●開設の影に課題は多く
2年前から「女性専用外来」が全国に相次いで設置され性差に応じた専門的な治療が行われ始めたという事は、まさに「医療革命」です。
しかし、できうる限り女性議員を伴って各地の「女性専門外来」を視察し(県内3病院をはじめ10病院)、時には外来に来る女性の状態をじーっと待合室で観察したりして情報収集や調査をしてきました。とりもなおさず我が豊橋市民病院(920床、1日あたり外来患者2400人、入院患者820人 職員定数927人 規模では地方公立病院としては国内一といわれています)に「女性専門外来」を一日も早く開設したいという思いからです。
勿論、「女性専門外来」のこうした動きは始まったばかりであり、今後のPRと取組みによって設置目的を叶えていく努力によって結実していくことになりますが、「開設しました!」という華々しさのなかに多くの疑問点も感じました。
それは「入り口女性で、出口は男性(専門外来は経験豊な女性医師が担当していますが、そこで振りわけられた診療科にはほとんど男性医師が待っている)」という現実です。
また、30分の診療時間の5割から時には8割の時間が、愚痴と悩み相談に終始しているというケースが多いということです。白衣を着たステータスの高い女医が包み込むように更年期障害の悩みを聞いてあげることで、かなりの診療効果を挙げている現実です。
2時間待って3〜5分診療が日本の医療の現場です。豊橋市民病院の場合、外来患者の単価は約8000円、この視点からは20分に一人、30分に一人という予約診療は紛れもない赤字部門です。
しかし、それでもなお、「地域の医療ニーズに応えるのが公立病院の使命である」という一点で病院長と、経験豊な女医と、そして議会の後押し、なかんずく公明女性議員の頑張りと大量の署名の重みが開設に向かわせています。
●女医の不足は継続性に疑問
ただし、この場合でも条件があります。「経験豊な女性医師」の存在があるかどうかです。この裏側には決定的に医師の世界への女性の進出が遅れているということもいえますし、開設したところも何らかの理由で担当の女医がリタイアされた時には後継医師が確保できるのかという問題もはらんでいます。
もう一ついえば総合診療という医学が日本ではまだまだ確立されていないという現実があります。
「女性相談」なら女性会館でやればいい。現に平成7年からは市内の女性医師が担当して女性のための「女性医療総合相談」を行っている。年6回開いて約20人の相談に応じている。あるいは、こういう事は福祉保健部健康課の役割ではないのかという行政側の声もあります。
また患者の中には「遠くから期待して女性専門外来に来たのに症状を詳しく聞いてもらえずに別の科に回された」という不満や、女性医師が性差治療の専門知識に乏しく婦人科へ、皮膚科へと振り分けるだけの対応にとどまっている病院もありました。始まったばかりでも即座に質が問われています。
長年、医療に取り組んできた医師会幹部からは「ただ女性医師が診察すればいいわけではない。女性医師ならではの対応ができて初めて、女性専門外来の存在に意味が出てくる」と指摘します。
●市民病院のコンセプト
豊橋市民病院の場合、開設に踏み切れないもう一つの理由がありました。それは、東三河18市町村の第三次救急医療を担う基幹病院であり、ガンや白血病などの急性期治療を担う高度医療を提供するという基本方針で運営されているという事実です。
よって、5名の女医もどちらかと言えば手術などが裁ける若手の医師を採用しているということ。
そうした中で、昨年6月議会以来、市当局は「婦人ドック」などの「検診制度」を充実させ、女性スタッフにより、きめ細かく対応するなどしながら、さまざまな手法を研究してまいりたいという答弁に終始してきました。
●署名の重みが「相談室」の扉を開いた
そして、本年3月末「豊橋市民病院に女性専門外来の設置を求める要望書」を45,364人の署名を添えて市長に提出しました。
そして9月議会を迎え、市当局と充分に詰めた上で以下のような質問を展開し、豊橋市民病院に「女性専門相談室」を開設する事が決まりました。
その質問と答弁の内容は以下です。
伊藤: