伊藤ひであきの地方からの提言


06論点 自治体は耐震偽装を見破れるか      2006.02.18

●脆弱な審査体制

 姉歯建築設計事務所関与ホテルの構造計算書の偽造問題については愛知県内では「センターワンホテル半田」、「名鉄イン刈谷」が耐震強度偽装事件の対象物件としてその経過がニュースとなり、注目されている。また岡崎市の2つのビジネスホテルでも耐震偽装が発覚した。

 全国的にはこれまで7府県と12区市が、姉歯元1級建築士の構造計算書改ざん25件を見逃したことが確認されており、脆弱(ぜいじゃく)な審査体制の見直しが急務となっている。

 例えば「センターワンホテル半田」の建築確認は愛知県に建築確認を申請し、県は平成13年12月に確認済み証を、着工後は中間検査合格証などを交付。14年7月にホテル(10階建て)はオープンしたが、昨年12月になり、構造計算書の偽造が判明した。従業員を解雇し、取り壊しにかかった。また岡崎市の2つのビジネスホテルでも建築確認は岡崎市が行っている。

 この「センターワンホテル半田」は本年2月14日、愛知県とコンサルタント会社「総合経営研究所(総研)」(東京都)、同社の内河健所長の過失で建物を解体せざるを得なくなったとして、三者に計約7億円余を賠償するよう求める訴訟を名古屋地裁に起こした。一連の事件で被害に遭ったホテルの提訴は全国初であり、今後が注目されている。

 岡崎市の二つのホテルにおいても千葉県からの情報提供に基づいて、建築主の協力を得て構造計算書の詳細な検証を行った結果、計算途中で、構造計算書の一部が偽造されていた事が判明した。

●確認申請の9割は民間

 愛知県や岡崎市で見抜けなかった構造計算書の偽造−果たして豊橋市では見抜けたであろうか。

 平成16年度における豊橋市建築指導課への建築確認申請は328件、豊橋市内の民間検査機関である愛知県建築住宅センターと滑m認サービスへは2292件。民間検査機関が約90%を占めている実態。

 豊橋市への申請分のうち「建築基準法」にのっとって構造計算書が必要な物件は109件あった。建築確認は建築主事3人で行っていて、国交省指定の「認定書」と「性能比較表」があれば、細かいチェックをする必要がないのが現状。
 具体的には、通常の検査では大臣認定プログラムの出力で、入力条件のチェックを行い、計算過程は当然、正しいものとし、最後のページに「正常に終了」と表示されていることを確認し、構造図面との照合を行っています。

●バタバタの対策

 国交省の諮問機関である社会資本整備審議会で建築確認制度の大幅な見直しなどを柱とする再発防止策が急ぎ検討されている。
 また地方自治体でも耐震強度偽装問題を受け、過去の検査では計算書と設計図を見比べるだけだった反省から国土交通大臣公認ソフトを導入したり、審査マニュアルを作成したり、1級建築士の資格を持つ職員を増員したりするなどバタバタである。


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