伊藤ひであきの地方からの提言


05秋 「中核市サミットin豊橋」      2005.11.11

 11月10日(木)市制100周年記念イベントとして誘致した「中核市サミットin豊橋」が豊橋市で開催されました。これには10月に中核市になったばかりの下関市・函館市も加わって、37中核市の市長をはじめ関係者700人が集まって、盛大に、かつ活発に開かれました。全国の皆様ようこそ豊橋へお越しいただきました。

●小泉改革と地方分権

 今回の衆院選で圧倒的支持を集めた小泉パワーは地方制度をどう変えるのか―「地方行政の展望と中核市の役割」について基調講演された石原信雄氏(地方自治研究機構理事長、元内閣官房副長官)の講演から。

・1952年講和条約発効され、日本に主権が回復して戦後の新たなスタートを切った。とにかく戦後の混乱期から戦後復興、経済成長へ一途に走り、中央集権体制が築かれていく。
 そして1965年からの約10年は高度成長の歪みからの土光臨調(中曽根内閣)、地方が荒れていくままでいいのかというふるさと創生(竹下内閣)と続くがいづれも中央が考え、中央指導型であった。
 細川、村山、橋本内閣もまた地方に軸足を移しつつも同じように中央が金を集め、族議員と派閥の要請に配慮しながら地方に再分配していく体制に変わりはなかった。

・小泉内閣はこうした流れを大きく変えようとしている。族議員や派閥は全く目くばせしていないことは四度にわたる組閣や日本道路公団改革や郵政民営化を正面突破で乗り切っていることから明白である。
 そして国庫補助金を削減し、地方交付税を見直し、税源を地方に移譲するという三位一体改革は金を中央が握り、地方に再配分していくという国と地方の関係を根底から揺さぶり、補助金によるタテ割り構造を変えようとしている。まさに小泉改革は「地方主権」の体制作りそのものである。この時初めて地方が変わる。地方自治の幕が開く。

・さらに展望すれば来年3月末に3232自治体が1821にまで平成の大合併で統合されていく。しかしまた、小規模自治体が1500のうち500以上が残る。21世紀後半にむけてこれら県、市、町村の関係がどのような関係になっていくかということである。その重要な役割を中核市市長会が担うべきであり、そのキーワードは道州制という問題もあるが、何よりも抜本的な税制改革である。

・日本の税制は1950年のシャウプ税制が基本である。歳出の削減だけでは日本の財政は立ち直れないし、このままで少子高齢化時代を乗り越えられないことは明白。定率減税を廃止する、あるいは3兆円の所得税を住民税に税源委譲する、さらには消費税を含めた税制改革が論議されていくことになる。
 しかし、もっと大事なのは、この国の地方自治をより強固なものにするためには行財政権限がセットでなければならないし、行財政能力に見合った地方税制が構築されるべきだ。

●行財政改革の展望と課題

 石原俊彦関西学院大学教授をコーディネーターに、今春、国から示された「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」が示されたが三位一体改革、団塊世代職員の退職金問題など厳しい財政状況下において、市民の視点に立った改革の実践について第一分科会では10中核市の市長などから順次発言された。

 発言の端々から生き残りをかけた各自治体の苦悩や、時代の変化に後手に回っているかのごとくの行政体制の弊害や職員意識改革の遅さのジレンマがにじみ出ていました。横並びの発言のなかにも行財政改革の課題が浮き彫りになってきました。

@行税制改革のためにどのように取組んできたか
・組織機構の見直し、アウトソーシングの推進、給与表にメスを入れた給与制度の見直し、またそのツールに行政評価システムを導入している自治体がほとんど。
・なかでも市営バス事業の民営化(函館)、市民活動サポートセンター設置(宇都宮市)職員退職手当基金(長野市)、行政経営システムの導入(豊田市)、情報システムの内容と価格の妥当性を事前評価する専門部署の設置(和歌山市)、電子入札の導入(下関市)、総合計画・行政改革大綱・中期財政計画を三位一体で見直し市政改革プラン」とした(熊本市)など特色ある取り組みも紹介された。

A問題や課題について
・団塊の世代の退職や行革により職員の年齢構成上の偏りや行政能力の低下にどう対応するか(函館市)
・削減した経費を何に再配分するか、職員数はどこまで削減することが望ましいのか。(宇都宮市)
・説明責任の不足や職員の意識改革の必要性、従来の枠組みの中での見直しの限界などが推進の障壁(長野市)
・市町村合併に伴う職員の水準確保や三位一体改革や税制改革などの動向(豊田市)
・時代の変化が早く計画内容が社会状況に合わない、職員の意識改革に時間がかかる(姫路市)
・扶助費の増加などが拍車をかけ財政状況は更に悪化、外郭団体職員の処遇問題も課題(和歌山市)
・中核市移行で事務量増加のなかでの人員減、中山間地域との合併などで効率性と行政サービスの維持(下関市)
・改革計画は網羅的なものとなって取組むべき課題が明確になっていない(高松市)
・市民生活に直結する事業の廃止は予算の多寡に関わらず市民の理解を得るのに苦慮(高知市)
・三位一体改革の影響や九州新幹線前倒しに伴う熊本駅周辺整備の早期化などの状況変化に対応しなければならない(熊本市)

B今後の対応と将来像
・職員研修制度の充実などで人材育成を図り、能力を発揮できる取り組み(函館市)
・顧客第一、成果とスピードを重視(宇都宮市)
・目的・成果指向型へ転換を図り、長野市版都市内分権を推進し、市民と行政の新たな関係を築く(長野市)
・「まちづくり基本条例」の制定に向け地域自治区制度を導入し、自立した自治体を確立する(豊田市)
・バランススコアーカードを導入し、顧客・コスト・プロセス・組織人材の視点から組織マネジメントに取組んでいく(姫路市)
・財政の確立が大きな課題、退職手当債や健全化債の発行など国のバックアップが必要(姫路市)
・専門職、消防職などの減員は困難、その分一般職の減を多く見込むために徹底的な事務事業の見直しが必要(下関市)
・「合併は最大の行革」であり、職員のスキルアップ、チャレンジ精神の醸成が肝要(高松市)
・行政内部の意識改革も含め、住民の声をパブリックコメントで住民との新たな関係構築(高知市)
・時代の変化に対応できるスリムで合理的な組織体制の構築に努めていきたい、そのための議会・市民との情報の共有化が必要(熊本市)

●宣言とアピール

・第10回の中核市サミットを機に「中核市連絡会」は新たな制度や政策を創生・実行し、国などに情報発信していく「政策集団・実行集団」となるべく「中核市市長会」に生まれ変わり、「真の地方分権社会の実現」に向け、@効果的で効率的な自治体運営の推進A市民、ボランティア、NPOなどと連携、協働し安全で安心して暮らせるまちづくりを推進B地域の自然、歴史、文化を最大限に生かした個性あるまちづくりを推進C産学官連携などにより地域産業の持続的な発展に向け産業活力を活性化させる取り組みを推進を骨子にした「中核市サミット豊橋宣言」を採択しました。

・また「義務教育教職員任命権をはじめ義務教育国庫負担については確実に税源委譲すること。また国の責務として行うべき生活保護費などを国庫補助負担金改革の対象とすることは絶対に受け入れない」などを強調した「三位一回改革の実現を求めるアピール」を採択して閉幕しました。

 また、来年の開催地は国盗りの地―岐阜市も決まりました。


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