伊藤ひであきの地方からの提言


05春 土俵際で堪える豊橋競輪!      2005.04.02

●豊橋競輪の撤退撤回騒動

 2000年度豊橋競輪事業決算は3.5億円余の赤字を出して、豊橋競輪51年の歴史に赤信号が点灯した。01年度決算も4億円近い赤字決算となり、繰越金で穴埋めする事態となり、02年度の決算は3.5億円の赤字。繰越金を使い果たし、今までの蓄えである財政調整基金に手をつけることになった。

 さらに、このまま03年度開催すると5.3億円の赤字が見込まれ、基金まで使い果たし、さらに2億円近い欠損金が生じることが明確になった。この2億円近い金は税金で穴埋めする以外になく、それ以降、売上が好転しないかぎり毎年税金がこの穴埋めに必要となる。

 さらに追い討ちをかけたのは04年度に開催を予定し、努力してきた「ふるさとダービー」の誘致もはずれ、さらに03年度以降、1着から3着までを当てる三連単投票をするための機器購入に約6億円かけなければならないことも重なった。

 02年秋、生き残り策を様々に検討したが、黒字転換の展望は立たず、「利益を出し、それを市の歳入に組み入れてこそ公営競輪。競輪・存続のために税金は投入できない」という大義名分で市長は競輪廃止の判断を下し、03年3月末の廃止に向けて一旦は動き出した。

 豊橋競輪場近くに住む私は「不況の中で『知恵を出せ、汗を流せ、汗も出ないものは去れ』と言われるほど市民が必死になって仕事や生活に取り組んでいる中で、この事態に至るまでに、市当局はどれだけの経営努力を続けてきたのであろうか。万策尽きてへとへとになった上での結論なのか。『税金を無駄に使えない』という前に『税金を無駄に使った』総括と責任は明確にすべきである」と街頭演説や手作り新聞「ひであきレポート」で訴えた。

●議会の「意見のまとめ」

 豊橋市議会環境経済委員会は02年11月、市長の「豊橋競輪廃止」の判断に対して以下の「意見のまとめ」を提出した。
 @廃止に至る意思形成に関係団体や議会、市民との協議が不足していないか、今後の対応に最大限の配慮をすべきである。
 A不況の影響や制度の運用に限界があるとはいえ、自らの経営努力に厳しく総括すべき。
 B全国競輪施行者協議会など上部団体が協議している内容についてその見通しの有無について検討する必要がある。
 C経営改善努力を継続し、実現の可能性を追求すべきである。
 D具体的には正月やお盆での競輪開催など開催の弾力化など具体的かつ多角的な努力が必要である。
 E撤退に向かうなら大筋のスケジュールを明確にし、市民の理解を得るべきである。
 F地域経済への影響は大きい。特に300名の臨時従業員の再雇用の支援策、売店などの関連業者や長年理解と協力をいただいた地元総代会などに対して誠意ある対応で理解を求めていくべきである。
 G競輪廃止後の跡地活用について、撤退後早い段階で具体的内容を示す努力が必要。
 H廃止後、関係団体からの損害賠償請求は必至とのことだが、毅然とした対応で臨まれたい。

 しかし、11月末、市は撤退の方針を撤回し事業を継続することを明らかにした。撤回は事業継続を求める全国競輪施行者協議会など競輪関係6団体から提示された、発券機購入などに必要な費用の助成や場外発売への協力などの支援策が得られることになり、税金を投入する事態が当面避けられる見通しとなったためである。

●懸命の経費削減策

 それ以降、来場するファンへの挨拶の励行から始めて数々のイメージアップ、ファンサービス充実の取組みが行われる一方、記念競輪では26場の競輪場、24場の専用場外での車券販売が行われるようになった。それまでは競輪場は12場、専用場外は7場であったことから見ればいかに拡販策を怠っていたかということでもある。

 併せて職員(15人→10人)、嘱託員(9人→0人)、臨時従事員(303人→265人)と大幅に削減、借上げ駐車場も30ヶ所を18ヶ所に減らすなど徹底した経費削減の取組みが行われた。

 かくして02年度決算では▲107百万円の単年度収支に赤字が抑えられ、03年度決算では逆に91百万円の黒字となり、今年度決算(05年3月末)も▲約1千万円の赤字となる予定ですが、約4億円の財政調整基金に手をつけずに258百万円の繰越金で新年度に迎えるようになりました。しかし、売上げは厳しく今年も前年比83%で推移しています。一般会計には1円も入れていません。

●「ふるさとダービー」で息つけず

 新年度、豊橋競輪は今年8月27日からの「ふるさとダービー」開催を控えています。そのために入場門や売店のリニュアール工事が行われました。総額7850万円の財源はすべて上部団体からの助成金でまかなわれました。

 「ふるさとダービー」の車券売上目標は140億円。昨年度の「ふるさとダービー」の売上高は4月の佐世保147億円余、6月の函館135億円余、8月の福井129億円余と天候や台風などに影響されているとはいえ、140億円の車券売上げを達成するというのは大変なことです。

 それで、140億円の売上げが達成されたとして経営状況は好転するかといえばそれが大した改善にならないのです。概算で
 開催事業費(全国の40場での場外車券売り場や広報宣伝など)2,100百万円
 選手賞金(11レース×9人×4日間)             140百万円
 払戻金(売上げの75%)                 10,500百万円
 負担金・交付金・納付金等                 860百万円
                          支出計 136億円
                          収益   4億円

 これが競輪の花「ふるさとダービー」の経営実態である。日本自転車振興会交付金や全国競輪施行者協議会負担金、公営企業金融公庫納付金などが多すぎるのです。

●土俵際の官製ビジネス

 現場は、涙も出ないくらい努力していても、この仕組みの構造が変わらない以上、競輪は生き残れないのです。

 こうしたビッグレースはまだしも、本場を使った普通競輪開催でも100円の車券売上げのうち主催者の市の粗利は6.7円。ここから従事員や職員給与、電気代などを払うわけですから、本場開催をすればするほど赤字がかさみ、場外車券販売で売上高の約4%が支払われることで息をつなぎ、ビッグレースで累積赤字をなんとか解消する仕組みです。

 豊橋競輪55年の歴史の中で、これまで教育や福祉などに157億円余の繰り入れを行うなど市財政の有力な財源だった競輪場経営。豊橋市長は「市民の税金は投入しない。そうした事態を招いた時点で豊橋競輪は廃止する」を基本としており、その日が遠い日ではなくなってきている。

 競輪だけではない、競艇も、競馬も、オートレースも90年代初めの売上げピーク時だった頃の四競技合計で5兆5千億円あった売上げは今や半減、公営競技から上がる自治体の収入も263億円と4年の間に三分の一に落ち込んで、長期的低落傾向に歯止めがかかっていない。

 抜本的、構造的改革を先送りしてきた官製ビジネスは土俵際に追い込まれています。


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