伊藤ひであきの地方からの報告


04冬 「耐震補強」をどう進めるか      2004.12.24

○住宅崩壊対策がポイント

 豊橋市は平成14年4月に東海地震にかかわる「地域防災対策強化地域」(8都県229市町村)に指定され、H15年12月には「東南海・南海地震の防災対策推進地域」(21都府県652市町村)に指定されました。

 豊橋市は予想される東南海地震の震源域に近く、地盤の弱い沖積性が多く、2割は地盤液状化の危険度が高い地域です。市独自の被害予想調査でも建物被害は全半壊で4万棟に達するとし、建築基準法が強化される昭和56年5月以前に建てられた木造住宅が4万7000棟と6割以上を占める事からも住宅崩壊対策が重要であることが指摘されています。

○耐震診断を無料化

 よって平成14年度から耐震診断に要する経費3万円を補助し無料化して、この3年間(H14年1000軒 H15年2000軒 H16年1000軒)で4000軒の耐震診断に取り組んでいます。
 9月5日に紀伊半島沖を震源地とする地震があって豊橋は震度3という揺れがあり、その直後から5日間で153件の申し込みがあり、この12月議会で200件分の耐震診断費用を補正しました。

 耐震診断は市民からの申請を市の建築指導課が受付け、愛知県建築士会に委託し、豊橋市内357名の講習を受けた診断員が現地調査しチェックし点数化します。その結果0.7未満は「危険あり」0.7〜1.0「やや危険」1.0〜1.5「一応安全」1.5〜「安全」と判断します。 H16年度の耐震診断では774件のうち332件42.9%が「危険」、259件33.5%が「やや危険」という結果です。

○耐震補強に補助金

 また阪神淡路大震災で全半壊した24万棟の公的負担(解体撤去、仮設住宅、住宅再建支援等)は9326億円。1棟あたり389万円の費用がかかった教訓から、「個人財産に投入するのはいかがなものか」という声を乗り越えて平成15年度から県市で60万円を限度に改修補助金を用意しています(H15年100棟、H16年100棟を予定)。「一応安全」の基準である1.0以上に耐震補強することが条件です。
 今年度の豊橋における改修費平均は145万円であり、改修費の約半分を補助していることになります。

○それでも進まぬ耐震診断と耐震補強

 豊橋市内にS56年5月以前に立てられた建物は47,000棟。耐震診断は3年間で4600軒とほぼ1割、耐震補強は2年間で180軒という実態です。市建築指導課は地域別説明会や企業、デパートやイベント回りなど工夫を凝らして、耐震診断と耐震改修をPRに努めてきましたが、耐震診断と木造集宅耐震改修は遅々としか進んでいません。

 耐震診断した市民にアンケート調査した結果「改修工事を迷っている、または行わない理由は何ですか」との問いに26.6%が経済的理由、「安価で効率的な工事方法が分からない」が24%、「信頼できる業者がわからない」が13.3%、「工事が面倒だから」が9.9%「あきらめている」が5.7%「その他」と「無回答」が20.5%となっています。

 12月10日に放映されたNHK「大地震にどう備えるか」でも指摘されていましたが「耐震補強は進んでいない」実態がここにあります。

 また豊橋市が中心となって「東三河地域防災研究協議会」を設立し国立豊橋技術科学大学と連携し地域密着型防災対策等の調査研究を行っています。その中のテーマには「橋梁の耐震性・損傷調査」や「木造家屋の低廉安価な耐震補強法」などがあり、建築工学の英知を「防災都市づくり」に反映していく、地域連携の仕組みを作っていますがまだまだこれからです。

 豊橋市では「地震被害予測調査」では想定東海地震及び想定東南海地震での全壊棟数は4,000〜4,500棟、想定東海・東南海地震連動では約12,700棟となると予測しています。
「あらゆる被害状況は家が倒れるところから始まる」といわれますが個人所有の民間木造住宅の「耐震補強」をどう進めるかは大きな課題です。


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