、施設にはどんなお年寄りが何人いるのかなどを知ってもらうよう努めてきたが、この努力が実って、一昨年の新潟県中越地震の際には、発生直後に近所の人々が駆けつけてくれたという。
 いざというときのための地域力が発揮できるように日常のコミュニュケーション作りも大事なポイントではないだろうか。


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