伊藤ひであきの地方からの提言


05秋 地方交付税の現場から      2005.09.25

●今年の地方交付税はどう配分されたか。

 今年度の地方交付税が7月末に決定した。国の普通交付税の総額は15兆8838億円で、前年度に比較して0.1%増となっています。更に臨時財政対策債の発行可能額を加えた額は20兆1215億円で前年度に比較して4.5%の減となっています。

 豊橋市の場合、国の三位一体改革の動向をにらみ当初予算額に計上したのは41.3億円。決定してきた普通交付税は33億3252万7千円。普通交付税の振替措置としての臨時財政対策債を含めた予算計上額に対して7億9,747万4千円の不足となった。
 よって、9月20日に閉会した9月市議会定例会議で補正予算を組んで帳尻合わせを行った。どのように帳尻を合わせたかといえば、豊橋市の場合は幸い昨年度(H16)の一般会計が41億円の黒字決算の見込み。半分は財政調整基金に組み込むとしている(このことにより財政調整基金は109億円となる)ことから決算見込みで20億円の繰越金が使える。
 当初予算で2億円を計上しているので、実質は18億円。6月議会の補正予算で5600万円使っているので17億5000万円余が使える。もう一つ、地方特例交付金が9月補正で8087万9千円の増額補正があったので、繰越金から6億6400万円を手当てすることによって帳尻を合わせた。これで繰越金の残りは11億円弱。これは12月、3月議会の補正予算財源。

 ついでにこの特例交付金についてまとめておきます。これはH11年度からの恒久減税に伴う地方税の減収の一部を補填する減税補填特例交付金ともう一つの税源移譲予定特例交付金がありますが、これは問題になっている義務教育費の関係で都道府県財政が対象。
 減税補填特例交付金は市町村にあっては市町村民税所得割及び法人税制の減収見込み額の3/4からたばこ税の増収見込み額を控除した額ということになっています。豊橋市の場合、この地方特例交付金が80,879千円の増額となりました。

●△96%と中核市35市のなかで最大の普通交付税の減額幅

 問題は普通交付税の中身。当初予算額は8億6千万円で決定額は6005万9千円でその差は△7億9994万1千円となり実に△93.0%。臨時財政対策債は当初予算額32億7千万円に対して決定額は32億7246万円で、その差は+246万7千円。
 5年前のH12年度普通交付税は豊橋市の場合97億円であったのが、今年度は6千万円、実に150分の一です。
 別紙のように中核市35市の中で普通交付税と臨時財政対策債を含めた前年度比較では川越市の△42.7%に次いで△41.7%の大幅減額幅。普通交付税だけをみれば前年度の△95.9%で最大の減額幅。

 臨時財政対策債はH13年度から普通交付税の一部を地方が特例的な地方債で、豊橋市の場合このことによりH17年度末で1158億円となり、公債比率は12.1%で問題ないにしても、経常収支比率は84.6%(中核市35市の中で6位)となり財政構造の弾力性に要注意の段階に入ったことになります。

 端的にいえば、地方交付税の縮減、補助金カット、税源後回しという国の「三位ばらばら改革」のあおりで、本市の財政を翻弄し、直撃しています。いよいよ今年度の宇都宮市、相模原市、岡崎市に次いで来年は豊橋市が不交付団体になっていくことは明白です。

●財政力指数が高い自治体を狙い撃ち

 添付資料は中核市35市に今年度、普通交付税と臨時財政対策債がどのように配分されたのかという一覧表です。それを前年度との比較で増減率の高い順から並べたものです。川越市、豊橋市、浜松市、船橋市・・・と財政力指数が高いところの減額幅が大きいことがわかります。

 逆に財政力指数が低い宮崎市、秋田市、高知市、東大阪市、富山市などは減額率は低くされています。

 ちなみに財政力指数というのは 財政力指数=基準財政収入額/基準財政需要額で求められます。標準的な行政活動を行うのに必要な財源を、どのくらい自力で調達できるかを表わしたものです。具体的には、地方交付税の算定に使われる基準財政需要額と基準財政収入額で計算します。
 財政力指数が大きいほど財政力が強いと見ることができ、「1」を超える市町村には、普通交付税が交付されません。不交付団体は、超えた分だけ通常水準を超えた行政活動をすることが可能となり、それだけ余裕財源を保有していることになります。

 豊橋市は平成11年度に財政力指数が0.83まで落ち込みましたが、国の動向の先行きが見えないという事で投資的経費の抑制や市債への振替措置などに努力し平成15年度には0.91にまで回復させて1に近づけてきました。しかし、その結果、川越市に次いで大幅に普通交付税を削減されたという皮肉な結果となっています。

 しかし、逆に財政力指数が「1」以上であれば、不交付団体となり前年比でどうだったか、あるいは当初予算と比べてどうだたか等とは言っておれぬわけで、その意味では自立した地方主権の時代の観点からは甘えです。むしろ、交付税に依存しない自治体経営にいよいよ豊橋市も入ったということです。

 今年度、不交付団体は都道府県では東京都のみ、市町村では138市町村でうち28市町が愛知県に集中していて、愛知県の一人勝ち、元気な愛知経済を象徴しています。これは万博、中部国際空港、トヨタ自動車が全てです。

添付資料:「平成17年度地方交付税配分実態」

● 改めて地方交付税とは何か。

 交付税総額の94%が普通交付税、財政力指数が1未満の場合に交付される。残り6%は特別交付税で災害などの特別事情がある場合に交付されます。

 H13からは地方交付税財源不足が急激に増加したことから普通交付税の一部を地方が特例的な地方債(臨時財政対策債)を発行することにより分担する仕組み。

 「地方交付税法」では「(この法律の目的)第1条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする」とあります。

 地方公共団体の自主性を損なわずに地方財源の均衡を図るために、国が国税の一定割合を使途を制限しない財源として地方公共団体に移転するものです。同交付税の総額は2000年度から、所得税と酒税の32%、法人税の32%、たばこ税の25%、消費税の29.5%の合算額として算定されています。

 普通交付税は総務省が定めた算式にしたがって標準的な行政サービスを提供するに必要な財源を計算する。これを財政需要額という。この計算は裁量の余地のない機械的なものであり、その計算根拠は電話帳ほどの二冊の本にまとめられている膨大なものです。

 その一方で、地方譲与税や各種の交付金、および地方税の一定割合(都道府県は80%、市町村は75%)を基準財政収入額とし、基準財政需要額との差が財源不足額とされ、それに等しい金額が普通交付税として交付されています。
 地方交付税はこのように差額補助金であり、自治体が一生懸命に企業誘致して税収を増やしても、交付税の総額で相殺される部分が大きいという欠点があり、努力せず自立しない地方自治の元凶がここにあります。ここに脱護送船団方式への三位一体改革の必要性があります。

 よって、例えば今年度では一般財源化等の措置が講じられた国庫補助負担金については、その全額を基準財政需要が国適切に算入すると共に所得譲与税及び税源委譲予定特例交付金(都道府県のみ)について、基準財政収入額に100%算入しているとしています。
 また、IT経費などの歳出削減実績や徴税強化の実績などに応じた算定を行っているとも発表されていますが現場では中身は不明です。

●財政の破綻と三位一体改革

 ところで、この制度が成り立つためには国税収入の一定割合である交付税の財源と各自治体の財源不足額の合計が常に一致する必要があるのは当然です。ところが国も地方も税収が落ち込んでくると、基準財政需要額を収入にあわせて縮小しない限り、交付税はいつか破綻する宿命にあったわけです。その時が今であり、交付税が破綻に瀕している現状が全てです。

 この時に論議が分かれるのは、高負担高福祉の大きな政府を選択するか、小さな政府で我慢するかは、国の選択でなく、むしろ地方自治体ごとの選択になるということです。なぜなら地方分権を実現するためには、国税の引き下げが前提条件となるからです。

 ところが、基準財政需要額を大幅に縮小する荒治療は、今の地方自治体がやっとその入り口にたどり着いたばかりです。地方自治体には歳入に併せて歳出をカットするという発想がなかったからです。逆に言えばこの事がわが国の財政危機の根本原因です。

 「今まで、国の指導に基づき事業を実施し、大きな借金ができた。今になって地方のことは地方でというのは理解できない!」ということで昨年の夏は地方団体と同じテーブルで話し合うなど「中央政府が地方政府の意見を聞いた!」という面では意外ですが初めての事だったようです。

 交付税制度が縮小し、地方税への依存を高めれば、地方自治体間の財政格差が拡大するとして全国市長会など地方自治体は強く抵抗しています。しかし、財政格差は住民満足どの差に直結するとは限らない。直結するとすれば、世帯ごとの年収の差が家族の幸福の差になることになりますが、このことを支持できるでしょうか。

 こうした論議を経て昨年11月の政府・与党合意により、平成16年度の3年間で4兆円の国庫補助負担金を廃止・縮減すると共に、税源委譲は概ね3兆円規模を目指すとされています。
 しかし、国の三位一体改革も今のように補助金削減、交付税削減を先行させるのでなく、税源委譲を優先すべきです。またその税源移譲は当然、基幹税である所得税や消費税で行うべきだと考えます。
 所得税から個人住民税へ3兆円、また消費税の5%の中に地方消費税が1%ある。これを2.5%にして3兆7000億円を地方に移す。これによって国税と地方税の税収割合を3対2から1対1にする。このことによって国民の少なくとも過半数が地方交付税に依存しない不交付団体で生活できることこそ三位一体改革でなければならないと私は豊橋市議会で主張し続けています。

 このことによって地方が均一化して特長が失っているような護送船団方式から脱却して、交付税に依存しない自立した地域経営がなされて、地方主権の第一歩が始まると考えます。そのためには行政評価と予算編成がリンクし、選択と重点化のメリハリがなされて特色ある地域づくりに向かうことになります。

●「中核市サミット2005in豊橋」について

 ところで豊橋市は来年8月1日に市制施行100周年を迎えることになり、その百周年記念イベント行事がこの夏からすでに始まっています。
 その一環として「中核市サミット2005in豊橋」が下記の要領で行われます。全国の同僚議員の皆様!ぜひ視察もかねて豊橋へお越しください。議員団一同こころから歓迎し、できうる限り対応させていただきます。
・趣 旨:中核市35市(10月より37市)で組織する中核市連絡会と開催地になった豊橋市との共催により、平成I7年11月10日の午後1時からホテル日航豊橋で次のとおり開催されることとなりました。

・名 称:中核市サミット2005in豊橋
・テーマ:中核市新時代「真の地方分権社会の実現に向けて」
・目 的:地方分権の新時代を迎え、その先導役である中核市の市長が一堂に会し、自立した地方自治体としての取組や中核市間の連携強化などについて議論し、その決意を表明することで中核市を全国にアピールし、地方分権の確立と中核市制度の充実強化を図る。


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