伊藤ひであきの地方からの提言


04秋 地方交付税はどのように配分されたか      2004.09.20

●地方に交付税はどう配分されたか。

 全国の各地方議会は9月議会の真っ最中で、例年のごとく9月度補正予算全般について審議されています。

 豊橋市議会もとんでもない補正予算が審議されて21日の本会議最終日で議決される予定です。
 とんでもないというのは私の知る限り、9月補正予算がマイナス補正というのは17年間の記憶にないからです。
 これは取りも直さず、今年度の地方交付税が7月末に決定し、当初予算額に計上した83億円と比べて25.8億円余の不足となることが明確になったこと。
 もう一つの要因は単年度で執行する予定であった身障者授産施設当建設事業補助金が2ヵ年の継続事業となったため、14億8千万円余の減額補正。
 端的にいえば、地方交付税の縮減、補助金カット、税源後回しという国の「三位ばらばら改革」のあおりで、地方財政を翻弄していると言わざるを得ません。

 豊橋市は結局、25.8億円不足となった交付税の減額分を幸い繰越金のやりくりでしのぐことができた。財政調整基金は3月末までに116億円積まれてきて、当初予算で交付税の減額を約26億円を見込んでいたので財政調整基金を38億円取り崩す予算が組まれていた。6月補正で8500万円加えたから、現時点での財政調整基金は79億円余になっっています。

 もう一つ、この時期には前年度(H15年度)の決算見込み額が報告されます。歳入1121億5千万円円余、歳出は1064億4千万円余、57億円の黒字。豊橋市の財政方針でその半分は財政調整基金に組み込むとしていますので決算見込みで27億円の繰越金が計算できます。当初予算で2億円が計上済みですから、実質25億円が使えることになります。そのうちの22億64百万円を9月補正の財源に使います。それで残りは3億円弱。これが12月、3月の補正財源となります。

 いずれにしても、9月は一般会計△31,454千円という異例の補正予算。

 補正予算というのは単年度の予算を補完するものとして市長の政策を反映してきた。時には土地開発公社から政策的に土地を買い取った年もあったし、地域経済活性化のためにかなり大きい単費の土木事業を組んだときもあったし、市債の繰り延べ返済に向けた時もあった。

 よって財政調整基金を取り崩すことも、市債を発行して借金することもできたわけですが、あえて、財政調整基金も温存した上に、こうした主に繰越金のやりくりで減額予算を豊橋市は組みました。
 市長の政策的意図は果たされなかったのか、もともとなかったのかも問題ですが、国の補助金削減、地方交付税激減のダブルパンチが市財政を直撃している事だけは事実です。

 今年度の地方交付税はH14年度より市町村分の段階補正の見直し、あるいは単位費用についてはごみ収集等についてはアウトソーシング語の経費を算定の基礎とする見直しも段階的に行われている。
 それでも市町村分は6兆7563億円、対前年比△5.7%である。総額(地方交付税総額+臨時財政対策債の発行可能額)は21兆766億円で前年比△12.0%である。豊橋市はその4倍の△47.3% 51億円の減額です。

●財政力指数が高い自治体を狙い撃ち

 下記資料を見てもらいたい。中核市35市に今年度、普通交付税と臨時財政対策債がどのように配分されたのかという一覧表である。それを前年度との比較で増減率の高い順から並べたものです。浜松市、豊橋市、相模原市、船橋市・・・と財政力指数が高いところの減額幅が大きいことがわかります。
 逆に財政力指数が低い高知市、旭川市、長崎市、高槻市などは減額率は低くされています。また、静岡市、大分市、高松市、岡山市など県庁所在地が中間に位置しています。多分、財政需要額が大きいのでしょう。

 ちなみに財政力指数というのは 財政力指数=基準財政収入額/基準財政需要額で求められます。標準的な行政活動を行うのに必要な財源を、どのくらい自力で調達できるかを表わしたものです。具体的には、地方交付税の算定に使われる基準財政需要額と基準財政収入額で計算します。
 財政力指数が大きいほど財政力が強いと見ることができ、「1」を超える市町村には、普通交付税が交付されません。不交付団体は、超えた分だけ通常水準を超えた行政活動をすることが可能となり、それだけ余裕財源を保有していることになります。

 豊橋市は平成11年度に財政力指数が0.83まで落ち込みましたが、国の動向の先行きが見えないという事で投資的経費の抑制や市債への振替措置などに努力し平成15年度には0.91にまで回復させて1に近づけてきました。しかし、その結果、浜松市に次いで大幅に普通交付税を削減されたという皮肉な結果となり、割り切れぬ思いです。

 しかし、逆に財政力指数が「1」以上であれば、不交付団体となり前年比でどうだったか、あるいは当初予算と比べてどうだたか等とは言っておれぬわけで、その意味では自立した地方主権の時代の観点からは甘えです。むしろ、交付税に依存しない自治体を目指すべきです。
 今年度、不交付団体は都道府県では東京都のみ、市町村では133市町村でうち29市町が愛知県に集中しているのも象徴的で、万博、中部国際空港、トヨタ自動車が全てです。

●地方交付税とは何か。

 交付税総額の94%が普通交付税、財政力指数が1未満の場合に交付される。残り6%は特別交付税で災害などの特別事情がある場合に交付される。
 H13からは地方交付税財源不足が急激に増加したことから普通交付税の一部を地方が特例的な地方債(臨時財政対策債)を発行することにより分担する仕組み。

 「地方交付税法」では「(この法律の目的)第1条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする」とあります。

 地方公共団体の自主性を損なわずに地方財源の均衡を図るために、国が国税の一定割合を使途を制限しない財源として地方公共団体に移転するものである。同交付税の総額は2000年度から、所得税と酒税の32%、法人税の35.8%、たばこ税の25%、消費税の29.5%として算定されている。
   普通交付税は総務省が定めた算式にしたがって標準的な行政サービスを提供するに必要な財源を計算する。これを財政需要額という。この計算は裁量の余地のない機械的なものであり、その計算根拠は電話帳ほどの二冊の本にまとめられている膨大なものです。

 その一方で、地方譲与税や各種の交付金、および地方税の一定割合(都道府県は80%、市町村は75%)を基準財政収入額とし、基準財政需要額との差が財源不足額とされ、それに等しい金額が普通交付税として交付される。

 地方交付税はこのように差額補助金であり、自治体が一生懸命に企業誘致して税収を増やしても、交付税の総額で相殺される部分が大きいという欠点があり、努力せず自立しない地方自治を象徴している。

●財政の破綻と三位一体改革

 ところで、この制度が成り立つためには国税収入の一定割合である交付税の財源と各自治体の財源不足額の合計が常に一致する必要があるのは当然である。ところが国も地方も税収が落ち込んでくると、基準財政需要額を収入にあわせて縮小しない限り、交付税はいつか破綻する宿命にあった。その時が今である。交付税が破綻に瀕している現状が全てである。

 この時に論議が分かれるのは、高負担高福祉の大きな政府を選択するか、小さな政府で我慢するかは、国の選択でなく、むしろ地方自治体ごとの選択になる。地方分権を実現するためには、国税の引き下げが前提条件となるからです。
 ところが、基準財政需要額を大幅に縮小する荒治療は、今の地方自治体がやっとその入り口にたどり着いたばかりです。地方自治体には歳入に併せて歳出をカットするという発想がなかったからです。逆に言えばこの事がわが国の財政危機の根本原因です。

 交付税制度が縮小し、地方税への依存を高めれば、地方自治体間の財政格差が拡大するとして全国市長会など地方自治体は強く抵抗しています。しかし、財政格差は住民満足どの差に直結するとは限らない。直結するとすれば、世帯ごとの年収の差が家族の幸福の差になることになり、金権主義になる。このことを支持できるだろうか。

 よって、秋にはまとめられるという国の三位一体改革も 補助金削減、交付税削減を先行させるのでなく、税源委譲を優先すべきです。またその税源移譲は当然、基幹税である所得税や消費税で行うべきだと考えます。
 所得税から個人住民税へ3兆円、また消費税の5%の中に地方消費税が1%ある。これを2.5%にして3兆7000億円を地方に移す。これによって国税と地方税の税収割合を3対2から1対1にする。
 このことによって国民の少なくとも過半数が地方交付税に依存しない不交付団体で生活できることこそ三位一体改革でなければならない。

   このことによって地方が均一化して特長が失っているような護送船団方式から脱却して、すなわち交付税に依存しない自立した地域経営がなされて地方主権の第一歩が始まると私は考えます。

 添付資料:「平成16年度地方交付税配分実態」


ホームページに戻る