伊藤ひであきの地方からの提言


05新春 「地域力」強化をどう進めるか      2005.01.17

○脳裏に張り付くすさまじい光景

 「10年前の2月4日、JRが芦屋まで開通するのを待ち構えて支援活動で神戸に行きました。芦屋から三ノ宮まで歩きました。凍てつく公園でテント生活を余儀なくされている避難者の皆さんの疲れきった表情、霜柱が融けた水が公衆便所の汚物と一緒に流れていました。そして何よりも、瓦礫の中から線香の煙がたなびき、ビンにさした一輪の花とみかんが添えられていました・・・・。すさまじい光景でした。息を呑むような光景に五体が震えました。今でも脳裏に張り付いています。

 あれから10年、昨年は10個の台風が日本に上陸し各地で被害をもたらし、10月の新潟中越地震の大災害、そして年末の20万人もの世界の人々が犠牲になったスマトラ沖地震と津波・・。自然災害と向き合い、災害に強い街づくりこそ政治に携わるものの責任であることを深く肝に銘じ、また私たち公明党はどこまでも現場主義で国民の皆さんの生命と財産を守るために全力で取り組んでまいります」

 阪神大震災から10年目の今日、1月17日朝7時からの定例の豊橋市議団街頭演説会でこう話しました。

○「共助」こそ防災の要

 豊橋市は東海、東南海地震の地域指定を受け、毎年40億円から50億円の予算を投じて防災対策がなされていますが、まだまだ不十分です。あらゆる分野にわたって整備促進を進めていかなければなりません。

 しかし、例えば市消防職員は320人、職員一人当たり1000人以上の職員がぶら下がっていることになります。災害対策本部が市役所内に設置されて情報収集から、避難対策、救援対策となれば、その体制作りに2、3日はかかるでしょう。

 当然、大規模な災害が発生した場合、防災関係機関だけでは対応しきれず、住民や地域社会の対策活動が不可欠です。
 普段の備えで住民自らが災害から守る「自助」、地域社会がお互いを守る「共助」そして、国や自治体による「公助」が幾重にも重なって減災の間断なき取組みがなされなければなりません。特に災害弱者対策は、「共助」なくしては成り立ちません。

 ここに自主防災組織の必要性と強化策が叫ばれる所以があります。

○実効性のある取組みがなされてこそ

 現在、豊橋市内には431の自主防災組織が設置されています。しかし、各々の地域には特性があり、防災上の課題は地域により様々です。その場合、災害弱者リストがバックデータとして必要になりますが、個人情報保護の面から主に福祉行政のために収集した情報が地域に開示されていないという問題があります。
 地域にどのような災害弱者がどのくらい住んでいるのか、その実態がはっきりしないのです。そこで、あらかじめ災害弱者の方々の了解を得てリストを作成し、これを消防団や自主防災組織が保管しておき、いざという時活用するという方策をとらざるを得ないのですが、これもまだなかなか進んでいません。
 住民「共助」こそ防災の要。その主体である自主防災組織に権限と財源と情報が備えられなければいざという時に機能できません。実効性のある取り組みが今ほど必要な時はありません。

 我が地域の、住民の顔が見えるところで、住民自らが情報を共有し、連携を取り合い、「いざという時にどのように行動するか」を互いに議論しあって、その地域に最適な政策を模索し、確認しあって、共助のまちを作っていく。市民にとって最も必要な地震対策はそれぞれに違うのであり、これに応えるオーダーメイドの防災対策が求められる。これに対応しサポートするのが行政の役割ではないだろうか。

○防災への取り組みは地域力の復権

 昨年秋、豊橋市で「豊橋市地震防災マップ」が作られ10万世帯に全戸配布されました。02年9月議会一般質問での提案が2年越しの作業で完成したものです。
 その「地震防災マップ」の有効利用を期すためにも、「我が町内を防災のまち」にしようと住民が危機感を持って立ち上がることが最重要です。
 地域のみんなで地域の中を歩き、危険箇所の総点検をし、互いの家族を紹介しあうことは大切なことである。

 昨年12月、新潟地震の被害を勉強した地元小学校の4年生たちは「地震に備えよう」という30ページの冊子にまとめた。それを1000部印刷製本し、12月の学芸会で参観に来た父兄一人一人に配りました。
 「娘が一生懸命にまとめた『かぐはこていしないときけん」というページを読んで、娘と一緒に用具を買いに行って家族みんなで防災対策をしました。また「孫が書いたカットが載ってるから」とおばあさんが読んで「阪神大震災で実際に役立ったもの」というページを参考に非常持ち出し袋を用意した。という報告も寄せられ、市が作るパンフレットよりも、絶大なPR効果があったことを示しています。

 「地域力」の強化、「地域コミュニティーの回復」、ましてや「住民自治」を声高に何度叫んでも遅々として進まない。
 しかし、「防災のまちづくり」という共通のまた緊急の課題に自らと自らの地域の危機に気づいた市民が少しづつ、自主的な防災活動を活発化させていくことこそ「共助」にとって不可欠です。
 また、この延長線上には「自分たちのまちは自分たちで守る」という住民自治の芽も大きく育っていくのではないだろうか。


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